糖尿病のチェックと自覚症状
生活習慣を見直しましょう
体質や遺伝、そして生活習慣や喫煙などに深く関係している2型糖尿病は、糖尿病予備軍の方まで含めると2010年の調査で2050万人、国民の5人に1人が該当していると推定されています。中高年ほどその比率は高まります。
国も危機感から、メタボリックシンドロームの概念を取入れて、これを予防する特定健診や保健指導の実施が効果をあげ、糖尿病患者数が増加から平行線へ、糖尿病予備軍は減少傾向に改善しています。
人は生まれながらに自分では変えることが不可能である要素を持っていますが、生活習慣は変えることができます。
会社の健康診断などの健診で異常が無いからといって安心せずに、生活習慣を見直す意識を常に持つべきです。
特に普段から食事をお腹一杯食べている人や運動不足が続いている人は危険な因子を自らつくり出していることを意識して直ちに改善をしましょう。
血縁者に糖尿病患者がいて遺伝的、体質的に糖尿病にかかりやすいことが分かっている場合は、より一層の生活習慣の見直しと管理の継続が必要です。
日ごろから意識をすることが大切です。
糖尿病のチェック項目についてご紹介します。
定期検査で要検査と指摘された方は再検査をしましょう
食事の欧米化によってカロリーや脂肪摂取量の増加、便利な交通機関や自家用車が普及したことによる運動不足、快適な生活を手に入れた半面、「糖尿病」というとても大きな疾患との闘いが始まりました。
糖尿病の予防と改善には、早期発見が欠かせませんが、まず、糖尿病の予備軍になっていないかをチェックするために検査を受けましょう。
会社の定期検診などで血液検査の数値にも兆候があらわれますので、要検査と指摘された場合は手遅れになる前に必ず、そして早めに医師の診断を受けましょう。
検診の結果が「血糖値やHbA1cの数値が高く、要精密検査」となっていたら、検査結果を持参して、出来る限り早めに内科やクリニックを受診しましょう。
日頃の生活習慣の見直しが必須です。規則正しい生活習慣を基本にして、バランスの取れた食習慣と運動の習慣を取り入れることが最も大切とされています。
@「糖尿病」の自覚症状のチェック項目
糖尿病は、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれているほど自覚症状がなく静かに進行していきます。
しかし、ある程度進行すると徐々に特有な症状が出現してきます。心当たりがある場合は、進行している可能性も否定できませんので早めに医師の診断を受けましょう。
「糖尿病」の黄信号のチェック項目
◎異常なほどに食欲がある
◎体がだるく、疲れやすい
◎体重が急激に減少した
◎以前と比べのどが渇くようになった
◎尿の回数が増え、尿の量も多くなった
◎尿の匂いが強くなった
◎肌が痒い、カサカサする
◎化膿しやすくなった
◎手足が痺れる、こむら返りがある
◎つまずき易くなった
◎傷や火傷などの痛みを感じなくなった
◎急に視力が落ちた
A 糖尿病の医学的なチェック項目「血糖値とHbA1cの値」
糖尿病は、医師の診断を受けている方が少ない疾患の一つです。
糖尿病は、血糖値の数値とHbA1cの値によって診断されます。
HbA1cの値はヘモグロビンとブドウ糖が結合した割合を示します。
本来ヘモグロビンは酸素と結合して全身に酸素を運ぶ役割を担っています。
ところが、血中にブドウ糖が増えるとヘモグロビンは酸素ではなくブドウ糖と結合して全身に運ぶことになります。
血糖値は飲食によってすぐに変動する指標ですが、HbA1cの値は過去一ヶ月から二ヶ月の平均的な血糖値の状態を調べることができます。
血糖値 「HbA1c(NGSP)値」による判定
糖尿病の診断では、初診において問診、身体計測、聴診、触診などの全身のチェックが行われ、血糖やHbA1cなどの血液検査や尿検査が主な検査です。
健診で空腹時血糖値が110mg/dl以上であれば、要検査となって、病院で血糖値とHbA1cを測定して、同時に検査値が糖尿病型なら、その場で糖尿病と診断されます。
最近では、血糖値やHbA1cでははっきりと糖尿病の診断ができない、疑わしいグレーの場合に、ブドウ糖負荷試験が行われるようになりました。
例えば、糖尿病の疑いが否定できないのに境界型の数値である人。
◎空腹時血糖値が境界型の110〜125mg/dl、
◎随時血糖値140〜199mg/dl、
◎HbA1cが6.0〜6.4%、
また、境界型の人で血圧が高く、脂質異常症や肥満による動脈硬化のリスクが高い人。
◎空腹時血糖値が100〜109mg/dl、又は、HbA1cが5.6〜5.9%、
