老人性認知症の予防進行対策


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レビー小体型認知症とは 

 

認知症 症状 
 
認知症を大きく分類すると「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」などがあります。
 
 
アルツハイマー型認知症
この中でももアルツハイマー型認知症の患者が一番多く、最初の症例報告を行ったドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー氏の名前に由来しています。
 
 
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は認知症全体の約20%といわれていますが、レビー小体型認知症は横浜市立大学名誉教授で精神科医の小阪憲司氏が発見しました。
 
 
血管認知症性 
脳血管性認知症は、脳梗塞、脳出血など脳の血管に異常が起きた結果による認知症で障害された部位によって症状は異なります。
 
脳血管性認知症、アルツハイマー認知症、レビー小体型認知症はそれぞれ症状が全く違うので診断には慎重さが求められます。
 

レビー小体型認知症の特徴


 
例えば、アルツハイマー認知症では物忘れが特徴で、側頭部に近い記憶に関連する海馬に障害が現れますが、レビー小体型認知症の初期は海馬が正常に保たれています。
 
レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれるたんぱく質のかたまりが脳の一番外側の大脳皮質にたまって神経細胞が変質し、死滅する疾患です。
 
レビー小体は、大きさが30〜50ミクロン程度の円盤状の異常なたんぱく質のかたまりで目では確認することが出来ないくらい小さなものです。
 
レビー小体は、大脳皮質以外にも脊髄や末梢神経など様々な部位に生じます。
 
このレビー小体が大脳皮質に生じると認知機能が低下して、幻視や妄想などの症状が起こります。
 
レビー小体が大脳皮質と同時に脳幹にも生じるとパーキンソン病を併発している患者もいます。

 

専門医でもレビー小体型認知症を見逃しやすい

 
認知症 レビー小体型認知症の幻視
 
 
レビー小体は、認知機能を司る中脳や大脳皮質にたまった異常な構造物でレビー小体型認知症の患者さんの脳に広く見られることから命名されました。
 
レビー小体型認知症は、うつ病やパーキンソン病を伴うケースが多いため診断を間違ってしまうケースが多いようです。
 
うつ病の薬はレビー小体型認知症を悪化させることが報告されていますので注意が必要です。
 

レビー小体型認知症の症状

 
レビー小体型認知症の代表的な症状は、存在しない動物や人が見える「幻視」ですが、発症する前の前ぶれ症状として二つの症状が注目されています。
 
その一つが、夜寝ている時に大声を出したり、手足をバタバタしたり、動き回ったりする「レム睡眠行動障害」で本人には自覚症状がありません。
 
もう一つが「自律神経障害」といわれるもので、立ちくらみや失神でいきなり倒れてしまうケースがあり、頑固な便秘なども伴います。
 

幻視

この病気の大きな特徴として幻視が確認されます。
 
例えば、「ティッシュの中に子供が見える」「トイレや風呂に人がいる」「カーテンが落ちてくる」などの幻視が現れます。
 
幻視により物を投げることもあります。
 
レビー小体型認知症の初期はアルツハイマー認知症と比較して記憶力が良い傾向があります。
 
この幻視はレビー小体型認知症の約8割の方にあらわれます。
 

 

「ぼんやり」と「はっきり」を繰り返す

「ぼんやり」しているときと「はっきり」しているときを交互に繰り返します。その間隔は患者によって異なります。
 

うつ症状

声に張りがなくなり、無表情、目が小さくなる、やる気がないなどのうつ症状が現れます。

 

パーキンソン病

脳幹にレビー小体が生ずると脳幹の中心部にある黒質と呼ばれる神経細胞が死滅します。
 

 

黒質で生成される神経伝達物質のドーパミンが減少するため手の震えや歩行障害が起こります。
 
歩幅が狭くなり「ちょこちょこ」歩くようになります。
 
30代〜40代の若い人の脳幹にレビー小体が蓄積すると筋肉がこわばりなどのパーキンソン症状がからはじまります。

 

睡眠障害

寝言が多く、大声を発するなど、これらが20年から30年前から始まるケースもあります。
 
レム睡眠時に叫んだり、暴れたりします。また、言動を思い出せる点が「せん妄」と異なります。
 
 

生活状況

便秘になると幻視や精神的に不安定になる傾向があります。幻視が原因で物を投げたりします。
 
また、時間差で「しっかり」している時と「朦朧(もうろう)」としている時とがみられます。
 
大声で寝言を発したり、うめき声、夢を見て涙を流したり、眠りの浅いレム睡眠状態が続きます。

 

 

身体症状

認知機能の低下よりも先に手足のこわばりや手が震えるなどのパーキンソン病の症状が先にあらわれます。
 
進行すると記憶障害や判断力の低下が顕著になってきます。
 
レビー小体が末梢神経に及ぶと疲れ、だるい、頻尿、便秘、多汗などの様々な症状があらわれます。
 
また、抑うつ症状が強くなり、やる気が起こらないなどの症状が起こります。
 
 

   

