糖尿病辞典

糖尿病の判定基準と「ヘモグロビンA1c」

 

糖尿病の判定基準を知っておきましょう

 

日本糖尿病学会は、糖尿病の血糖値による判定基準を定められています。

 

具体的には、次の@〜Bの条件のいずれか一項目が日を変えた2回の検査で認められた場合、糖尿病と判定しています。  

 

@早朝の空腹時血糖値が126mg/dl以上

 

Aブドウ糖負荷検査2時間値が200mg/dl以上  

 

B随時血糖値が200mg/dl以上

 

 

ブドウ糖負荷試験が糖尿病型で下記の二項目のうち、一項目を満たす場合、糖尿病と判定しています。

 

@糖尿病の典型的な症状である渇き、多飲、多尿、体重減少

 

Aヘモグロビン(Hb)A1cが6.5%以上 

 

 

境界域も知っておきましょう

 

また、境界域が設けられており、正常値と糖尿病域の間のことです。

 

境界域の具体的な数値として空腹時が110〜126mg/dl未満、食後2時間血糖値が140〜200mg/dl未満としています。

 

血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことであり、血液1dl当たりのブドウ糖の量をmgで表します。

 

健康な人の血液は早朝の空腹時の血糖値は100mg/dl以下で、食後でも160mg/dlを超える事はありません。 

 

「ヘモグロビンA1c」はブドウ糖と結合したヘモグロビンの割合

 

ヘモグロビンA1cとは、赤血球の中にあるヘモグロビン(血色素)のうち、ブドウ糖と結合しているグリコヘモグロビンの割合をパーセントで表した数値です。

 

グリコヘモグロビンはブドウ糖と結び付き易く、血液中のブドウ糖が多くなるほど、ヘモグロビンA1cの割合も高くなっていくため、1から2か月間の血糖値の状態を知ることができます。

 

本来ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割

 

健康な人のヘモグロビンA1cは4.3から5.8%としています。本来ヘモグロビンの役割は酸素と結合して全身にくまなく酸素を送り届ける役割を担っています。

 

ヘモグロビンが酸素の代わりにブドウ糖を運ぶ事が病気の原因

 

しかし、酸素のと結びつくはずの結合部分にブドウ糖がくっ付いてしまっているのです。

 

そうすると全身に酸素の代わりにブドウ糖が巡ることになります。

 

このことが体に対して色々な副作用を起こす原因となります。

 

実は、血糖値そのものは食事の内容や体調、ストレスなどによって常々変化することが分かっています。

 

例えば、血液検査や健康診断の数日前からブドウ糖が多く含まれる食事を抑えることで、血糖値を低めに抑えることができます。

 

しかし、ヘモグロビンA1cを測定すれば、1から2ヶ月間以前の血糖値の状態を知ることが出来るので、ヘモグロビンA1cの数値は、糖尿病の重要な指標といえます。

 

   

糖尿病と高血圧

 

糖尿病による動脈硬化

 

糖尿病の合併症は血管が傷み脆くなることによって起こりやすくなります。

 

また、血管にダメージを与える他の要因が加わることで、更に合併症が起こりやすくなることが分かってきました。 

 

最も合併症に悪影響を与えるのは血圧です。

 

糖尿病によって血管の弾力性が失われてくると、全身に送る血液を促し、確保するために心臓の圧力が高まるために高血圧になります。

 

このことが動脈硬化の危険性を高めることになります。 

 

生活習慣病のトップは高血圧、糖尿病との関係

 

平成18年の国民健康・栄養調査によると、高血圧の患者(高血圧症有病者)は3970万人(38.2%)、予備群(正常高値血圧者)は1520万人(14.6%)と、生活習慣病の中でトップになっています。 

 

血圧の抑制目安である降圧目標値を見ると、糖尿病の合併症がある人の場合には、拡張期血圧は130mmHg、収縮期血圧は80 mmHgと「高血圧の治療ガイドライン2009」では最も低く設定されています。 

 

糖尿病になると高血圧になり易く、また両方の病気が重なることで動脈硬化が進みやすくなることが指摘されています。

 