◎家族に糖尿病がある、
@空腹時血糖値:126mg/dl以上 かつ
Aブドウ糖負荷後2時間 ⇒ HbA1cの値 ⇒ 糖尿病
:200mg/dl以上 ⇒ 6.5%以上 ⇒ 糖尿病型
B随時血糖値 :200mg/dl以上
@からBの何れかに該当すれば「糖尿病型」と判定し、別の日に再検査を行って「糖尿病型」が確認された場合、糖尿病と診断します。
糖尿病型、境界型、正常型の各検査値は下表となります。
|
空腹時血糖値 |
ブドウ糖負荷後2時間値 |
随時血糖値 |
HbA1c値 |
糖尿病型 | 126mg/dl | 200mg/dl以上 | 200mg/dl以上 | 6.5%以上 |
境界型 | 110〜125mg/dl | 140〜199mg/dl | 6.0〜6.4% | |
正常型 | 110mg/dl未満 | 140mg/dl未満 |
以上のように、糖尿病の判定基準が複雑です。糖尿病は初期症状がほとんどなく、血糖値は一日の中でも食前食後、ストレスなどさまざまな要因によって時々刻々と変化し上下するため、1回の検査では常時高いのかどうかわかりません。
HbA1cの数値は薬を飲んでいる人の場合などでは正確に出ませんので、複数の検査数値を基にして確実に診断できるようになっています。
B「糖尿病」は体の隅々の血管や神経に障害を与えます
これまで、糖尿病のメカニズムを説明してきましたが、糖尿病の状態を放置すると、ヘモグロビンに結合したブドウ糖が全身に巡り体の末端の毛細血管や神経へも障害を与え、色々な合併症を引き起こします。
糖尿病の合併症として、次の疾病を引き起こします。
1.病原菌に対する免疫低下(感染症)
◎歯周病・口内炎
◎湿疹・皮膚炎
◎化膿
◎肺炎・肺結核
◎胆のう炎
◎腎盂炎
◎膀胱炎
2.神経の障害
◎下痢・便秘
◎尿閉・尿失禁
◎無月経・性欲減退
◎むくみ・筋力低下
◎手足の知覚異常
3.血糖値が高いために起こる疾病
◎糖尿病昏睡
◎血管の障害
◎脳血管疾患
◎網膜症
◎高血圧
◎動脈硬化
◎狭心症
◎心筋梗塞
◎糖尿病性腎症
◎腎不全・尿毒性
◎間欠性はこう
◎壊疽
糖尿病の血糖値正常範囲を知っておきましょう !
もし糖尿病と診断されたら
「糖尿病」と診断されたら、合併症を併発しないように、生活の管理して治療を続けていく必要があります。
自分で血糖値をコントロール出来れば、健康であった時と殆ど変らない生活を送る事も可能です。
医師の指導のもとで、しっかりとした生活を管理しましょう。
糖尿病の治療は、まず「食事療法」と「運動療法」が基本ですが、効果が表れない場合は「薬物療法」も加えていきます。
血糖値を正常範囲でコントロール出来ていれば、病状の進行を抑えることが出来き、合併症を防ぐことも可能です。
@ 代表的な指標「HbA1c値%」「血糖値mg/dl」
下表は、「血糖値のコントロール」目標値です。出来る限り正常値に近づけるようにしっかりと取り組みましょう。
根気強く取り組んでコントロールできていれば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
HbA1c値%(JDS)値 | 空腹時血糖値mg/dl | 食後2時間血糖値mg/dl | |
優 | 5.8未満 | 80〜110未満 | 80〜140未満 |
良 | 5.8〜6.5未満 | 110〜130未満 | 140〜180未満 |
可・不十分 | 6.5〜7.0未満 | 110〜130未満 | 180〜220未満 |
可・不良 | 7.0〜8.0未満 | 110〜130未満 | 180〜220未満 |
不可 | 8.0以上 | 160以上 | 220以上 |
※2012年4月からHbA1cが変わりました。
国際的に基準とされている、HbA1c(NGSP)値が用いられる様になりました。
上記の表中のHbA1c(JDS)値と比べて、値が約0.4%高くなります。
従って、血糖管理の目標値も0.4%高くなりますので注意が必要です。
JDS値+0.4=NGSP値
ただし、特定健診については2012年度までHbA1c(JDS)値が使用されます。
例えば
HbA1c(JDS)6.6% → HbA1c(NGSP)7.0%
となりますので、数値の上昇だけを見て血糖コントロールが悪化したと誤解し、経口血糖降下薬を増量し低血糖を起こす危険性もありますので、十分注意しましょう。
暫くの間は、「HbA1c(NGSP)値」と「HbA1c(JDS)値」が併記されることになっているようですが、血糖コントロールの判断については、十分にご注意をしましょう。
