脳内にアミロイドβを増やさない運動・食事・睡眠法
「厚生労働省」
厚生労働省の推計では、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加するとされます。
主な認知症には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。
この中でアルツハイマー型認知症は、認知症全体の約6割を占めています。
アルツハイマー型認知症の特徴の1つとして脳内にアミロイドβと呼ばれるアミノ酸40個前後からなるたんぱく質の老廃物(ゴミ)がつくられます。
このアミロイドβから糖化物質が大量に検出されますが、このアミロイドβがアルツハイマー型認知症の原因になっている物質です。
アルツハイマー型認知症では、記憶を司っている海馬が委縮することがわかっています。
アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβの蓄積の始まりは早く、発症の約25年前からという例も報告されています。
アミロイドβが脳の神経細胞の働きを阻害するため様々な病的な変化が起こります。
本来は、アミロイドβは代謝されて排泄される物質ですが、睡眠不足や不規則な生活習慣などが原因となって脳内に大量に蓄積してアルツハイマー型認知症を引き起こすことが分かっています。
これまでは、アルツハイマー型認知症には予防法はないといわれてきましたが、米国の最新研究で予防ができることが分かってきました。
そのポイントが、1に睡眠、2に食事、3に運動です。
つまり、アミロイドβを脳内に蓄積させないために、一番大切なのが睡眠で、次に毎日のバランスの良い食事を良く噛んで食べること、そして適度な運動も大切です。
今日から下記の事に留意してアルツハイマー型認知症を予防しましょう。
良質で適度な睡眠でアミロイドβが排出される
人は起きている時は常に物事を考えていますが、この時にアミロイドβが蓄積されます。
このアミロイドβが脳内に発生する量は、アルツハイマー型認知症患者もそうでない人も同じで、排泄量が低下することでアルツハイマー型認知症にすすむことが解明されています。
蓄積されたアミロイドβを排泄して減らすことができないと、脳の神経細胞を死滅させて脳が委縮します。脳の萎縮が進めばアルツハイマー型認知症に進みます。
このアミロイドβの排泄に一番関係しているのが、良質な睡眠であることが分かりました。
寝不足では脳内にアミロイドβが蓄積することが分かったのです。
マウスを用いた実験で普通に飼育したマウスと眠りを阻害する注射をしたマウスを比較したところ、眠っていないマウスは脳内にアミロイドβが大量に蓄積する結果が得られています。
睡眠不足が習慣化するとアルツハイマー型認知症のリスクが高まるのです。
実験では、眠らなかった期間の3倍から4倍の期間しっかりと睡眠をとれば、蓄積したアミロイドβは正常範囲に戻ったそうです。
一晩の徹夜でもアミロイドβが増える
人を対象にした睡眠の実験も行われています。
26人の40歳から60歳を対象にして、1グループ「睡眠組」、2グループ「徹夜組」に分けて翌朝に脳内のアミロイドβの量を調べたところ、1グループの「睡眠組」は睡眠前より明らかに減少し、2グループの「徹夜組」はアミロイドβが前日より増加した結果が一晩で得られています。
更に睡眠の質も大切なことが分かりました。145人を対象に睡眠中をセンサーで調査したところ、「寝返りなどの動きが少なく安静に熟睡していた人ほど脳内アミロイドβが少ないことが解明されています。
6時間から8時間の良質な睡眠が大切
アミロイドβのクリーニングは昼間でも行われていますが、本格的なクリーニングは夜寝ている時間です。
脳を高速道路に例えると、昼間は渋滞してアミロイドβの排泄がスムーズに流れませんが、夜は渋滞も解消されてスムーズに排泄されることが分かっています。
アミロイドβのクリーニングは野球場や競技場などのスタジアムに例えらます。観客が沢山いる観客席は試合中は観客がひしめいてお掃除ができませんが、試合が終わり観客がいなくなればキレイにお掃除ができます。
3万人を対象に3年間にわたって睡眠時間とアミロイドβの量を検査した調査では、睡眠時間が6時間から8時間の人がアミロイドβの量が少ないという結果がでています。
更に30分程度の昼寝をしている人はアルツハイマー型認知症の発症リスクが1/5に抑えられることも分かっています。
規則正しく熟睡した良質な睡眠が脳内のアミロイドβを排泄してくれるポイントとなります。
適度な運動でアミロイドβが減少する
軽い運動で脳を活性化することで認知症を予防することができます。