心臓病ののリスク要因

 

心臓病のリスクとして、健康な人の危険度を1とした場合に、肥満、高血圧、高血糖、中性脂肪血症の危険因子の内何れか1つでもある場合には、5.14倍、2つある場合は5.76倍、3つから4つを併せ持つ場合には35.80倍にもなることが分かっています。

 

糖尿病の人が高血圧になる理由

 

@循環血液量が増える  

 

血糖値が高い状態では体内の細胞の浸透圧が高くなり、水分が細胞内から細胞外に出ていきます。

 

伴って腎臓から吸収される水分量が増え、その結果、血管を循環する血液の量が増えることで、血液が血管を圧迫することで血圧が上昇します。

 

 

Aインスリン抵抗性  

 

糖尿病の人はインスリン抵抗性があります。

 

インスリン抵抗性は、インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している状態のことで、この状態ではブドウ糖が筋肉細胞に多く取り込まれず、血液中で多くなったブドウ糖が尿と一緒に排出されます。 

 

インスリンが効きにくくなると、それを補うためにインスリンが膵臓から大量に分泌されるようになり、高インスリン血症となります。

 

高インスリン血症では、交感神経の働きが盛んになり、腎臓でナトリウムが排泄されにくくなるため、血管の細胞の成長が促進されて血管の壁が厚くなり、血管の弾力性が失われて拡張しにくくなって血圧が上昇します。

 

 

B糖尿病性腎症  

 

糖尿病性腎症では、腎臓の細くて弱い細小血管である糸球体がもろくなっていくために、充分に濾過ができなるため、体内の有害物質が多くります。

 

糖尿病性腎症になると、腎臓から血圧を上昇させるホルモンが多く分泌されるようになり、血圧が上昇します。

 

 

C肥満  

 

糖尿病の患者の約60%が肥満と言われ、糖尿病患者の約50%が高血圧のリスクがあるとも言われています。

 

内臓脂肪が多く蓄積されると、脂肪細胞自体からの分泌が高まり、血液中のアンジオテンシンを増加させて血圧を上昇させる物質であるアンジオテンシノーゲンが作られ、アンジオテンシノーゲンは、ポリペプチドの一種で、昇圧作用を持つ生理活性物質のアンジオテンシンUを作り出します。

 

アンジオテンシンUはインスリンの作用を抑制することや膵臓の機能を阻害してインスリン分泌を低下させる作用があるため、肥満によって糖尿病が発症しやすくなります。

 

   

糖尿病の怖い合併症

 
糖尿病では、合併症を予防することが最も大切になります。血糖値は、食事や運動、薬などによって下げることが出来ますが、合併症を起こすと元の状態に戻すことが出来なくなります。

 

高血糖を放置すると糖尿病昏睡を起こすことも

 

インスリンの分泌に支障をきたして高血糖が続くことが糖尿病ですが、体全体に現れる合併症にその怖さがあります。

 

高血糖のまま放置しておくと糖尿病昏睡といって、意識が無くなり昏睡状態に陥り死に至ることさえあります。

 

これはインスリンの作用不足から起こるのですが、例えば医師に相談もなくインスリン注射を止めてしまったり、脱水症状を起こしたり感染症にかかったり、やけどや心身のストレスが原因で起こることもあります。

 

高血糖の原因で他の病気の薬を服用出来ない場合も

 

血糖値の状態により、他の病気で使いたい薬が使えなかったり、また合併症の可能性がある場合、他の病気の手術もできない場合もあるのです。

 

また、糖尿病患者が妊娠出産する場合もリスクを伴います。

 

妊娠や出産をきっかけとして、血糖値が不安定になり、合併症が更に悪化したり、生まれた子供に先天性の異常が起こることもあります。

 

また流産や死産の可能性も高まってしましいます。

 

更に小さな怪我や傷にも注意が必要になります。

 

糖尿病の合併症

 

抵抗力が衰えているため、病原菌が体内に侵入して重症化しやすいのです。

 

神経障害の影響で、足先などの末端部の痛みを感じにくくなっているので、気が付かずに悪化してしまうケースも目立ちます。

 

