腸内環境を改善して生活習慣病を予防する
食事の欧米化が進み、肉類を中心とした高脂肪、高たんぱくの食事が普及しています。
これらの食事は、悪玉菌のエサになり腸内環境を悪化させてしまいます。
悪玉菌が優勢になると有害物質のインドール、アンモニアを産生します。
これらの有害物質は腸壁から吸収されて血中に入り込んで全身をめぐります。
その結果、体調不良や肌荒れ、体臭や口臭などの原因となります。
また、動物性の脂肪は悪玉菌の作用によって発がん促進作用がある二次胆汁酸を産生することがわかっています。
乳酸菌は善玉菌を増やすとともに活性化させて悪玉菌の働きを抑え込んで有害物質の発生を抑えるとともに腸内環境を良好に保ち生活習慣病を予防して健康を維持する効果が期待されます。
今後、腸内細菌の研究が更に進み腸内フローラの構成が健康の指標になる日も近いと考えられています。
健康寿命の延伸が国の大きな課題となっていますが、その大きなポイントが人と腸内細菌の調和のとれた共生関係を維持することだと考えらています。
血圧を下げる作用
代表的な生活習慣病である高血圧は、糖尿病と同様で「サイレントキラー」といわれ、自覚症状がなく発見が遅れることが多い疾患です。
高血圧は、動脈硬化の原因となり、更には狭心症や心筋梗塞、脳卒中をなどの深刻な疾患を引き起こす原因になります。
日頃より、塩分や高脂肪、高たんぱくの食事にかたよらず、野菜や果物などの食物繊維を含む食品をバランス良く摂取する食習慣を維持することが大切です。
ヨーグルトにはカリウムが含まれており血圧を上昇させる余分なナトリウムを体外に排出する作用があります。
また、乳酸菌はたんぱく質のカゼインを分解してアミノ酸を生成します。
このアミノ酸は血管を収縮させて血圧を上昇させる酵素の働きを抑える働きをもっています。
更に乳酸菌には、血管の弾力性や拡張性を改善して血管年齢を若返らせる効果を期待することができます。
乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス「FK-23株」は乳酸球菌に分類されます。
乳酸菌には免疫機能を高めたり、血圧を下げる等、新たな作用があることが明らかになり、「FK-23株」の研究で、血圧を低下させる作用があることがわかりました。
また、「FK-23株」は血管壁に作用することで血管を拡張させ血圧を下げる効果があることも明らかになっています。
さらに、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス「FK-23株」抽出物(乳酸菌LFK)は「血圧降下剤」としてニチニチ製薬によって特許が取得されています。
たんぱく質、カルシウムの吸収を高める作用
乳酸菌は、牛乳などを乳酸菌または酵母で発酵させたもので牛乳の豊富な栄養を保持しています。
もともと、カルシウムは吸収率の悪い栄養素ですが乳酸菌のカルシウム吸収率は高く、他の食品では50%以下が多いところ約70%の高さを誇っています。
また、牛乳のたんぱく質は乳酸菌によって吸収されやすいアミノ酸分解されるので牛乳より吸収率が高まります。
更に、たんぱく質の大部分を占めるカゼインは栄養価が高くカルシウムの吸収を促進します。
カゼインには消化機能を安定させて免疫力を高め、血圧の上昇を抑えるなど様々な生活習慣病の予防や健康効果を期待することができます。
乳糖不耐症に対する効果
牛乳を飲むと腹部の不快感や痛み、下痢などでお腹の調子が悪くなる人がいます。
このような症状を乳糖不耐症といいます。
赤ちゃんは、母乳やミルクが主食なのでラクターゼが十分につくられますが、大人になるに従って乳糖を分解する酵素の活性が低くなります。
日本人の大人では約4割が乳糖を分解する酵素の働きが弱い乳糖不耐症といわれています。