※日本糖尿病学会は、2013年4月から国際基準である「NGSP」に統一しました。
また、糖尿病治療の血糖管理目標値を改定いたしました。
例えば、合併症を防ぐ目標を「HbA1c(NGSP)値」を7.0%未満とするなど、三区分にすることになりました。
改定した、NSGPの三区分は次の通りです。2013年に熊本での学会で発表されたので熊本宣言といわれています。
区分@「血糖値の正常化を目指す」は「HbA1c(NGSP)値 6.0%未満」
この区分は食事と運動療法のみの人目標数値です。薬を飲んでいる人でも低血糖を起こさないのであればこの6.0%未満をめざしましょう。
区分A「合併症の予防」は「HbA1c(NGSP)値 7.0%未満」
この区分は薬を飲んだり、インスリン注射をしている人の目標です。7.0%を超えると糖尿病三大合併症の可能性が高くなります。7.0以上にならないようにしましょう。
区分B「治療強化が困難な場合」は「HbA1c(NGSP)値 8.0%未満」
この区分は薬を増やすと低血糖を繰り返す治療が難しい人でも8.0%を超えないように注意しましょう。
この区分は、2013年6月1日から施行されています。
A 糖尿病診断の新たな指標「グリコアブムミン」
今は糖尿病診断の指標としては使われていませんが、既に日本赤十字社では献血の際に採血した血液の指標として「グリコアブムミン」を採用しています。
血液中にはたんぱく質の一種にアブムミンといわれる物質があり、ブドウ糖と結合すると「グリコアブムミン」となります。
この指標は、血液中の「グリコアブムミン」の値を検査することで血液中のブドウ糖の高低を判断することが出来ます。
HbA1cよりも2〜3週間の比較的短期間の血糖の変化がわかりますので、低血糖と高血糖を繰り返している人の血糖値コントロールの目安に採用されています。また、薬物療法を始める時に、薬の効き具合を確認する時に役立っています。
現在、採用されている指標の「HbA1c値%」や「血糖値mg/dl」は治療の効果を測定するのに時間がかかりますが、「グリコアブムミン」は短期間で効果の判定が出来るメリットがあります。
妊娠中や血液透析を行っている人は、HbA1cに誤差を生じやすいため、このグリコアルブミンの数値を参考にして血糖のコントロールをしています。
グリコアブムミン値 | 判 定 |
15.6%未満 | 標準値 |
15.6%以上 16.5%未満 | 正常高値 |
16.5%以上 18.3%未満 | 境界域 |
18.3%以上 | 糖尿病域 |
1,5-AG検査(イチゴ・アンヒデロ・グルシトール検査)
1,5-AGは食べ物に含まれていてブドウ糖に似た成分です。高血糖になると血中のブドウ糖が尿とともに排泄されますが、この時に血中の1,5-AGも尿と一緒に排泄されますので、高血糖状態の時には血中の1,5-AGが減少します。
よって、血中の1,5-AGの濃度を検査することで、過去の数日間の血糖コントロール状態を把握することができます。
健康な人の場合で、14μg/mL以上です。
高血糖が続くとこの数値は低くなります。
採血した時点の血糖値が低くても、1,5-AGの検査値が低ければ過去数日間の血糖値が高かったことがわかる検査です。
食事や運動に影響されず、食後血糖値が高い方や軽度の高血糖の方などの検査に適しています。
ただし、尿糖を増やして血糖値を下げる治療薬のSGLT2阻害薬を服用している人には使用できない検査です。
ケトン体検査
ケトン体とは、インスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギー源として使えないときに、代わりに体の脂肪分をエネルギーに変換した結果、産生される物質です。
尿中のケトン体は試験紙で簡単に調べられます。陽性であれば、体内でのブドウ糖の利用が少なく、脂肪をエネルギー源として使用していることが分かります。
正確に調べる場合には、血中ケトン体を測定します。
すい臓の働きを調べる検査
採血により、血中インスリンや血中C-ペプチド濃度を測定する検査や24時間分の尿からインスリン分泌量を調べる尿中C-ペプチド濃度検査があります。
合併症の検査
糖尿病の三大合併症として網膜症、腎症、神経障害があげられます。
対策として、眼底検査や尿中アルブミン測定、腱反射テストなどが行われます。
また、糖尿病では動脈硬化が進むため血管系統の障害の程度を調べるために血圧やコレステロール、中性脂肪、心電図、脈波検査なども行われます。
糖尿病は治療と管理を徹底 !