最悪の場合、足が壊死して切断を余儀なくされる場合もあります。

 

糖尿病の最も怖いのは、動脈血管を傷めるため一気に動脈硬化を引き起こします。

 

また毛細血管も傷めてしまうので、毛細血管が集まっている眼球や腎臓の糸球体など、全身の神経系に様々な影響を及ぼします。これが糖尿病の「三大合併症」です。

 

 

筋力トレーニングは糖尿病予防に効果

 

米国の20年近くに及ぶ大規模な調査研究により筋力トレーニングが糖尿病の発症リスクを大幅に軽減することが分かりました。詳しくはこちらをご覧下さい。>>>筋力トレーニングが糖尿病を予防する

 

   

糖尿病の三大合併症の症状と検査

 

あなたは、こんな症状がありませんか?

 

・慢性的な身体のだるさ。

 

・いくら食べても、太らない・・・というより痩せていく。

 

こんな症状がず〜っと続いていたら、要注意です!糖尿病の疑いがあります。

 

しかも、この症状がでるまで5〜10年かかると言われてますから、高血糖状態で5〜10年経て症状が出ていることになります。

 

糖尿はハッキリした症状が出にくいとされてますが、唯一この症状が、その糖尿病の代表的な症状のようです。

 

本当に怖い糖尿病の三大合併症

これらの「糖尿病の三大合併症」は、「縮小血管障害」に起因しており、細い血管に起こる血管障害で失明や人工透析につながる糖尿病特有の非常に深刻な疾患です。
 
「糖尿病性神経障害」の症状は多岐にわたります。

 

そして、この症状が進んでいくと、もっと怖〜い合併症が現れてきます。

 

それが、有名な「糖尿病の三大合併症」といわれる、ちょっと難しい名前ですが、

 

糖尿病性神経障害

 

糖尿病の多くの患者が、早い時期から悩まされる合併症が神経障害です。
 
高血糖の状態が続くと、毛細血管が傷害される血流低下や神経の変性が起こり、単発性や多発性の神経症が起こります。特に足に神経症が起こります。

 

神経障害症状

 

神経障害の初期症状は、足の痛みや火照り、しびれなどですが、感覚として、「アリがはっている」、「障子紙をはられているようだ」など様々です。
 
神経障害では、以上のような感覚が左右の指先や足裏に起こります。
 
このような初期の症状や感覚は、生活に大きな影響を及ぼさないため、多くの方は病院に行かず見過ごしてしまいます。

 

足の痛みや火照りなど

 

神経の異常が進行すると、筋力が弱くなって萎縮して、力が入らなくなったりとますが、これらの進行もとても緩やかなため本人は気づきにくいのです。
 
初期症状の足の痛みや火照りなどの感覚が消失するために治ったと勘違いすることさえありますが、神経障害が進行して感覚が鈍くなり、怖い状態といえます。

 

運動しても脈が上がらない

 

進行すると、神経線維がいちばん細く、様々な働きを調整している自律神経にも障害が及びます。
 
自律神経が障害されると、運動をしても脈が上がらなくなるため、疲れやすく持久力が無くなり、心臓の動きもが異常になって不整脈を起こすこともあります。

 

便秘や下痢を繰り返す

 

また、自律神経は胃や腸なとの消化器を支配しているため、頑固な便秘やひどい下痢となる場合もあります。
 
さらに、胃腸の働きが低下して長時間にわたって食べ物が胃に滞留することで血糖値が急上昇することもあり、血糖値が不規則に変化してしまいます。

 

尿意を感じなくなる

 

尿意を感じるのも自律神経で、神経障害で感じなくなると尿が膀胱にどんどんたまるようになり、尿道から膀胱にカテーテルを入れて排尿する自己導尿が必要になります。

 

男性はインポテンツに

 

高血糖状態が長く続くと、毛細血管障害によって血流が低下して知覚も鈍くなり男性ではインポテンツが起こります。
 
全国に100万人の患者がいると推定されていますが、受診する人が少ないのが現状です。

 

