百寿者のことを「センテナリアン」といいます
今から100年以上前の1900年あたりでは、先進国アメリカやスウェーデンなどの国でも平均寿命は50歳程度でした。当時は「老人」になる前に「貧困による飢餓や戦争、不衛生」により死を迎える人が多くいたからといえます。
2016年7月に厚生労働省が発表した日本人の平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05で世界一の長寿国です。
近代医療と近代文明の発展によって、平均寿命が延伸したため加齢の延長線上にある老化がクローズアップされるようになりました。
現在、日本では人のお世話にならないで生きて行ける健康寿命と平均寿命の差が男女ともに10歳前後もあります。
単に長生きをするのではなく認知症や寝たきりにならないで元気にどれだけ長生きできるか、つまり老後の生活の質が重要になっています。
今、世界の科学者が注目しているのが百寿者(センテナリアン)の研究です。
センテナリアンとは、1世紀(センチュリー)の100年を生きている人(生きた人)という意味です。
百寿者の共通点は寝たきりが少なく最後まで元気な人の割合が高いということです。
また、長寿者は「人生で今が一番幸せ」と言う方が多く、身体的な不自由を乗り越える「老年的超越」の域に達していると考えられています。
最新の研究で、百寿者は特殊な人だけではなく、誰でも条件次第で百寿に到達できるのではないかという可能性が浮上してきました。
研究で、80歳で亡くなった方と108歳で亡くなった「ぎんさん」の血管を比較したところ、80歳で亡くなった方の血管は動脈硬化が進行していたが、「ぎんさん」の血管は炎症が全く確認できないきれいな状態だったと報告しています。
老化に伴っておこる慢性炎症が心不全や糖尿病、動脈硬化など加齢により増加する疾患の発症と関連していることが解明されつつあります。
しかし、その機序についてはまだ解明されておらず、慢性炎症による老化関連疾患の新しい治療法の開発が研究されています。
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急性炎症と慢性炎症の違い
血液一般検査に「CRP(C反応性たんぱく質)」の項目がありますが、この数値は体内で炎症が起きると血液中に急増するたんぱく質の一種の量を表わしています。
CRPは体内の炎症の程度や経過を観察するのに有用な検査項目です。
陽性の場合、「感染症」や「膠原病」、「がん」、「心筋梗塞」などが疑われます。
定量は、0.3r/dL以下。
急性炎症
例えば転んで膝に怪我をした時に、擦りむいた皮膚が充血して赤くなり熱をもち痛みを感じます。
これは急性炎症とよばれる状態で血管の拡張や血流の増加がみられ、血管からの血液成分の組織への漏出や白血球の炎症組織への侵入などによって次第に炎症症状が進んでいきます。
炎症反応の進行においては死んだ細胞や白血球が殺菌した後は黄色の膿となってかさぶたになり最後は除去されて皮膚の上皮組織は再生して修復されて治癒します。
このような比較的早期に終息するような炎症を急性炎症といいます。
慢性炎症
慢性炎症は急性炎症と比べて、なかなかおさまらない炎症です。慢性炎症と急性炎症の大きな違いは炎症が組織に与える時間です。
以前までは、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患、関節リウマチなどの自己免疫性疾患は慢性炎症を伴う疾患であることが知られていました。
しかし、最新研究によって、がんや動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などの種々の疾患が慢性炎症によって発生することが解明されてきました。
タバコは慢性炎症を引き起こす原因になります。タバコによって肺に有毒物質が侵入することで免疫システムは体を守るために臨戦態勢を整え攻撃しますが、この結果、慢性気管支炎を起こすことになります。
慢性炎症が老化の進行に影響しているとする研究が次々に報告されています。
老化を促進させる慢性炎症
老化の進行の原因は慢性炎症であり、慢性炎症が起きるメカニズムは自己防衛のために働く自己免疫システムによって引き起こされることが解明されました。
炎症の種類は様々です.