医師のサポートを受けましょう
糖尿病は、食事療法と運動療法が基本です。
その上で薬物療法を採用するか、更にインスリン療法にするか否かの医師の診断が不可欠となります。
生活習慣を改善し、継続する必要性が要求されますので、医師のサポートを受けながら、自分で治す病気だと言えます。
自覚症状がないため、危機感を感じにくい
そしてここに糖尿病の治療の難しさが隠れいてるといえます。
初期の糖尿病の症状には、例えばインフルエンザのように高熱が出るなどの異変がありません。
糖尿病と診断されてもその時点では、痛くも痒くもない初期のケースが殆どですから、病気に対する恐怖感や治療に対しての危機感を感じづらいことがあげられます。
仕事が多忙であったりして、毎日の生活の中で食事療法、運動療法、薬物療法などに気を配り継続することは非常に難しいことでもあります。
症状が出ないといって、放置すると三大合併症に
しかしながら、このセルフケアとも言える生活の基本を改善しない限りは糖尿病は進行するでしょう。
ほかの病気に比べてこのセルフケアを放置してしまえば、最も怖い三大合併症といわれる「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」に進んでしまいます。
更に「心臓疾患」「脳梗塞」などの生命にかかわる病気に繋がっていきます。
これらの症状や疾病となってしまうと、慌てて生活習慣の改善や治療に取り組んでも手遅れとなってしまいます。
初期の段階の内に「食事療法」、「運動療法」、「薬物療法」を継続し、血糖値のコントロールをすることが、大切なポイントなのです。
<政府の食事バランスの指針>
@ 「糖尿病」治療のための教育入院
初めて糖尿病だと診断された時に、生活を改善し継続していくための知識や心構えなどのために病院へ入院して数日間の「教育入院」を行っている病院もあります。
「教育入院」では、食事療法をしていく中での摂取カロリーの計算方法やバランスの取れた栄養を摂取するための知識、運動療法の進め方などの講義を受けます。
「教育入院」を受けた方がその後の糖尿病の進行を抑えることが出来たとの統計もあります。
A 糖尿病治療には気持ちにゆとりを持ちましょう
糖尿病の改善に必要なのは、まず生活習慣の改善と言われています。
糖尿病を引き起こしてしまった乱れた習慣を規則正しい生活習慣に切り替えて、長期間にわたり継続しなければなりません。
制約した日常生活自体が大きな精神的ストレスとなってしまいます。
「どうして自分が糖尿病になったのか、」という怒りや「好きなものを我慢するくらいなら生きている価値がない」などマイナス思考に陥ってしまうケースがとても多くみられます。
このような精神状態となると家族や会社の部下などにもあたり、また医師への不信感なども生まれることもあり、継続治療が困難となることもあります。
このような状態が続くと「うつ病」を併発する人も多く、糖尿病の改善に必要なセルフコントロールも困難となります。
長期間続く糖尿病の治療では、本人に対して周囲の家族は十分配慮してあげる気持ちがとても大切です。
B その他の日常生活でのセルフケア
糖尿病には、「食事療法」「運動療法」を基本として、更に糖尿病の進行状態によって「薬物療法」又は「インスリン療法」が必要となります。
その他にも糖尿病の病変を早期に発見したり、糖尿病の悪化のリスクを軽減するために日常的に次のようなセルフケアを続けましょう。
足の手入れをしましょう
糖尿病が進行すると足先などの末端の血管の血流が悪くなり、足の怪我や靴擦れ、水虫やたこなどが治りにくくなり重症化しやすくなり、潰瘍や壊疽などを引き起こして、最悪のケースでは足を切断しなければならない場合もあります。
足のトラブルと糖尿病はとても関係が深く、普段から足の異変を注意深く観察することで早期に病変を発見することができます。
歯周病の予防で糖尿病のリスクを軽減
糖尿病と歯周病は、悪い相関関係にあることがわかっています。