この乳糖不耐症は日常的に牛乳や乳製品を摂取している欧米は少なく摂取する習慣がないアジア人に多いことが分かっています。
日本人に多い乳糖不耐症は、牛乳に含まれている乳糖をガラクトースとブドウ糖に分解する小腸の酵素ラクターゼが生まれつき不足していたり、酵素の活性が弱く乳糖が分解されず不消化のまま大腸に達することになります。
乳糖は腸内細菌の働きで乳酸に分解生成されますが、この時に炭酸ガスと水が生じます。
炭酸ガスは大腸を刺激して激しいぜん動運動を引き起こします。
このため不快感や痛みが生じたり、発生したガスがオナラとして放出されます。
また、大腸に大量の乳酸がたまると濃度を薄めるために、大量の水分が供給されるために下痢を起こします。
乳酸菌の特徴は、乳酸菌の働きで乳糖を4割程度分解していますので、牛乳に弱い方には乳酸菌が便利です。
乳酸菌にはアレルギーを抑制する効果
昔に比べて生活環境や生活習慣の変化からアレルギー疾患が増えています。
アレルギーは免疫反応の一種です。
免疫とは自己と非自己を判別して非自己を排除するシステムです。
例えば、花粉が原因で起こる花粉症は人の体には無害であるにも関わらず免疫システムが過剰反応をして自分自身を攻撃するアレルギーです。
最近、子どものアレルギー疾患が増加の一途をたどっており生活環境や食習慣、ストレスなどに原因があるとする報告もあります。
特に生活環境では普段の生活で除菌や殺菌などが衛生面が行き過ぎて細菌と触れ合う機会が減少したことがアレルギー疾患を増やしているという「衛生仮説」の考え方があります。
子どもの時に家畜と触れ合う環境で育った人はアレルギー患者が少ないことも分かっています。
また、食洗器がある家庭の子どもより、食器を手洗いしていた家庭で育った子どもの方がアレルギー疾患が少ないという研究結果も発表されています。
以上の様に生活環境をきれいにし過ぎたために細菌と触れ合う機会が減少し免疫システムが育たずにアレルギー疾患を引き起こしているという考え方が優勢になりつつあります。
アレルギーは、免疫システムのバランスが崩れていると考えられていますが腸内環境を整え免疫システムを正常化出来ればアレルギー反応を抑えられると考えられています。
一部の乳酸菌には花粉症などのアレルギーやアトピー性皮膚炎などの原因物質であるIgE抗体の産生を抑える働きがあることが分かっています。
乳酸菌ラクトバチルス・アシドフィルスL-92株「L-92乳酸菌」を使った研究で「眼のかゆみが約半分」、「鼻のかゆみが約4分の1」に軽減することが確認されています 。
コレステロールの吸収を抑える作用
生活習慣病の原因は主に高コレステロール、高血圧、高血糖です。
血中のコレステロールは腸壁から血中に入り全身をめぐります。
高コレステロールは心臓病や脳卒中の危険因子となっています。
本来、適度なコレステロールは細胞壁や胆汁酸、ステロイドホルモンなどの構成成分であり必要不可欠な物質です。
しかし、高脂肪・高たんぱく、食物繊維の少ない食習慣が原因で血中のコレステロールが高い状態が続くと血管壁にコレステロールがたまり動脈硬化を進行させます。
通常必要なコレステロールは体内で合成されるため、余分なコレステロールは蓄えられずに一定に保たれています。しかし、高コレステロールの方ではコントロールがきかず蓄積しやすい状態になっています。
乳酸菌には、血中のコレステロールの濃度を抑える作用が確認されています。
一部のコレステロールは、腸内細菌に吸着されて体外に排泄されています。
体外に排泄されるコレステロールの量で血中コレステロール濃度が適度に調節されているといわれています。
コレステロールの吸着と排泄は、お味噌や漬物から分離される植物性の乳酸菌より動物のミルクから分離される乳系の乳酸菌の方がより効果が高いことがわかっています。