下肢を切断する壊疽に

 

以上ように、神経障害ではさまざまな症状が起こりますが、感覚神経の障害が重度化すると強い痛みやしびれなどによって不眠となったり、足の関節や骨が変形することもあります。
 
また、熱さや冷たさを感じる感覚が麻痺してやけどをしやすくなったり、傷を負っても気づかずに化膿するようになります。
 
この状態になる危険な状態です。
 
糖尿病では抵抗力が弱くなっているので、傷を放置することで潰瘍や壊疽になり、放置すると死に至るため、下肢の切断を余儀なくされるケースもあります。

 

 

縮小血管障害に起因する糖尿病性神経障害の症状や疾病のまとめ


 
※顔面神経麻痺
 
※味覚障害
 
※下痢、便秘
 
※手足のしびれ、痛み、麻痺
 
※眼筋麻痺
 
※立ちくらみ
 
※排尿障害
 
※勃起障害
 
※こむら返り
 
※足の潰瘍、壊疽

 

いつも身体がだるく、疲れが残り、やる気が出ない、気分的にもハリがなく滅入りがちで、すぐ横になってしまう。

しかもよく食べているんだけど、一向に身体に肉がつかず、体重計をみても増えず痩せていく・・・こんな症状にできるだけ早く気がつく事が大切ですし、糖尿病を疑う必要があります。

 

 

神経障害の検査

 

アキレス検査

 
アキレス腱反射を調べる検査です。
ベッドに立膝で座って、足首をベッドの外に出して楽な状態で、アキレス腱を診断用のゴムハンマーで軽く叩いて、筋肉の反射を確認する検査です。
神経障害がある場合は、動きが鈍くなったり、全く動かなくなっています。

 

 

振動覚閾値検査

 

振動させた電動音叉計をくるぶしやすねにあてて、振動を感じるかどうかを検査します。神経障害がある場合は、振動に気づきません。

 

末梢神経伝導速度検査

 
ベッドに仰向けに寝て、検査に電極をつなぎ、わきの下から手の指まで走っている正中神経の上に電極を置いて、中枢神経と末梢部の2か所を電気刺激し、筋電図を記録する検査で運動神経を調べることができます。
 
中枢部を刺激して、末梢部で記録したものが感覚神経の検査です。
 
いずれも、神経障害が始まっている場合は、基準の数値よりも低くなります。

 

呼吸心拍変動係数検査

 

安静にした時と深呼吸した時の心電図を比較することで自律神経の障害の有無を調べる検査です。
 
正常な場合では、深呼吸で脈拍が変動しますが、自律神経に障害があると脈の変動がありません。
 
その差を係数化することで障害の有無や程度を検査します。

 

   

糖尿病性網膜症

 

高血糖が続くと、血管や毛細血管が障害を起こします。
 
「糖尿病の三大合併症」の中でも、最も怖いのが「糖尿病性網膜症」(とうにょうびょうせい もうまくしょう)と言われてます。
 
 ”失明”を高確率で誘発してしまうからです。
 
糖尿病になった方の約50%の患者が発症すると言われてます。
 
つまり糖尿病患者の半分が、この”失明”に向かう事になります。
 
先天的な原因での失明は別として、後天的な失明の原因では、この「糖尿病性網膜症」による”失明”が最も多いということです。

 
生活習慣病の中でも死亡リスクの要因が高いとされる糖尿病、そして合併症は、思っているより深刻な問題です。

とにかく早く対処する必要があります。
 

 

糖尿病性網膜症は失明のリスク高く、毎年4000人が失明しているといわれています。
 
糖尿病と診断されても、眼科を受診する人が少なく、自覚症状がなく進行して、失明へとつながりますので、糖尿病と診断されたら、一度眼科を受診しましょう。

 

糖尿病性網膜症の症状

 

糖尿病性網膜症は、「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」と進んでいきます。

 

単純網膜症

 

