オメガ3脂肪酸の5つのポイント
私たちの体に必要不可欠な脂肪酸は「オメガ3脂肪酸」、「オメガ6脂肪酸」、「オメガ9脂肪酸」、オメガ3系、オメガ6系、オメガ9系など一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
特に健康効果が高いとして注目されているのが、アマニ油やエゴマ油、マグロやブリなどの青魚になどに多く含まれているオイルが「オメガ3脂肪酸」です。
オメガ3脂肪酸は、植物のエゴマやアマニ、青魚のサバやイワシなどに多く含まれている脂肪酸ですが、日本人は昔、青魚をたくさん食べていたので、オメガ3脂肪酸が不足することはありませんでした。
しかし、近年の食事の欧米化によって動物性の脂肪酸の摂取量が増え、動脈硬化、がん、糖尿病、アルツハイマー型認知症などの生活習慣病を予防する働きが認められてるオメガ3脂肪酸の摂取量が減り、バランスが取れていなことが問題です。
サラダオイルに多く含まれているオメガ6脂肪酸、オリーブオイルに多く含まれているオメガ9脂肪酸などの不飽和脂肪酸、肉の脂やバターなどの飽和脂肪酸をバランスよく摂取することが大切なのです。
脂肪酸の分類
脂肪酸は以下のように分類されています。
〇不飽和脂肪酸(常温で液体)
▼多価(体内で合成不可)
◇オメガ3系脂肪酸 α-リノレン酸 エゴマ、アマニ
EPA(エイコサペンタエン酸) 青魚
DHA(ドコサヘキサエン酸) 青魚
◇オメガ6系脂肪酸 リノール酸 サラダ油、ゴマ油、大豆油
▼一価(体内で合成可)
◇オメガ9系脂肪酸 オレイン酸 オリーブオイル、菜種油
〇飽和脂肪酸(常温で固体) 肉の脂、バター、マーガリン
なぜ脂質(オイル)が体に必要か
脂質は、エネルギー源であるとともに体の細胞を構成している大切な栄養素です。
脂質がなければ、血管はボロボロ、皮膚は乾燥し、体力はなく疲れやすく生きていくのも難しくなります。
脂質は、三大栄養素にも分類されます。
他の二つは糖質とたんぱく質ですが、いずれも体に必要不可欠の栄養素です。
糖質とたんぱく質は1g当たり4キロカロリーですが、脂質は9キロカロリーとエネルギー量が多く、エネルギー源としても摂取効率が良い点があります。
エネルギーとして活用されず余った脂質は中性脂肪として皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されます。
中性脂肪が多くなりすぎるのは問題ですが、仮に中性脂肪が体内にないとすると、血中のブドウ糖が無くなった時にエネルギーが補えなくなり生命に危機が及ぶことになりますので、脂質は大変重要な栄養素です。
脂質はその他にも多くの働きをしています。
1.細胞膜を作っている。
2.エネルギー源となる。
3.体温を維持する。
4.関節の動きを円滑にする。
5.便の滑りを良くしてを排便を促進する。
6.ホルモンの成分となる。
以上のように脂質は私たちの体にとって必要不可欠な栄養素です。
脂質であるオイルの役割は
私たち人の体を構成している60兆個ともいわれている細胞を構成している材料になっています。
細胞膜はリン脂質とよばれる物質からできていますが、リン脂質はミネラルのリンと脂質が結合したものです。
そして、脂質の一種であるコレステロールがリン脂質に入り込んで細胞間の結合を強固にするセメントの役割を担っています。
オメガ3脂肪酸が健康に良い5つのポイント
1.血管壁にかかる負担を軽減する
「人は血管から老いる」有名な言い伝えですが、血圧が常に高い高血圧や血糖値が高い人では血管壁に負担がかかって擦れる「ずり応力」が働き血管が傷みやすくなります。
この血管壁にかかる「ずり応力」を軽減するのがオメガ3脂肪酸なのです。
そのメカニズムは、血管壁の細胞膜はコレステロールによって強化されていますが、しかしコレステロールの構造は直鎖構造であるため、縦からの応力には強いものの、血液の流れは横方向の擦れる「ずり応力」であるため対応することができません。
そこで活躍するのが、オメガ3脂肪酸です。
先程のコレステロールは直鎖構造なのでまっすぐな構造しています。
