健康診断 腎機能検査 尿
腎臓は、糸球体で血液をろ過して尿中へ老廃物を排泄します。
腎臓は、体内を清浄に保つための臓器です。
腎臓の機能は「老廃物を濾過する力」で評価さますが、尿を通して体外に排泄された成分を測定することは簡単でないために、さまざまな評価方法を用います。
通常、尿中に排泄される成分には、たんぱく・核酸代謝の終末産物、尿素、尿酸、クレアチニン、アンモニア、アミノ酸などの中間代謝産物、有機・無機塩類などあります。
しかし、本来は尿から排泄されないはずの、たんぱくや糖、ケトン体、赤血球、白血球、細菌などが尿中に排泄された場合、腎臓、尿路系の疾患、心臓、肝臓、内分泌などの異常を推測することになります。
尿検査は、様々な代謝や腎機能などの異常の有無を簡単に把握できるスクリーニング検査として、広く活用されています。
尿検査は、被検者に負担がかからず、簡便ですが、採尿、検体処理、保存が不適切な場合に、誤った結果を提供されることがあります。
1日の尿量
健常者の1日の尿量は、外気の温度や汗の量に影響されます。おおよそ次の尿量の範囲です。
男性 1,000〜1,500ml
女性 800〜1,200ml
1日の尿量が100ml以下
1日の尿量が、100ml以下の場合は、無尿といわれ、尿路閉塞や重篤な腎実質障害が疑われます。
1日の尿量が400ml以下
1日の尿量が400ml以下の場合は、乏尿といわれ、生理的、病的原因によっても起こる為、鑑別検査による原因究明が求められます。
1日の尿量が400〜800mlの場合は、軽度減少といわれ、脱水症などの時に観察されます。
また、1日の尿量が2,000ml以上では多尿といわれ、多飲の他に、腎疾患や糖尿病の疑いがあります。
尿検査
血液によって腎臓に運ばれる老廃物は、余分な水分といっしょに尿中に排泄されます。
これらを尿により排泄することで血液や体液の成分を一定に保っています。
腎臓や他の器官に異常があると、尿中の成分や性質、量などに影響が出るため、尿検査が行われます。
健康診断での尿検査では、出始めの尿には出口付近に付着した細菌やたんぱく質が混入しやすいため、採尿の際には少し出た後の中間尿を採取しましょう。
検査前に多量の水分を摂取しないように注意しましょう。尿が薄まることで尿たんぱくなどが検出されにくくなります。多量のビタミンCを摂取すると尿潜血反応が出ないこともあります。
服用中の薬があれば、申してでください。月経中では尿潜血が陽性になるので避けましょう。
採尿法
早朝第一尿
早朝第一尿とは、早朝起床直後、最初に摂った尿で、尿が濃縮されて、化学成分や沈殿成分が多く含まれ、日常活動の影響も少なく、体を動かすことで生じる起立性たんぱく尿(生理的たんぱく尿)も除外されるため、検査には最も適しており、子どもの集団検尿で用いられています。
随時尿
随時尿とは、早朝第一尿以外の任意の時間に採尿される尿のことで、外来や職場検診で用いられています。正常では排泄されない成分の観察が主眼に置かれています。
食事や服薬などの生活習慣の影響が反映されます。
24時間蓄尿
24時間蓄尿は、24時間分の尿を貯めたもので、時間や食事などに影響を受ける電解質、たんぱく、ホルモンなどの尿中に排泄される成分を正確に調べる時に用いられます。
尿定性試験
尿定性試験は、検査項目は「尿pH、尿たんぱく、尿ケトン体、尿比重、尿エステラーゼ、尿潜血反応、尿沈査、尿亜硝酸塩、尿ウロビリノーゲン定性、尿ビリルビン、尿量、尿糖」などの12項目があります。
試薬を含んだ試験紙に浸漬後、速やかに引き上げて、水平に維持し、対照色調表を使い、定められた時間後に判定します。
尿pH
尿pHは、専用の試験紙を尿に浸して、酸性かアルカリ性かを色の変化から判定する検査です。
血液は、pH7.35〜7.45の範囲で維持されますが、尿は食べ物や生活習慣などに影響されて、pH4.5〜8.3の広い範囲で推移します。
健常者の尿は、弱酸性のpH6.0前後です。
肉類などの高脂肪、高タンパクの食事は、尿が酸性に傾き、野菜などの植物性の食事ではアルカリ性に傾きます。激しい運動後では、体内で発生した乳酸の影響により尿は酸性に傾きます。
尿が酸性に傾くと尿路結石ができやすくなります。
また、糖尿病ケトアシドーシスや脱水症などでは酸性になり、尿路感染症や腎不全ではアルカリ性に傾きます。
尿たんぱく
尿たんぱくは、尿中のタンパク質量を検査します。
健常者でも、わずかにたんぱくが排泄されていますが、微量では検査で陰性となります。
排泄頻度の高いたんぱくは、アルブミンです。
腎臓に何らかの障害がおきると、たんぱくを濾過、吸収する能力が低下するため、尿たんぱくが陽性になります。
また、腎臓に障害がなくても、低分子たんぱくが増加すると、再吸収が追いつかなくなり、尿中に排泄されるたんぱくが多くなります。