初期では、血管の周囲の細胞や血管を作っている細胞が障害を起こし、血管の一部に毛細血管瘤と呼ばれるコブができて血液の流れが悪くなります。
 
このコブが増えると血管自体ももろくなって破れて出血を起こします。
 
これが眼底出血です。
 
眼底出血によって、網膜がむくみ、血漿の中のたんぱく質が網膜に沈着して硬性白斑という白いまだら模様がみられるようになります。
 
ほとんどの場合、網膜の外縁に起こるので視力には影響しないため、自覚症状がないのが特徴です。
 
この状態が「単純網膜症」と呼ばれ、糖尿病になって10年から20年で、患者の約半数に起きています。

 

増殖前網膜症

 

単純網膜症を放置すると、毛細血管が次々とふさがって範囲も広がり、網膜中に血液が行きわたらないところが出来ますが、その場所は血液が通わないため酸欠状態となってしまいます。
 
この状態になると、新たな血管をつくって血液を送る働きを促すホルモンが分泌されますが、この状態が「増殖前網膜症」です。

 

増殖網膜症

 

もともと網膜には細胞が詰まっていて新しい血管が入る余地はありません。
 
しかし、ホルモンの作用で新たな毛細血管を作るように促されるため、網膜の表面や硝子体に作ってしまいます。
 
この場合の毛細血管はもろく、少しの外圧や血圧の上昇によって破けれて出血します。
 
硝子体の中に出血すると、雲がかかったように見えにくくなることもあります。
 
出血するたびにだんだん視力が低下していきます。
 
この状態が「増殖網膜症」です。
 
増殖網膜症が繰り返されると網膜が眼底からはがされる牽引性網膜剥離となって失明の原因になります。

 

糖尿病網膜症の検査

 

糖尿病網膜症の検査は眼底検査を行います。
 
眼底は眼球の後側にあたる部分で、硝子体、網膜、脈絡膜、視神経乳頭などの総称です。
 
眼底検査では、網膜動脈や視神経乳頭の状態を直接観察して判断します。
 
検査の回数は、「単純網膜症」の初期では年に1回、「増殖前網膜症」では1〜2カ月に1回、「増殖網膜症」では2週間〜1か月に1回の検査が標準となっています。
 
糖尿病と診断された場合は、一度眼科で検査をしましょう。症状が出てからではかなり進行していると考えられます。
 
眼底検査を受けるときは、電車やバスなどの交通機関を利用しましょう。
 
眼底を詳しく検査するため、瞳を開く散瞳検査を行うと物が見えにくくなるため、自動車や自転車の運転は禁止されています。
 
これらの「糖尿病の三大合併症」は、「縮小血管障害」に起因しており、細い血管に起こる血管障害で失明や人工透析につながる糖尿病特有の非常に深刻な疾患です。

 

   

糖尿病性腎症

 
糖尿病の三大合併症で症状が出るのが一番遅いのが、糖尿病性腎症です。
 
腎臓の糸球体は毛細血管のかたまりで、水道の浄水器の役割をしています。
 
この糸球体に老廃物をひっかけて選別しています。
 
高血糖が続くとこの糸球体の毛細血管が障害を起こします。
 
血中のブドウ糖が血管壁のたんぱく質にくっついて、通り道を狭くして動脈硬化を起こします。
 
そのため、さまざまな物質がたまってろ過機能が低下して、ろ過の網目も粗くなって、大切なたんぱく質も尿中に排泄されます。
 
毎年6000人の人が糖尿病性腎症によって人工透析が必要になっています。

 

糖尿病性腎症の症状

 

糖尿病性腎症は第1期から第5期までに分類されます。
 
第1期は、糖尿病性腎症の前期で尿中に微量のアブムミンなどのたんぱくが排泄されるので尿検査でアブムミンが陽性となります。
 
尿検査でこの兆候を見逃さないことが重要で、糖尿病性腎症を予防、進行させない唯一の方法です。

 

第2期まで自覚症状がない

 

症状は少しずつ進行しますがたんぱくが尿から排泄されるようになると、血圧が上昇するため血管や毛細血管が傷つけられて腎臓を悪化させる負のスパイラルに陥ります。
 
怖いのは、第2期までは自覚症状がないことです。
 
自覚症状がない第1期から第2期までは進行がとても遅く10年から20年もかかるといわ
れています。

 

