心臓の周りの血管を冠動脈といいます。
冠動脈は1日に約10万回も収縮と拡張を繰り返している心臓に酸素や栄養を送り届けている血管です。
この冠動脈が動脈硬化を起こして狭くなると心臓に十分な酸素や栄養を送ることができなくなって胸が痛くなります。この状態が狭心症です。
さらに動脈硬化が進行して冠動脈が完全に詰まると心筋に血液が届かなくなって心筋梗塞となります。
心臓に酸素や栄養が行かなくなると、その部分が壊死しますが壊死の部分が広がると収縮と拡張が出来なくなって大変危険な状態になり緊急の手術が必要になります。
狭心症も心筋梗塞も血液が心臓に行かなくなることから「虚血性心疾患」とも呼ばれています。
狭心症と心筋梗塞の症状である胸の痛みは「焼けつくような激痛や圧迫感」と表現されているように突然の激しい痛みです。
激しい痛みや圧迫感が15分間くらいまでの場合は狭心症が疑われ、15から30分以上も続く場合は心筋梗塞の疑いがあります。
心筋梗塞の発症が原因となって「心室細動」の不整脈を起こして心停止になることもありますので、緊急な対応が必要になります。
急性心筋梗塞では、発症して3時間以内に適切な処置を受ければ救命率は90%といわれています。
でも、一度心筋梗塞を起こしてしまうと、部分的に壊死した心臓の筋肉は元に戻ることはありませんので、心臓機能が大きく低下して慢性心不全や不整脈といった疾患につながることもあります。
慢性心不全が続くと少し歩いただけでも息切れや動悸がして日常生活にも支障をきたすことになります。
心筋梗塞の症状が発症したり、症状を発症している方を見かけた場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
また、人命救助の観点からAEDの操作を学習しておき緊急時に対応できるように訓練しておくことも大切です。
心筋梗塞や狭心症では、痛みを感じる部位が左肩、左手、腹部、あごや歯などの場合があります。
次のような痛みがある場合は一度内科で診察を受けましょう。
ただし、激しい痛みの場合はすぐに救急車を呼んで病院で診てもらう必要があります。
狭心症と心筋梗塞の前ぶれチェックポイント
突然の激しい胸の痛み
胸が痛いという症状が断続的に続く場合は狭心症の可能性があり心筋梗塞を起こす前兆である可能性があります。
心筋梗塞の発症では胸が絞り込まれるような痛みや胸を叩かれたような症状がおこります。救急車を呼んですぐに病院へ行きましょう。
継続的な動悸の繰り返し
動悸とは胸の鼓動がドキドキと自分ではっきりわかるほど強く打っている状態のことです。
人前で話すなど緊張した時や激しい運動をした後に動悸が起こるのは自然なことですが日常生活の中で平静に過ごしている時に起こる動悸は心筋梗塞や狭心症、不整脈といった心臓に関係する病気やバセドウ病、低血糖、更年期障害などでも動悸が激しくなる場合があります。
また、精神的ストレスによって頻脈になった時や、血圧が上昇して心機能が亢進した時に感じることもあります。
吐き気や嘔吐
心筋梗塞は心臓へ血液を送る冠状動脈が詰まって血液が行かない虚血状態となります。
すると神経終末の刺激によって心臓の下壁に豊富に分布する副交感神経が刺激されて嘔
吐や吐き気、虚脱感を引き起こします。
冷や汗
冠状動脈が詰まって血液が心臓に届かなくなると心筋梗塞を引き起こします。
心臓の筋肉に血液が届かなくなると心臓のポンプ機能が低下して全身に送られる血液量が減少します。
すると防衛本能が働いて生命の維持に大切な心臓・脳などに優先的に血液が送られ、末端の血管に血液が届かなくなり末端の血管が収縮するため汗腺も収縮して汗腺の先に溜まっている汗が冷や汗として放出されます。
めまいや体のだるさ、冷や汗、顔面蒼白などの症状は心筋梗塞の可能性があります。
奥歯の痛み
虫歯ではないのに動くと痛く、安静にすると治まる痛みは心臓の疾患の可能性があります。
歯の痛みが続く時は内科を受診しましょう。
私たちが胎児の時に奥歯や首に当たる部分に心臓があったことから脳が心臓の痛みの信号を奥歯や首に出すことがあります。
左肩の痛み
心筋梗塞では、心臓の痛みであるにもかかわらず左肩に痛みが出る場ことがあります。
心臓での痛みは神経を通して脳に伝えられますが、心臓の痛みを伝える神経は左肩を通っているため、この伝達過程で左肩に痛みが現れると考えられています。
左肩の放散痛は、肩こりと勘違いして見逃すことが多いのですが、すい臓や肺の病気の際にも見られる症状ですので注意が必要です。
左手小指の痛み
左手小指の痛みも左肩の痛みと同じ放散痛です。
心臓から脳へ繋がる神経というのは左半身へ影響が及ぶ事が多く、これはその神経の支配領域が左半身に片寄っていることが理由です。
痛みの程度は様々で痛みとして認識出来るものから痛いのか痛くないのか分からないような漠然とした痛みもあります。
このように放散痛は体の様々な部位で起こる痛みのサインです。
この痛みを放置せずに見逃さないことが貴重な命を救う重要なポイントです。
問題のない痛みであると分かれば安心します。
出来る限り早く医療機関を受診しましょう。
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