運動することで脳内のアミロイドβが減少することがわかっています。これは運動によって脳内に「血管新生因子」と呼ばれる物質が増加して血流が改善するかにだと考えられています。
また、運動によって分泌される生理活性物質「アセチルコリン」は脳の海馬で神経細胞の新生が促進されることがわかっています。
海馬は、新しい記憶が作られる部位で神経細胞が増えると記憶力の改善が期待できます。
筑波大運動生理学や福岡大学運動生理学の認知症研究では、早歩きウォーキングや軽いジョギングなどを週2回習慣的に行うことで認知症の予防効果が3倍高まると報告しています。
糖尿病、動脈硬化、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、アルツハイマー型認知症の発症リスク疾患です。
これらの疾病を予防改善することがアルツハイマー型認知症の予防に繋がります。
これらの疾患を招く要因になっているのが糖化です。
体内のタンパク質や脂質は、血液中に余分な糖分と結合して、糖化の原因になります。
糖化を防ぎアミロイドβを増やさないことが大切
アミロイドβは、40歳くらいから脳へ沈着するといわれています。高血圧や高血糖などの代謝異常が生活習慣病を招き、脳や心臓などの各臓器を侵し始めるのも40歳くらいからです。
糖尿病は、アルツハイマー型認知症のリスクを2倍に上げるといわれています。高血糖になると抑えるためにインスリンが分泌されますが、役割を終えたインスリンを分解する「インスリン分解酵素」は、脳内のアミロイドβを分解して排泄する働きがあります。
糖尿病の人では、インスリン分解酵素は増えたインスリンの分解に忙しく、脳内のアミロイドβの分解に回らなくなり、糖尿病患者では脳内にアミロイドβが蓄積してアルツハイマー型認知症のリスクが高まるのです。
そして、日本の認知症患者数は高齢化に伴って急増しています。
東京五輪後の2025年には認知症患者が700万人になると推計されています。
急増している一つの原因に食事の欧米化の普及があげられています。
60歳を超えると、若いときよりも良質なたんぱく質が不可欠ですので、肉類の摂取も大切です。
しかし、高脂肪、高たんぱくにかたよった食事は様々な生活習慣病を引き起こす原因になります。
食事法「マインド食」のご紹介
米国で行われた1000人を対象にしたアンケート調査では、食品144品目を追跡したところ、日ごろの食べ物でアルツハイマー型認知症の発症に差がありました。
発症が低かった人では、緑黄色野菜やブルーベリー、アーモンドなどのナッツなどを習慣的に食べていたそうですが、発症が53%も低かったそうです。
この食事法は「マインド食」と呼ばれています。
逆に発症が高かった人では、お菓子やバター、ファストフードなどの食べ物が多くみられたそうです。
日本に伝統的に伝わる和食もバランスよく摂取するように心がけましょう。
アミロイドβを増やさない和食
毎回の食事の時に野菜から先に食べる習慣を身に付けましょう
野菜を食べたあとに主食のご飯やパン、メインディシュを食べるようにしましょう。
日本に古くから伝わる伝統的な和食は大豆から造られる味噌や醤油、納豆などの発酵食品がありますが、これらの食品には脳を活性化させる栄養素が豊富に含まれています。
大豆に含まれるレシチンやビタミンK、青魚の摂取
大豆食品である納豆にはレシチンやビタミンKを多く含んでいます。
これらの栄養素は、脳を活性化させて脳の老化を防ぐ効果があります。
特にレシチンは、細胞壁や脳、神経組織を構成する成分で脳内神経伝達物質の生成にも大きな働きがありますので、人には欠かせない成分です。
納豆は、アルツハイマー型認知症の予防に効果があります。
また、大豆食品は腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える作用がある事がわかっています。
日本は島国で昔から魚料理を食してきましたが、特に青魚といわれるサバやマグロに含まれるDHAとEPAは脳の活動を支える栄養素として広く知られています。
日常的にウコンを摂りましょう
インド人はアルツハイマー型認知症の発症率が低く米国人の4分の1という調査結果があります。
発症率が低い要因として、カレーのスパイスのウコンに含まれるクルクミンが認知症の予防効果を果たしていることを京大発ベンチャー、ファルマエイトが突き止めています。
スーパーなどで販売されているカレー粉にはウコンの含有量が少ないので、ウコンを購入しておき、カレーのみならず、料理の調味料として使いましょう。
テーブルソルトならぬテーブルウコンとして使用すれば、認知症の予防に効果が得られます。
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