レビー小体型認知症の診断

 
手足の震えや歩行のぎこちなさ、転倒などのパーキンソン病の症状は、脳血管障害や心理的な要因、その他の脳の疾患でも起こるため、病院での検査が必要になります。
 
専門医で検査をしないと誤診をしてしまう可能性もあります。
 
レビー小体型認知症では、自律神経の交感神経の働きが低下するため、特に心筋の交感神経に異変が起こって「MIGB心筋シンチグラフィ画像」にうつらなくなります。
 
アルツハイマー型認知症にはない神経の損傷が画像で診断できます。
 
レビー小体型認知症の患者の90%に心筋の交感神経に異常がみられるため他の認知症との区別が可能です。

 

  

医師の問診

 
・日常生活の様子
 
・パーキンソン病がないか
 
・立位時の血圧が低くなり立ちくらみの傾向(横位、立位の血圧を比較)
 
・家族の話を聞く(幻視や寝言)
 

臨床心理士によるテスト

 

・心理テスト(初期では記憶力がしっかりしている)
 
・視覚テスト(図をうまく書けない、図形が崩れ視覚認知の障害の確認)

 

画像検査

 

脳の血流を画像にして可視できるSPECT(スペクト)検査により、視覚後頭葉や頭頂葉の血流が悪く滞っている。
 
また、レビー小体型認知症では心臓の交感神経の機能に障害が生じているので、「MIGB心筋シンチグラフィ」による画像検査では心臓が画像に映りませんが、アルツハイマー認知症では心臓は画像に映ります。
 

 

レビー小体型認知症の介護の注意点

 

レビー小体型認知症の介護の注意点 
 
大切な事は、家族も本人も早期にレビー小体型認知症であることに気づくことです。
 
特に幻視は、原因が分からなければ不安が増幅して悪循環に陥ります。
 
本人に幻視であることを伝えたほうが良いようです。病気が原因であることを理解出来る傾向があります。
 
病気が原因であることが分かれば、本人も安心するのと同時に家族も幻視であることを伝えることが出来ます。
 

幻視を生む環境を変える

 

・部屋をシンプルにする
 
・部屋を明るくする
 
また、幻視が生じた時に「おまじない」を準備しておき、例えば「息を吹きかける」などで消えることもあります。

 

パーキンソン症状に対応

 
・転倒しにくい環境
 
・スリッパではなく靴を履いてもらう
 
認知だけでなく、便秘やうつ症状などにより、薬が多くなって薬過敏症により悪化することがあります。
 
また、前頭葉の機能不全により「盗難被害」「偶者の浮気」などの被害妄想の症状や辺緑系機能不全による「誤認」が全体の四分の一程度の患者に見られます。

 

レビー小体型認知症が改善したケース

 
レビー小体型認知症は、患者の立場になって話を聞き、寄り添ってあげることが重要です。
 
症状の幻視にしても、本人は恐怖に襲われている精神状態です。
 
理解してもらえないことで、キレたり大声を出したり、罵倒したりすることがあります。
 
積極的に話しかけて、会話の中から悩みを聞き出して解決策を見出していきましょう。
 

部屋を明るくシンプルに

 
・幻視の原因になりそうな物を片付けて、部屋を明るくデザインをシンプルにする。
 
・柄物を避ける
 
・花柄のタオルが人の顔に見えることもあるので白い無地のタオルへ変える。
 

家事などを手伝ってもらう

 

部屋にこもらせないで、趣味や得意の家事を手伝ってもらう。
 

靴に変える

 

転倒し易いスリッパではなく、つまずきにくい靴の先端が上向きカーブしている靴をはいてもらう。

 

外出を増やす

 

会話を増やす

 

 

レビー小体型認知症の治療

 
認知症の薬による治療 
 
レビー小体型認知症を完治させる薬は開発されていません。
 
治療は、認知症の進行を遅らせて、症状を抑えることで本人や家族の負担を軽減する薬物療法が中心となります。
 
レビー小体型認知症では、幻視の症状があることから、精神疾患と誤診されて抗精神薬を処方されて症状が悪化することがあります。
 
誤診のまま、処方薬が増えると更に悪化する可能性がありますので、セカンドオピニオンも視野に入れておくべきです。
 
早期発見が鍵となります。早く対応すれば症状の進行を抑えることができます。
 
治療には大きく分けて次の3種類があります。
 

 

●認知機能の低下を抑える薬
(コリンエステラーゼ阻害剤)
 
レビー小体型認知症では、大脳皮質のアセチルコリンの濃度が低下するため、コリンエステラーゼ阻害剤が処方されます。
 
コリンエステラーゼ阻害剤には、「ドネペジル」「ガランタミン」「リバスチグミン」の3種類がありますが、この中で「ドネペジル」は健康保険の適用になっています。
 
これらの薬に効果がみられない場合は、漢方薬、抗精神病薬などが処方されます。

 

 

●幻視や幻覚を抑える薬
(抑肝散・非定型抗精神病薬)

 

レビー小体型認知症の周辺症状には漢方薬の抑肝散が有効とされています。
 
非定型抗精神病薬のが用いられることもありますが、意識変動や運動障害などの副作用を起こす可能性がありますので専門医と相談の上、処方されます。
 

 

●抗パーキンソン薬

 

パーキンソン薬は、神経伝達物質のドーパミンを補う作用があります。
 
幻覚などの周辺症状を引き起こす副作用がありますので、使用量には注意が必要です。


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