筋肉が消失し動作が緩慢「サルコペニア」とロコモ
加齢に伴って急激に筋肉量が減少する症状のことを「サルコペニア」と言います。
ギリシア語でサルコ(sarco)は「筋肉」、ぺニア(penia)は「喪失」を意味しています。
サルコペニアの原因としては、加齢・疾病・運動不足・栄養不良などによって骨格筋量の減少に伴う筋力や歩行機能の低下をいいます。
体は数多くの種類の筋肉で構成されています。
小さい筋肉では目のピントを調節する毛様体筋など大小含めると約650種類もあります。
自分の意思で動く随意筋、心臓や胃腸などの自分では動かすことが出来ない筋肉を不随意筋といいますが、全ての筋肉は神経を介して脳とつながり連動しています。
サルコペニアになると体の動作が鈍くなり、歩くスピードも遅くなるため、横断歩道を青色信号の間に渡りきれず、途中で立ち止まり途方に暮れるといった状況になることもあります。
サルコペニアの診断の基準は、65歳以上の高齢者でしかも秒速0.8m以上で歩けるか否かです。
実は、横断歩道の信号の点灯設計は、秒速1mであれば渡りきれるようにしてありますので、これ以下だとサルコペニアの可能性があります。
また、歩く速さだけではなく、握力や筋量などもサルコペニアと診断対象となります。
その減少速度は、加齢に伴ってどんどん加速し、60歳を過ぎると年間で5%もの筋肉量が減少する例もみられると言います。
欧州基準では状態別に三段階に分類
1段階 プレサルコペニア → 筋肉量のみが低下した状態
2段階 サルコペニア → 筋肉量と筋力または身体能力が低下した状態
3段階 重症サルコペニア → 筋肉量、筋力、身体能力全てが低下した状態
以上のように欧州基準では、3段階に分類しています。米国でも健康リスクのトップ5に入っており予防や対策に高い関心が集まっています。
サルコペニアを改善する食べ物や運動
サルコペニアの予防は十分なタンパク質の摂取が重要です。
高齢者がサルコペニアを起こす原因のひつとして考えられるのが食事です。
50歳を超えたらお米やパンなどの炭水化物を中心とした「糖質エンジン」主体の食事から、適度に肉や魚などの良質なたんぱく質を食べて「ミトコンドリアエンジン」に切り替える必要があります。
糖質の多い食べ物は、代謝できない糖がたんぱく質や脂質と結びついて「糖化」するため老化の促進因子となります。
高齢になると食事量が減少して十分なたんぱく質の摂取が少なくなって、更に吸収も低下します。その結果筋肉量が減少してしまいます。
良質なたんぱく質の摂取が重要
たまごやお肉などの良質なたんぱく質を食べましょう。
お肉やたまごなどの良質なたんぱく質は筋肉などの体の細胞を作るのに必要不可欠なアミノ酸を全て含んでいます。
体に必要なアミノ酸は20種類ありますが、この内9種類は体内で合成出来ないため食べ物から摂取するしかありません。
手軽に食べることができるたまごには全てのアミノ酸がバランスよく含まれています。
卵やお肉をバランス良く食べることで筋肉を強化する材料になります。
野菜も忘れずに摂取しましょう。
筋肉を育てて強化するビタミンDを摂取しよう
筋肉はビタミンD受容体を持っています。
筋肉の受容体にビタミンDが結合すると、筋肉中のタンパク質の合成が促進されて筋肉量が増えることが分かっています。
筋肉を作る過程では運動も欠かせない要素になりますので、毎日ウォーキングなどの運動を取り入れましょう。
ビタミンDを多く含んでいる食べ物としてシイタケやマイタケなどのきのこ類、サンマや鮭、うなぎなどにも多く含まれています。
日光を浴びてビタミンDを合成
日光を浴びることで皮膚からビタミンDを作り出す事ができます。
最近は日光によるお肌の害を意識しすぎて保護し過ぎる傾向があり日照不足がいわれています。
紫外線がさほど強くない午前中に10分程度、週に2から3回、日光を浴びてビタミンDを生成しましょう。
筋肉量をキープするには運動が必要
毎日、ウォーキングの習慣を身につけましょう。運動することが義務感となっては長続きしません。長く続けることが大切ですので、例えば周囲の季節の移り変わりを意識するなどして楽しく続けられるように工夫をしましょう。しっかりと腕を振って上半身の運動も意識しましょう。
ウォーキングのペースは少し息があがる程度を目標にして、きついと感じたらペースを落として呼吸を大きくして酸素を取り入れましょう。
また、サルコペニアを予防にはレジスタンストレーニングも必要です。具体的にはスクワットやダンベル体操などが大変有効です。筋肉に適度な刺激を与えることで筋肉の合成を促し、骨粗鬆症の予防効果も期待できます。
ウォーキングに慣れてきたら、スクワットや腕立て伏せになども取り入れて週に2回、15分程度でも十分な効果が得られます。
駅などではエレベータやエスカレーターをなるべく使わずに階段を上ることでも下半身の運動になります。
毎日、継続することが大切です。運動が苦になると継続が難しくなりますので、ハードルの低い目標を定めて、達成したら自分にご褒美をプレゼントするなど、楽しく続けられるように工夫して下さい。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは
ロコモの語源は、ロコモーションで「運動」や「機関車」の意味があります。
加齢によって筋肉、骨、関節等の運動器の障害によって、日常生活が困難、要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表します。
ロコモが運動器全般の症状を含むのに対し、サルコペニアは筋肉と筋力、歩行機能に問題がある場合を指しています。
サルコペニアが起これば、次にはより広範囲なロコモへ発展する可能性があると言えます。
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