健康診断 脂質検査 「LDLコレステロール」
LDLコレステロール(low-density lipoprotein cholesterol)
LDLコレステロールの基準値 「60〜119mg/dl」
(日本人間ドック学会の基準値)
LDLコレステロールは、コレステロールを肝臓から全身の細胞に運ぶ役割を担っていますので、血中のLDLコレステロールが多くなりすぎると血管壁にコレステロールが蓄積して動脈硬化を促進させるため「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
一方で、HDLコレステロールは末端の血管壁や細胞のコレステロールを運び戻す働きをして動脈硬化を防ぐ働きがあるので「善玉コレステロール」と呼ばれています。
LDLコレステロールは、カイロミクロンや超低比重リポタンパク (VLDL)がリポたんぱくリパーゼ及び肝性トリアシルグリセロールリパーゼの作用を受けることで、生成されます。
例え、総コレステロールが高い数値でも、HDLコレステロールの数値が高ければ、好ましいといわれています。
LDLコレステロールが高くなる原因
1.食べ過ぎ
活動エネルギー以上に食べた分は、余分なエネルギーとして、体内でLDLコレステロールの値が上がる原因になります。
2.肥満の人
肥満の人は中性脂肪が高く、インスリンの働きが低下するため、更に中性脂肪が高くなります。その結果、LDLコレステロールの値も上昇する悪循環に陥ります。
皮下脂肪型の肥満に比べて、内蔵脂肪型の肥満のほうが、LDLコレステロールの値が高くなる傾向にあります。
3.お酒の飲み過ぎ、タバコ
お酒の飲みすぎは、HDLコレステロールが減少し、LDLコレステロール値が高くなる原因になります。
また、タバコは百害あって一利なしと言われますが、タバコに含まれるニコチンは、中性脂肪とLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減少させます。
4.ストレス
強いストレスがかかると、交感神経が優位に働くため、副腎皮質ホルモンの分泌が増加し、血中の遊離脂肪酸も増加するため、最終的に血中のLDLコレステロールが高くなります。
更に、この副腎皮質ホルモンは、血管を収縮させて血圧を上昇させ、血液を固まり易くする作用もあり、血栓をつくりやすいといわれています。
LDLコレステロール値を改善には食事を見直す
1.食事の量を減らす
食べ過ぎは、肝臓でのコレステロールの合成を促進します。肥満気味の人は、食事の量を減らすことで、体重を減らして、肥満が解消れれば、LDLコレステロールは低下します。
2.食事の脂質を減らす
動物性の脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを上昇させます。植物油や魚油に多く含まれる不飽和脂肪酸には、LDLコレステロールを低下させます。
植物油に含まれる脂肪酸でも、リノール酸は多く摂りすぎるとLDLコレステロールを低下させるものの、HDLコレステロールも低下させてしまいます。
ナッツ類、豚肉、鶏肉に多く含まれる、オレイン酸は不飽和脂肪酸でLDLコレステロールを下げないで、LDLコレステロールを下げる作用があります。
また、魚油に含まれるEPAやDHAには、血小板の凝集を抑える作用があり、血栓を予防する効果が期待できます。
LDLコレステロールを低下させる植物油や魚油でも、食べすぎは、エネルギー過多になり肥満などの原因になりますので、脂肪の摂取量を控えめにすることが大切です。
3.コレステロールの多い食べ物を制限する
LDLコレステロール値が高い方は、レバー、いくら、かずのこ、たらこ、うに、鶏卵などのコレステロールが多く含まれた食品の食べ過ぎはLDLコレステロール値を上昇させますので、注意が必要です。
4.食物繊維の摂取
海藻類、キノコなどに多く含まれている水溶性食物繊維には、LDLコレステロールを下げる働きがあります。
また、ゴボウやにんじんなどの野菜に多い不溶性食物繊維は、満腹感が得られるため、食べすぎを防ぐことができます。
5.植物性たんぱくの摂取
大豆には、LDLコレステロールを下げる作用があります。納豆や豆腐などの大豆製品を食べましょう。
6.抗酸化成分の摂取
LDLコレステロールは、体内の活性酸素の作用によって酸化され、変性LDLコレステロールになります。
変性LDLコレステロールは、血管壁に付着して蓄積します。体内の活性酸素を減らすため抗酸化作用のある食べ物の摂取に心掛けましょう。
抗酸化作用のある次の栄養素を含んでいる食品を食べましょう。
「ビタミンC、ビタミンE、β−カロテン、ポリフェノール、カテキン、リコピン、セサミロール」
血管の状態を示す指標が二種類あります。
1.動脈硬化指数(arteriosclerotic index)と呼ばれる指標
動脈硬化指数(AI) = (総コレステロール − HDL-C) ÷ HDL-C
動脈硬化指数(AI)の値が「3.0未満」 ⇒ 正常
動脈硬化指数(AI)の値が「3.0以上5.0未満」 ⇒ 動脈硬化リスクが高く要注意
動脈硬化指数(AI)の値が「5.0以上」 ⇒ 動脈硬化のリスクが非常に高く危険
2.LH比と呼ばれる指標
LH比 = LDLコレステロール値 ÷ HDLコレステロール値
LH比が「1.5以下」の場合 ⇒ 良好な状態
LH比が「2.0以上」の場合 ⇒ 動脈硬化が疑われる
LH比が「2.5以上」の場合 ⇒ 血栓の可能性と心筋梗塞のリスクかある
LDLコレステロールとHDLコレステロールの数値が、共に基準の範囲であっても、LH比が高ければ、動脈硬化や血栓がつくられている可能性があります。
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