尿ケトン体
ケトン体は、エネルギー源としてブドウ糖の代わりに脂肪が分解された時に産生される老廃物であり、骨格筋、脳、臓器のエネルギー源や脂肪の再合成に活用されます。
正常では、尿中で検出されることありません。
しかし、糖尿病などの糖代謝異常によって、脂肪代謝が高まった時や飢餓で脂肪の分解が増加した時に、ケトン体が尿中に増えます。
尿ケトン体が、継続的に陽性の場合、糖尿病性ケトアシドーシスが疑われます。
尿比重
尿比重の基準値 1.013〜1.025の範囲
尿比重は、尿中の水分と、水分以外の物質の割合を算出したものです。
尿中には、体内活動の結果として、ナトリウム、クローム、カリウム、カルシウムなどの老廃物が含まれています。
健常者の場合、飲水制限時では、高比重尿が少量、多飲時には、低比重尿が多量に排泄されます。
尿比重が基準値を外れている場合は尿の濃度を調節する腎臓の働きの異常が考えられます。
尿エステラーゼ(尿中白血球)
体内に炎症が起こると白血球が増加する性質を利用して尿中に含まれる白血球を調べます。尿路の感染症や炎症で白血球の一種である好中球が増えると陽性になります。
尿潜血反応
尿潜血反応検査では、血液に存在する赤血球中のヘモグロビンの尿中の有無を調べる検査です。
腎・尿路系の炎症や損傷、また他の疾患による出血で、その血液が尿中に排泄され尿潜血検査は陽性を示します。
血尿とは、医学的には「尿に赤血球が混入している」ことで、尿が赤くなることだと思っている人が多いのですが、「血尿」と「尿が赤い」は別のことです。
尿を顕微鏡で400倍に拡大した1視野あたり5個又は6個以上の赤血球が確認された場合に血尿と定義されています。
赤血球の成分に反応する試験紙で調べるのが尿潜血反応検査です。
尚、赤血球の成分である赤い色素のヘモグロビン、筋肉の疾患で筋肉中にあるヘモグロビンに似たタンパク質のミオグロビンが排泄された場合でも尿潜血検査は陽性を示しますので、尿潜血反応で陽性の場合は、その鑑別が必要になります。
尿沈渣
尿沈渣は、健康診断などで尿検査や血液検査による腎臓機能検査で「要精密検査」の判定があった場合、更に詳しく腎臓の機能を調べるために行われます。
尿沈渣は、新鮮尿10mlを1500回転、5分間の遠心分離器にかけ、沈殿してくる赤血球や白血球、細胞、細菌、結晶、ゲル化したタンパク質などの固形成分のことをいいます。
これらの沈殿物の1滴をスライドに滴下して、100から400倍の顕微鏡で観察し、尿沈渣の数の増加や有無を調べて、腎臓などの異常の診断や病状の経過観察を行います。
この検査は、尿タンパクや尿糖、尿潜血などの定性検査で陽性の時に行なわれます。
尿亜硝酸塩
尿から亜硝酸塩が検出された場合は尿に細菌が入っていることがわかります。膀胱炎や腎盂などの尿路感染症が疑われます。
尿ウロビリノーゲン
ウロビリノーゲンは、胆汁が腸内に流入することで胆汁に含まれているビリルビンが腸内細菌によって変化した物質です。
健康な人でも尿中にウロビリノーゲンが排泄されますが、肝臓や胆道の異常や赤血球が壊れる溶血になると血中のビリルビンが増加することで、尿中のウロビリノーゲンも増加します。
尿中にウロビリノーゲンが増えると黄疸の症状が起こります。
黄疸が現れる前にウロビリノーゲンが陽性となる場合、ウロビリノーゲンが陰性でも胆石や胆道の腫瘍による閉塞性黄疸などの可能性があります。
尿ビリルビン
肝臓や胆道の疾患で起こる黄疸は血中のビリルビンが増加することで起こります。外見で見て分かる黄疸になる前から、尿中に排泄されるビリルビンが増えることがわかっています。
クレアチニン検査
血液中のクレアチニンの量を調べる検査です。
クレアチニンは、筋肉や神経内でクレアチンリン酸から直接的に生成されるものと、またクレアチンの脱水によって生成される最終代謝産物で、血液中に存在します。
クレアチニンは腎臓の糸球体でろ過され、ほとんど再吸収されずに尿中に排泄されます。
尿中のクレアチニンの排泄量は、筋肉に含まれるクレアチニンの量に比例するため、成人では、体重当たりほぼ一定で、食事や腎臓以外の影響はほとんど受けません。
クレアチニンの生成量は、筋肉量の多い男性の方が女性よりも高く、筋肉が少ない高齢者ではクレアチニンの生成量も減少します。
腎臓機能の糸球体での濾過能力が低下すると血液中のクレアチニン量が上昇します。クレアチニンは、尿素窒素とともに腎機能検査として用いられます。
血清クレアチニン濃度は、腎糸球体濾過率と密接な関連があるため、腎機能障害の指標として用いられます。
尿糖
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