第3期以降は進行が早い

 

第3期以降は進行が早くなり2年から5年で人工透析が必要になります。
 
第3期以降の症状としては、むくみ、息切れ、胸の苦しみ、食欲不振などが起こります。
 
第4期以降からは顔色が悪くなり、吐き気や嘔吐、足のつり、手のしびれ、腹痛、発熱などさまざまな症状が起こります。

 

怖いネフローゼ症候群

 

尿中に蛋白が大量を排泄されるようになるため血液中の蛋白が減って顔や手足、全身にむくみを生じ胸部や腹部に水がたまるネフローゼ症候群になる恐れがあります。
 
ネフローゼ症候群では、血液が凝固して血栓が出来やすくなり、腎静脈や下肢深部静脈に血栓が発生する他に、心不全、心筋梗塞などの心臓血管合併症のリスクが高まる大変危険な状態です。

 

糖尿病性腎症の検査

 

尿糖検査

 
糖尿病性腎症は、血糖値コントロールをしていないと10年程度で発症するといわれています。
 

細菌感染検査

 

糖尿病になると免疫力が低下するため細菌感染が起こりやすくなります。 
 
特に腎臓や膀胱などの臓器は細菌感染は細菌感染が起こりやすい部位です。
 
尿の白血球を調べる検査をします。

 

アルブミン検査

 

重要な検査はアルブミン検査です。
 
腎臓のろ過機能を司る糸球体に障害を生じて重度化すると尿中にたんぱく質が排泄されるようになり、尿中のアルブミンの量を検査することで糸球体のダメージ状態を推測することができます。

 

腎臓の機能を調べる検査

 

腎臓の機能は血液中のクレアチニンや尿素窒素を調べます。

 

クレアチニンは老廃物の一種で腎臓の機能の低下とともに血液中の濃度も高くなります。

 

「大血管障害」などの症状や疾病のまとめ

 

「縮小血管障害」に対して「大血管障害」は、心筋梗塞や脳梗塞などの発症すれば、すぐに命に関わる疾患です。
 
糖尿病のほか、糖尿病の患者に良くみられる高血圧や肥満など、他の要因と重なることで、発症や悪化のリスクが格段に高まってしまいます。
 
また、「急性合併症」や「その他の合併症」があり、「糖尿病は合併症のデパート」といわれるほど全身のあらゆる部分に重大な合併症を引き起こす大変怖い病気なのです。

 

「大血管障害」の症状や疾病

 


※脳卒中
 
※心臓病(心筋梗塞、狭心症)
 
※下肢閉塞性動脈硬化症

 

「急性合併症」の症状や疾病


 
※糖尿病昏睡
 
※肺炎
 
※皮膚感染症
 
※膀胱炎

 

   

「その他の合併症」の症状や疾病


 
糖尿病では免疫力も低下するため、感染症を引き起こしやすくなります。
 
傷も治りにくく、肺炎や結核、膀胱炎、胆のう炎などの内臓も感染症のリスクが高まります。
 
よって、血糖値が高い状態では、白内障などの手術をすることもできなくなります。 

 

