高齢者の便秘は腸の機能低下と思い込み
便秘の解消には食物繊維が大切だと言われてきました。
理由は、野菜などに含まれる食物繊維が腸壁を刺激することで腸のぜん動運動が活発化して排便を促します。
しかし、高齢者の場合、加齢とともに腸のぜん動作用が弱くなり、食物繊維が次々と毛糸玉のように固まる事があります。
つまり、排便をしようと更に食物繊維を摂取することで、腸内の食物繊維の塊が段々大きくなってしまい、最終的には、重度の便秘状態になってしまいます。
本来の食物繊維の役割は、腸壁を刺激することと、便の量を増やすことですが、高齢者の場合は、腸の機能低下が原因で便秘気味になってるケースがあります。
食物繊維を摂取し過ぎれば、重度の便秘になる可能性があります。
高齢になると体の様々な機能が衰えますが、同様に腸のぜん動運動も弱くなり排便機能も衰えます。
80歳を超えると女性より男性の方が便秘が多いという調査結果があります。
高齢者は自身の便秘については、羞恥心から話せないケースが多く、60歳以上では半数以上の方が何らかの便秘の症状を有していて「すっきりしない」などの自覚症状を持っているという調査結果があります。
高齢者は若者とは違って、例えば小旅行など少し環境が変わっただけでも、精神面の影響が大きく、交感神経が優位な状態が続いて腸のぜん動運動が低下し便秘になりがちです。
また、高齢者が便秘になったと勘違いするケースとして、高齢になると食事の分量が減るため、当然排便の回数も減少します。
以前に比較して排便回数が少なくなるのですが、回数が減ったことで便秘になったと勘違いして、浣腸を持ち歩く人もいます。
基礎疾患や認知症の影響も
高齢者は、糖尿病や脳血管障害、パーキンソン病、うつ病などの疾患を持っている場合がありまずか、これらの疾患は腸のぜん動運動の低下を来して便秘へつながる可能性があるといわれています。
また、薬が原因で便秘になる薬剤性便秘の可能性もあります。
近年大腸がんが増えていますが、腸壁に腫瘍があることで便秘が生じる可能性もあります。
認知症の方は、便秘を自覚し難く、症状を伝えられないこともありこともあります。
特にレビー小体型認知症は、自律神経障害によって腸管蠕動運動が低下するため病初期から便秘を生じる可能性が高くなります。
排便は3日に一度でも正常
医学的に3日に一度排便があれば正常ですので、焦らずに冷静に判断しましょう。
高齢者は加齢によって、腸管運動機能が低下して便が停滞することで腸管全体の動きも悪くなり、便秘となります。
また、加齢によって腹筋の低下や排便時の肛門周囲の筋肉の働きが低下して便秘となります。
高齢者では、直腸に便が到達して腹圧をかけても、排便反射が起こりにくいため便秘となり残便感が強くなります。
食物繊維の摂取法と運動
高齢者は、特に水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維をバランス良く摂取する事が重要です。
水溶性食物繊維の特徴
昆布、わかめ、こんにゃく、果物、里いもなどが代表的な水溶性食物繊維で、粘性があるものが多く、腸内を時間をかけて移動するため、空腹感を感じにくく食べ過ぎを防ぎます。
不溶性の食物繊維の特徴
穀類、野菜、豆類などの野菜などに含まれる糸状に長い筋で、ボツボツ、ザラザラしているのが特徴です。
腸内で水分を吸収して大きくふくらみ便の量を多くすることで便通を良くします。
また、腸壁を刺激することで、蠕動運動を促進させて便通を良くします。
特に腸の働きが弱った高齢者の場合、不溶性の食物繊維を摂り過ぎると、腸内に食物繊維の塊を作ってしまい、排便を阻害してしまう事があります。
水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維をバランス良く摂取するように心がけましょう。
高齢になると食事も減少することから、排便量も若い時よりも少なくなります。
従って、便が毎日出る必要はないといえます。
ただし、毎日排便があっても、便が硬くて排便時の苦痛がある場合にはかかりつけ医に相談しましょう。
適度の水分摂取と運動を習慣化
起床時の飲水補給は腸のぜん動運動の促進につながります。
高齢者の場合、頻尿のケースが多く、排尿の回数を抑えるため水分摂取を控えて便秘になるケースも見られます。
腸を整えて改善する作用があるヨーグルトやオリゴ糖などの摂取は、高齢者においても便秘を改善に役立ちます。
散歩は体全体の運動であり筋力の維持やリラックス効果が期待され便通の改善が期待されますので、無理のない程度で軽いウオーキングがお勧めです。
ウオーキングが困難な場合には、立位や坐位でストレッチ体操などは腸のぜん動運動の促進、排便に必要な腹筋の維持や改善が期待されるので便秘の改善に役立ちます。
腹圧を高めるための腹筋運動や骨盤底筋体操、腹式呼吸は便排出力の改善につながります。
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