一方、エゴマ油やアマニ油に多く含まれているα-リノレン酸はオメガ3脂肪酸であり、構造は折れ曲がっている部分が3ヶ所もあって、血流による血管壁の負担を和らげる働きが高いのです。
因みに、サラダ油に多く含まれているリノール酸はオメガ6で折れ曲がりの部分が2ヶ所、オリーブオイルに多く含まれているオレイン酸は折れ曲がりの部分が1ヶ所です。
2.LDLコレステロールを減少させる
一般的にLDLコレステロールが悪玉で、HLDコレステロールが善玉といわれていますが、私たちの体にはLDL、HLD の両方のコレステロールがバランス良く存在していることが重要です。
しかし、近年の高脂肪の欧米化した食事では脂質を摂りすぎている傾向があり、LDLコレステロールが過剰になっている傾向にあります。
基本的に余ったLDLコレステロール、HLDコレステロールが回収して肝臓に運んで処理されます。
しかし、LDLコレステロールが過剰になり過ぎるとHLDコレステロールの回収が追い付かず血中のLDLコレステロールが上昇して血管壁に付着して蓄積されて動脈硬化につながります。
そこで、3ヶ所も折れ曲がっているオメガ3脂肪酸は血管壁に付着した真っ直ぐな構造の直鎖脂肪酸のLDLコレステロールを削り取って置き換わってくれます。
つまり、LDLコレステロールが付着した部分にオメガ3脂肪酸が入れ替わってくれるのです。
3.オメガ3脂肪酸に入れ替わると血管に良い
血管は筋肉によって伸び縮みする平滑筋で出来ていますので、しなやかで丈夫な血管には十分な酸素や栄養が必要です。
また、血管は体中に張り巡らされていて酸素や栄養を体のすみずみまで届けています。
もし、血管壁にLDLコレステロールがベッタリと付着していると血管自体に栄養や酸素が十分に供給されなくなり自在に伸び縮みができなくなります。
また、体のすみずみにも酸素や栄養が届かなくなります。
オメガ3脂肪酸は、折れ曲がりが3ヶ所もあり、血管壁にすき間をつくるため栄養や酸素の供給をさほど邪魔になりません。
また、オメガ3脂肪酸は血管壁からはがれやすく、血流に乗って体内で有効に活用されます。
以上のようなオメガ3脂肪酸の作用が動脈硬化の予防をしてくれるのです。
4.オメガ3脂肪酸は過剰な炎症を抑制する
人の体は常に免疫システムが働いて外部から侵入した細菌やウイルスを排除して体を守っています。
免疫細胞のリンパ球から分泌される物質にサイトカインがあります。
このサイトカインの中には炎症を促進する「炎症性サイトカイン」に分類されるものがあって、このサイトカインは炎症に対して過剰に反応することでマクロファージを呼び寄せてしまいます。
血管壁で傷などの炎症が生じたときに炎症性サイトカインが分泌されて過剰に反応し貪食細胞のマクロファージが駆けつけて有害物を貪食し、死滅して蓄積するとコブになってプラークを発生させます。
オメガ3脂肪酸はサイトカインの過剰な反応を抑制します。
血管の炎症の規模は大小さまざまですが、小さな炎症でもサイトカインが過剰に反応するとマクロファージなどの免疫細胞が呼び寄せられ、命に関わるような大きな炎症の発生ヶ所に十分な数の免疫細胞が駆けつけることが出来ず、大出血を招くことになります。
オメガ3脂肪酸にはサイトカインの過剰な炎症作用を抑制する働きがあります。
5.青魚のオメガ3脂肪酸は脳の栄養に
エゴマ油やアマニ油のほかにオメガ3脂肪酸を多く含んでいる食べ物としてアジやサンマ、マグロなどの青魚があります。
アマニ油やエゴマ油はα-リノレン酸ですが、青魚にはEPA(エイコサペンタ酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)もオメガ3脂肪酸です。
DHAはアルツハイマー型認知症を予防
青魚でも特にマグロやブリなどの脂身の部分にDHAが多く含まれています。
特にマグロの赤身、中トロ、大トロの順に多く含まれています。さらに最も多く含まれているのは眼球の周りで、脂質の約半分がDHAであることが知られています。
DHAは脳の働きを高め、アルツハイマー型認知症を予防する作用があるといわれていますが、なぜでしょうか?