歯周病

 
以前より、糖尿病の人は歯周病の罹患率が高いことが知られていました。糖尿病の人の歯周病の罹患率は健康な人の約2倍といわれています。
 
糖尿病の期間が長く、また血糖コントロールが悪い人ほど歯周病の罹患率が高くなっています。
 
糖尿病の人が歯周病に罹患しやすい原因として、高血糖が続くと浸透圧の関係で多尿症となりますが、体内の水分が失われて口腔が乾燥し歯周病菌が繁殖しやすくなります。
 
また、糖尿病の患者は免疫力が低下していますので、組織を修復する力も弱くなっているため歯周病の罹患率が高くなます。
 
逆に歯周病の治療を確りして維持すると、HbA1cが改善することが分かっています。
 
歯周病に罹患すると免疫システムはさまざまなサイトカインを放出して細菌の活動を抑えようとします。
 
このサイトカインが多く放出されるとインスリンの働きが抑制されるため、細胞へのブドウ糖の取り込みが阻害されて血糖値が上がり、負のスパイラルに陥ります。
 
以上のように、糖尿病と歯周病は深い関係にありますので、歯周病の治療を最優先する必要があります。
 
歯科医院でのスケーリングと自宅での歯磨きや歯間ブラシなどのブラッシングが不可欠です。
 

がん

 
糖尿病とがんの関係を示唆する研究は数多くなされています。
 
九州大学が行っている福岡県糟屋郡久山町の町民を対象にした研究では、「空腹時血糖値100mg/dl未満の人ががんで亡くなる率を1倍とした場合、糖尿病予備軍の方は1.5倍、糖尿病の方では2.2倍も罹患しやすい」という結果になりました。
 
また、糖尿病の罹患期間が長い方、より重度の方のがん死亡率が高いという結果が得られています。
 
さらに、胃がんの危険度を調べた研究では、HbA1cが6.0〜6.9%で2.0、7.0以上では2.5となっています。
 
別の研究として、日本糖尿病学会と日本癌学会の報告によると、男性15万人、女性18万人を10年間追跡した疫学調査では「糖尿病の人は糖尿病でない人に比べて1.2倍がんになりやすく、大腸がんでは1.4倍、すい臓がんでは1.85倍、肝臓がんでは1.97倍」とそれぞれのがんで高い罹患率となっています。
 

   

糖尿病に特有の合併症のまとめ

 

糖尿病の合併症は、急性合併症と慢性合併症に分ける

 

●急性合併症は、「糖尿病性昏睡」と「急性感染症」があり、治療が進歩している今日では、発症した後の経過は改善されています。

 

●慢性合併症は、「血管障害合併症」と「その他の合併症」に分けられますが、通常は糖尿病の合併症は慢性合併症を指し長期に渡る高血糖状態により毛細血管が詰まり引き起こされます。

 

この状態を細小血管障害と言われ、そこから生じる障害に網膜症、腎症、神経障害があり、ご紹介した糖尿病性三大合併症です。

 

毎年約4000人が糖尿病性網膜症により失明

 

「糖尿病性網膜症」は、網膜の血管から出血し、進行すると網膜剥離や血管新生緑内障がおこり、視力障害を来たします。

 

さらにひどければ失明の危険もありますので、定期的に眼科の検査を受けておく必要があります。

 

日本では毎年約4000人が糖尿病性網膜症により失明しています。

 

毎年約6000人が新たに人口透析治療が必要に

 

「糖尿病性腎症」は腎臓の障害から起こります。

 

腎臓は体内の老廃物や毒素を濾過して体外へ排出する器官です。

 

腎臓に障害を生ずると体内の老廃物が排出されない為、蓄積し、進行すれば尿毒症となります。人工透析が必要となってきます。

 

日本では、毎年約6000人が新たに糖尿病性腎症になり透析治療が必要になっています。

 

悪化すると組織が破壊され壊疽(えそ)

 

「糖尿病性神経障害」は、症状として両手足が痺れたり、両足の感覚が鈍くなったり、異常な知覚や痛みを感じたりすることから始まります。

 

悪化してくると歩行が困難になることがあります。

 

傷が有っても気付かずに組織が壊され壊疽となることがあります。

 

進行すると様々な症状や病気を引き起こす

 

更に糖尿病は一度発症すると、回復の悪い事が特徴で、歯周病や脈拍の異常、白内障、膀胱炎、胆のう炎、肺炎、気管支炎、こむらがえりや筋萎縮、インポテンツ、下痢や便秘などの症状があり体全体に及んでいきます。

 

この糖尿病性神経症は最も頻度が高く、早期に発症します。

 

糖尿病患者の60%以上の方にみられます。

 

糖尿病の合併症は命に関わる病気の原因となる為恐れられています。ですから早期に発見する努力が必要で、定期検診や血糖値チェックをこまめに行うべきです。

 

<政府の食事バランスの指針>

⇒食事のバランスガイド(農林水産省)

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