糖尿病の人は歯周病を併発しいる人が多く、歯周病になると血糖値のコントロールに支障が出て糖尿病を悪化させることもわかっています。
この悪い相関関係をつくらないためにも口腔ケアは大切です。正しいブラッシングと歯間ブラシやデンタルフロスなども利用し歯周病を予防しましょう。
一年に一度は歯の定期健診を受けて歯垢など取ってもらいきれいに保ちましょう。
毎日体重をチェックしてコントロールしましょう
肥りメタボリックシンドロームになるとインスリンの働きが悪くなり血糖値が上昇することがわかっています。
また代謝機能も低下するため動脈硬化も進行してしまいます。
肥満を解消して適正な体重を保つ努力が必要です。
このため、摂取カロリーを適正に保つための「食事療法」と消費カロリーを増やすための「運動療法」を確りと根気強く継続することが大切です。
C 最新情報「自己管理プログラム」
糖尿病は、完治するのは難しく、改善させるためには食事や運動、そして薬、インスリン投与などの日常的な自己管理が欠かせません。
日々の自己管理が必須となるため、無力感や憤りを感じる方も多いのですが、最近では、糖尿病の方が治療に積極的に参加し、病気とうまく付き合う方法を教える取り組みが広がっています。
糖尿病患者同士がお互いの悩みを話し合い共有して「自分に合った運動や食事の方法を見つけ出す」ことを目的とした試みも始まっています。
糖尿病疾患の参加者には、「食べる量が減り糖尿病治療に前向きになった」などの効果が上がっています。
このように自分で糖尿病を治そうとする「自己効力感」を高めてもらうプログラムを提供している団体があります。
NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会(東京都港区)は、米国医大のノウハウを使って全国でセミナーを「セルフマネージメントプログラム」を開催しています。
同セミナーでは、糖尿病患者が最低一人は講師陣に入り、薬、運動、疲労、痛みの管理方法やコミュニケーションの取り方などを糖尿病患者の方達と話し合います。
糖尿病の治療では、運動が大切だと言われていますが、「なぜ、運動が大切なのか?」を説明できる患者は意外に少なくなく、糖尿病患者同士が意見を交換することで自ら気づくことを促していきます。
「薬物療法」と「インスリン療法」と最新情報
@ 「薬物療法」
糖尿病の初期では、まず「食事療法」と「運動療法」を取り入れて血糖値の改善を図りますが、それでも血糖値が改善しない場合にそのまま放置すと更に悪化して合併症を併発するリスクが高くなりますので「薬物療法」を追加して、合併症を予防する必要があります。
「薬物療法」には、「インスリンの働きを向上させる薬」「インスリンの分泌を向上させる薬」「食事からとったブドウ糖の吸収を遅らせる薬」「インクレアチンの働きを助けてインスリンの分泌を向上させる」などのタイプがあります。
「薬物療法」には、これらの薬を単独或いは、作用の異なる薬を併用して進められています。
「薬物療法」で注意しなければならないのは、医者に指示された用法、用量を必ずに守ることが重要です。
薬を服用するタイミングを誤ってしまうと、「低血糖」を引き起こして昏睡状態に陥ることもありますので、処方された薬の作用を理解しておくことも大切です。
「薬物治療」を開始すると血糖値が改善し、病気が改善したと勘違いをして自己判断で薬を止める人も多いようです。
「食事療法」「運動療法」なども含めた相乗効果で下がっている可能性もありますが、薬の効果で一時的に血糖値が下がっていることも多いので、医師の指示もなく、薬を止めるのは大きなリスクが伴います。必ず医師の指示をあおぎましょう。
A 「インスリン療法」
糖尿病患者に対して「食事療法」と「運動療法」に加え「薬物療法」を追加しても血糖値が改善しない場合は、糖尿病が進行しておりインスリンの分泌が更に低下した状態で必要量が分泌されていない状態です。
この不足したインスリンを注射により体に直接補充する治療が「インスリン療法」です。