1.体内に侵入した異物を排除しようとして免疫システムが働いて起きる急性炎症。
2.炎症自体が炎症を継続させて体を傷めつけようとする慢性炎症。
3.体内などに存在する常在菌によって発症する慢性炎症。
4.細胞の代謝活動から発生する老廃物の処理や免疫システムによる排除処理の過程で起きる非常に弱い炎症、この炎症は特に「自然炎症」と呼ばれています。
最後の「自然炎症」は、ミトコンドリアによるエネルギーの生成過程で活性酸素が発生することで起きる慢性炎症です。
人が生きていく上で必要不可欠なエネルギー源であり避けては通れない必要不可欠な炎症ということができます。
注意したい点は、人の活動に必要となる以上のエネルギーが生成されるとエネルギー過剰となり余分なエネルギーの生成が自分自身を攻撃することになります。
慢性炎症を抑える食べ物
以上のように体内で発生する炎症は様々ですが、極力炎症を起こさず同時に炎症を抑える生活習慣を身に付けることで健康長寿の道が開けるといえます。
食べ物は、細胞に炎症を起こす活性酸素を抑えるポリフェノールを含んだ食品を習慣化して食べる方法と傷んだ細胞を修復する働きがある亜鉛などの栄養素を摂取する方法があります。
体にはさまざまなホルモンがありますが、その中には慢性炎症に関係してるホルモンもあります。
その一つにエイコサノイドというホルモンがあり、エイコサノイドには血小板を凝集して血液を固めるトロンボキサン、花粉症の症状に関連している炎症を促進させるロイコトリエン、強力に炎症を抑えるリポキシンなどが知られています。
エイコサノイドは炎症の始まりから終わりまでを制御しているホルモンであり、エイコサノイドの炎症を起こす働きをオフにすることが慢性炎症を予防する近道となります。
エイコサノイドの炎症を起こす働きを「オン」にする脂肪酸が、オメガ6脂肪酸(n-6系脂肪酸)と呼ばれる植物油やマーガリン、コーン油、ダイズ油、ベニバナ油、ヒマワリ油などです。
これらの脂肪酸は慢性炎症の原因となりますので、控えましょう。
エイコサノイドの炎症を起こす働きを「オフ」にする脂肪酸、オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)やオメガ9脂肪酸(n-9系脂肪酸)を積極的に摂取しましょう。
オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)を摂取
オメガ3脂肪酸はアマニ油やエゴマ油に多く含まれていすので、積極的に摂取しましょう。
他にもほうれん草やからし菜、レタス、キャベツ、野沢菜にも含まれています。
また、青魚に多く含まれているDHAやEPAもオメガ3脂肪酸であり、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪を減少させ、血液の循環を促進させる働きがあります。
DHAは脳の神経細胞の膜を構成する成分で脳の正常な働きに欠かせない成分で認知症の予防効果も期待されています。
また、DHAは細胞がインスリンに敏感に反応するようになるため、少ないインスリンの量でも細胞がブドウ糖を取り込めるのでインスリンレベルが下がり、すい臓の負担を軽減されます。
オメガ3脂肪酸を多く含んでいる青魚として、マグロの脂身、すじこ、サバ、ブリ、サンマ、ニシン、マイワシ、サケなどがあげられます。
オメガ9脂肪酸(n-9系脂肪酸)を摂取
オリーブオイルの78%がオレイン酸でオメガ9脂肪酸(n-9系脂肪酸)です。
特に地中海食のように魚を中心としてオリーブオイルを使った料理や和食も健康長寿を助ける食材が多く使われています。
オリーブオイルの他にもナッツやアボカドなどに多く含まれています。
ミネラルの亜鉛を摂取
亜鉛は細胞全体に存在しているミネラルでDNAやたんぱく質の合成に関与しています。
細胞分裂にも必要な栄養素であり不足すると免疫機能が低下します。
また、亜鉛は糖の代謝にも必要でインシュリンの合成にも必須です。
更に亜鉛は活性酸素が細胞に与える悪影響を制限する抗酸化作用にも関わっておりビタミンAとともに白血球が細菌を攻撃する働きをサポートします。
亜鉛を多く含んでいる食べ物には「カキ、レバー、ウナギ、たらこ、アーモンド」などがあります。
納豆やヨーグルトなどの発酵食品を摂取
発酵食品やキノコ類に含まれているポリアミンが慢性炎症を抑える作用がある食品として注目されています。
ポリアミンは、細胞の再生に不可欠な成分で加齢とともにポリアミンを合成する酵素が減少することが分かっています。
ポリアミンは納豆や味噌、醤油などの大豆発酵食品に最も多く含まれ、キノコ類のほか、チーズやヨーグルトなどの発酵食品にも多く含まれています。