もちろん、オメガ3脂肪酸ですから、血管の健康や過剰な炎症反応を抑制す点は同じです。
その他に、青魚に含まれているDHAは脳の脳幹にあるブラッド・ブレイン・バリアとよばれる関所を通過することができることが分かっています。
脳は大変重要な器官であるため、摂取した食べ物の栄養素のうち脳に達することができるものは限られています。
海馬の神経細胞にDHAが供給されると細胞膜リン脂質にDHAが組み込みれて細胞膜の流動性が高まって脳の働きが改善されます。
アルツハイマー型認知症の脳細胞中にはDHAが正常脳細胞の半分以下しかないことが判明しています。
DHAによって生成されるプロテクチンD1と呼ばれるホルモンは脳細胞を自殺させる(アポトーシン)アミロイドβの働きを阻止して細胞を延命させる働きが確認されています。
もうひとつのEPAはこの関所を通過することができませんが、EPAは肝臓でDHAに変換されますので、EPAも脳に働きに良いのです。
DHAとEPAに抗がん作用
DHA、EPAと抗がん作用に関する研究は多く発表されています。
DHA、EPAを摂取するとがん細胞を構成している細胞膜のリン脂質の脂肪酸がDHAに置き換わって変化が起こってがん治療薬の感受性が高まることが解明されています。
また、DHAやEPAは、がん細胞の増殖と血管新生を抑制、がん遺伝子の発現を抑制、停止状態のがん細胞の細胞死(アポトーシス)を回復させるなどの働きも報告されています。
EPAもDHAもオメガ3脂肪酸ですので壊れやすい性質があるので新鮮なお刺身で摂取されることをおすすめします。
DHAは視力回復にも効果
DHAが生成するプロテクチンD1は視細胞や網膜の表面を覆っている網膜色素上皮細胞の機能維持に貢献しいていることが解明されています。
DHAは、脳幹の関門以外にも網膜の関門も通過し網膜細胞を柔らかくすることで、網膜の反射機能を向上させて視力回復を期待されるオメガ3脂肪酸です。
DHAによるてんかんに伴うけいれん発作を予防
広島大学やカリフォルニア大学の研究グループは、マウスほ用いた実験で、DHAを摂取することで、てんかんに伴うけいれん発作を抑制されることを明らかにしています。
DHAが脳内に達すると 女性ホルモンのエストラジオールの合成が活性化されてその量が増えることで、てんかんに伴うけいれん発作が抑制されると報告しています。
逆に脳内のエストラジオールの合成を阻害すると、けいれんが悪化する結果となったと報告しています。
本研究では、DHAの新しい脳内作用のメカニズムが明らかになることで、てんかん発作を予防する薬物や食事療法の開発につながることが期待されます。
既に女性ホルモンのエストラジオールは、脳内で記憶・学習の亢進、神経保護作用がある事がすでに報告されています。
DHA不足が視力低下や男性不妊を招く研究結果
DHA不足が視力低下や男性不妊の研究結果もあります。
国立国際医療研究センター研究所などのチームは、マウスを使った実験で体内にDHAがなくなると視覚や生殖機能が失われることを解明しています。
動物の体を作る細胞膜は、リン脂質という脂質が集まってできていて、眼球の内側にあって光を感じる網膜の視細胞や精子の膜には、DHAを含んだリン脂質が豊富に存在しています。
DHAは必須脂肪酸であり、体内で作り出すことができないため、食べ物から摂取しなくてはなりせん。
DHAを含む膜が作られないマウスの網膜では、目に入った光を電気信号に変える視細胞の一部の形が崩れていて、網膜に光を当てても電気信号が発生せず無反応で、ほぼ視力を失っている状態だったと報告しています。
また、DHAを含む膜が作られないマウスでは、採取した精子の90%が奇形で、精子の頭部に余分な物質が付着し、卵子に侵入するための先端部分が折れ曲がっているため、通常のマウスではほぼ100%成功する方法で5匹のマウスについて人工授精を試みたが、全て失敗したと報告しています。
常に摂取する必要があるDHA
以上の研究結果から「マウスで起こったことは人でも同様のことが起こると考えられるため体内でDHAが不足すると、視力低下や男性不妊の原因になる可能性がある」と指摘しています。
また、研究所の菱川大介上級研究員によると、DHAは摂取し続けないと体内で必要量が維持できないので、青魚やサプリメントからDHAを直接取ることが効果的だと思われると話しています。
「記事参照元」
「国立国際医療研究センター」
オメガ3脂肪酸は壊れやすく熱に弱い
血管の健康に効果が高いオメガ3脂肪酸ですが、オメガ3脂肪酸は熱に弱い弱点があります。
オメガ3脂肪酸は180℃前後の天ぷらなどの高温調理には不向きのオイルです。
先程、ご説明したようにオメガ3脂肪酸は、構造的に折れ曲がっている部分が3ヵ所もあるため壊れやすいのです。
オメガ3脂肪酸が壊れると健康に害を及ぼすものに変化してしまいます。
本来の血管の柔軟性を高めたり、過剰な炎症反応を抑制する働きがなくなり、逆に動脈硬化を促進させ血管を弱く脆くさせてしまいます。
特にオメガ3脂肪酸は酸化や劣化がはやいので摂り方に注意が必要です。
エゴマ油やアマニ油は20℃以下の暗所で保存し、サラダのドレッシングや野菜ジュースなどに入れて摂取し、おおよそ2ヶ月程度で使い切りましょう。
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