2型糖尿病は、この「インスリン療法」が最終手段となります。
「インスリン療法」では、患者自身が自分で注射をうち、血糖値をコントロールします。
インスリンの製剤にも、幾つかのタイプがあります。
「効果が早く現れる」タイプ、「効果が長く維持する」タイプなどがあり、インスリンの分泌量や働きの程度により、薬の種類や量、回数、タイミングなどにより変わってきます。
使用している薬剤の種類や用法を理解するとともに必ず医師の指示に従って正しく行いましょう。
「インスリン療法」では、直接体内にインスリンを補充するので、即効性があり効果が高い反面、インスリンが効きすぎてしまい「低血糖」を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
「低血糖」を引き起こすと、空腹感や脱力感、冷や汗、動悸や震え、手の痺れなどの他にひどい場合は、めまいや痙攣なども起こり、更に昏睡状態となり生命にかかわる場合もあります。
「薬物療法」や「インスリン療法」をしている人は「低血糖」を引き起こす可能性があることを心に留めておき、いざというときに対処できるように普段から準備をしておきましょう。
次のケースの時に「低血糖」を起こし易いといえます。
○食事を抜いたり、食事の量が少なかったときの薬の使用 |
○食事が終わって長時間経過後の薬の使用 |
○「食事療法」内容、「運動療法」の強弱の兼ね合い |
○医師の指示なく薬を増やした |
○薬の種類や回数タイミングを変えた |
○お酒を飲んだ後の薬の使用 |
B 「低血糖」の対処法
「低血糖」を起こしたときには、早めに糖分を補給しなければなりません。
低血糖の症状は、空腹感、眠気、だるさ、吐き気、イライラ感、頭痛などの身体症状だけでなく、神経症状で意識がはっきりしなくなり朦朧となったり、最悪の場合には痙攣や昏睡状態となり生命にも関わってきます。
特に車や機械の運転中に低血糖症状を起こすと危険な状態となります。
○常にブドウ糖、スティックシュガー、角砂糖、ジュース等を携帯しましょう。
※キャンディやチョコレートは吸収に時間がかかるため、緊急用としては不向きです。
症状が現れたら、↓↓↓
○ブドウ糖、スティックシュガーやジュースの糖分を含む物を口に入れて補給しましょう。
糖質を補給した後は安静にして、食事時間が近ければ食事をして再発を防ぎましょう。次の通院日に主治医に報告して支持を受けましょう。
症状が続く場合は、↓↓↓
○すぐに病院へ行きましょう。
○意識を失った時などの緊急時のために常時糖尿病カードを携帯しておきましょう。家族や友人にも知っておいてもらえば、緊急な時に対応してもらえます。
Cシックデイの対処法
糖尿病患者が風邪などの他の病気にかかった時をシックデイといいます。
ウイルスや細菌などの感染症の場合には血糖値を急激に上げてケトアシドーシスとなることがあります。
風邪などの呼吸器疾患では、咳などの症状とともに発熱して、血糖値が上昇することが多く、インスリンの量を増やし、内服薬をインスリンに切り替える対応が必要になるケースがあります。
また、消化器疾患では、下痢やおう吐、腹痛などの症状によって、食事や水分が摂取できないケースがあり、低血糖や、脱水による糖尿病昏睡の危険もあります。
症状が重くなると急激に高血糖になることもありますので、血糖値の自己測定の回数を増やし、可能であれば尿のケトン体を調べて、主治医の受診も考えておくべきです。
呼吸器疾患や消化器疾患では、食事が十分に摂取できないことから低血糖を心配しますが、病気のストレスから血糖が上昇することが多いことがわかっています。
食事が全くできなかったり、高熱や下痢、おう吐が続き、血糖値が250mg/dl以上の高値が続くようであれば、すぐに主治医の診察を受けましょう。
「血糖測定器」のご案内です。
痛みはほとんどなく、簡単に測定できて便利です。
操作が簡単で、記録も長期に保存してくれているので安心です。