塩分の過剰な摂取に注意して納豆やお味噌汁などの和食を習慣的に食べれば効率よくポリアミンを補給できます。
活性酸素を除去する食べ物
細胞に発生した活性酸素を抑えたり除去する働きがある食品については「血管を若返らせる食べ物」をご案内している下記のサイトを参考にしてください。
減塩、糖分は少なめに心がける
塩分は血圧を上昇させて血管壁を傷つけて慢性炎症を起こす原因になります。
糖分も血糖値を上昇させて血管壁を傷つける原因になります。
そして塩分、糖分は動脈硬化を進めて心血管疾患や脳卒中の原因となります。
食事は低カロリーに心がける
慢性炎症は肥満と深く関係しています。心臓病や糖尿病などの炎症性の病気は肥満の人に多く、肥満そのものが慢性炎症を悪化させることが分かっています。
必要以上のカロリー摂取で、脂肪細胞が極限に大きくなると新たな脂肪細胞をつくりますので、太った人は脂肪細胞が大きいだけではなく、その数も多くなります。
肥満の人は、炎症にブレーキをかけるホルモンであるアディポネクチンの分泌が少なくなり、脂肪細胞から放出される炎症物質の放出が増加し、抗炎症物質の生産が抑制されることが分かっています。
日本人の2300万人が肥満といわれていますので、慢性炎症に伴う動脈硬化や高血圧、糖尿病などの生活習慣病が増加しているといえます。
飽食の時代といわれて久しくなりますが、戦後食の欧米化へと食べ物の内容が大きく変化したことが、慢性炎症につながっていると考えられています。
生活習慣を見直す
歩いて下半身をトレーニング
下半身は体全体の約7割の筋肉が集まっています。体を動かすことで筋肉が刺激され成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは傷ついた細胞の修復に貢献します。
運動することで、心臓から送り出される血液量が増えて一時的には血圧が上昇しますが、血液が体全体に行き渡ると血管が拡張するため、血圧は低下します。
運動することで血流が改善され、血圧を上昇させる原因の一つである塩分が汗などで排出されますので、血圧が下がり血管の負担を抑制します。
しかし、激しい運動は過剰な活性酸素を生み出して細胞を傷つけ老化を速める原因になりますので、中高年の激しい運動には注意が必要です。
毎日30分程度のウォーキングをおすすめします。30分が長すぎるという方は10分ずつ3回に分けても効果があります。
7時間程度の適度な睡眠
睡眠中に体の細胞の傷害を修復するホルモンが分泌されます。適度睡眠が大切です。
紫外線対策は万全に
紫外線はお肌の細胞を傷つけて慢性炎症のもとになります。特に紫外線の強い季節は紫外線を避けて浴びないように注意しましょう。
お酒の飲み過ぎは慢性炎症の原因
適度な飲酒は血流を促進させて体のすみずみに酸素や栄養分を運搬して傷ついた細胞の修復に貢献してくれます。
酒は百薬の長といわれていますが、飲み過ぎは肝臓にダメージを与えて慢性炎症の原因になります。
過度な飲酒のリスク
タバコは慢性炎症をすすめる
「タバコは百害あって一利なし」といわれている通り、慢性炎症の原因になりますので禁煙しましょう。
タバコの成分中には酸化物質が含まれており、この物質が血管の内皮細胞に障害を与えて動脈硬化などの慢性炎症を促進させることが分かっています。鉄が酸化されるとサビるように血管は「ボロボロ」になります。
また、タバコは悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させて動脈硬化を促進させて脳梗塞や心筋梗塞などの危険因子となります。
以上のように、タバコは血管の慢性炎症をすすめ、脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。副流煙によって周囲の人に健康被害が及びますので、喫煙している方は出来るだけ早く禁煙しましょう。
禁煙するために、ニコチンガムやニコチンパッチといった禁煙補助剤を活用することもひとつの方法です。
また、最近では禁煙外来を設置してる病院もありますので、受診してみましょう。
禁煙は、早ければ早いほど健康を取り戻すことができます。
過度のストレスは慢性炎症の原因
ストレスは血管を収縮させて血圧を上昇させて血管壁を傷つけます。
人の生死に関わるようなストレスを「キラーストレス」と呼んでいますが、このようなストレスが継続するとがん細胞を殺傷するナチュラルキラー細胞が働かず、がん細胞が増殖するリスクを高めることが分かっています。
「キラーストレス ストレスホルモンが免疫力を低下させる」
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