また、乳系乳酸菌の中で乳酸桿菌よりもチーズの製造に使われる乳酸球菌のラクトコッカス属がコレステロールを多く吸着して体外に排泄することがわかっています。
乳酸桿菌では、アシドフィルス菌やカゼイ菌、ビフィズス菌などにコレステロールを吸着して体外に排出する作用を期待することができます。
ピロリ菌の活動を抑える作用
日本人のヘリコバクター・ピロリ菌の感染数は人口の半数の約6000万人といわれています。
特に高齢者層での感染率が高く、むかし井戸水を使っていたことに起因しているもいわれています。
ピロリ菌は、胃がんの原因と考えられていて日本では胃がんの患者数が多くがん全体では 男性が2番目、女性では3番目となっています。
胃がんのリスクファクターとしては、ピロリ菌だけではなく塩分の多い食生活や慢性胃炎、胃潰瘍などもあげられています。
ピロリ菌に感染したからといって、すぐに胃がんになる訳ではありませんがピロリ菌が悪さをすることで胃の内壁細胞が損傷して胃潰瘍を引き起こします。
この状態が繰り返し長く続くことで慢性化して胃がんのリスクが高まります。
研究では乳酸菌にピロリ菌の活動を抑える菌種があることがわかっています。
ピロリ菌の除去には健康保険が適用になりましたが、近年抗生物質に対してピロリ菌の耐性が強くなり薬だけでは100% ピロリ菌を除菌できないケースが見られるようになりました。
ピロリ菌の除菌に失敗すると、他の抗生物質を使い再度除菌をしなければなりません。
ピロリ菌の除菌治療で乳酸菌を併用するとピロリ菌の除菌効果が高いことがわかっています。
乳酸菌ラクトバチス・ガセリ「OLL2716株」には、強い胃酸にも負けずに生きる特徴があり、ピロリ菌の活動を抑える作用が確認されています。
乳酸菌ラクトバチス・ガセリ「SBT2055株」(ガセリ菌SP株)を使ったマウスの研究では、「ガセリ菌SP株」を与えたマウスの免疫力が高まって「ロタウイルス」や「インフルエンザウイルス」に対する感染抵抗性が強くなる可能性が示唆され予防効果が期待されています。
がんのリスクを低減する作用
免疫とは、自己と非自己を認識して非自己を排除するシステムです。
例えば体内にウイルスや病原菌が進入してきた時やがん細胞が発生した時に、これらを非自己として認識して攻撃し排除するシステムを免疫と呼びます。
そして、免疫システムの最前線で活躍しているのがナチュラルキラー細胞(NK細胞)やマクロファージなどの免疫細胞です。
NK細胞は、常時体内をパトロールしウイルスやがん細胞を発見すると即座に攻撃をしてこれらの有害物を排除する働きをします。
また、マクロファージは別名大食細胞とも呼ばれていて人体に有毒な物質をなんでも包み込んで食べてしまいます。
これらの免疫細胞は、リラックス状態の副交感神経が優位であれば活性化していますが精神的、肉体的にストレスが強い状態では活動が低下してしまいます。
これらの免疫細胞が活発に働いていることが重要なのです。
加齢とともにこの免疫活性が失われていき感染症等の病気を起こしやすくなります。
また、精神的なストレスや食生活や生活習慣の乱れが免疫活性を低下させることが知られています。
研究の結果、乳酸菌にはNK細胞やマクロファージを活性化させて免疫力を高める働きがあることがわかっています。
乳酸菌には加齢などの原因で低下した免疫を向上する働きがあります。
牛乳にも免疫力を高める効果がありますが、乳酸菌を含んでいるヨーグルトの方が約2倍の効果があることが研究で解明されています。
乳酸球菌エンテロコッカス・フェカリス「FK-23株」は乳酸菌の一種である腸球菌です。
「FK-23株」の加熱処理菌体を用いた研究では免疫力を高めて抗腫瘍作用が確認されています。
「FK-23株」の場合、生きたまま腸に届く生菌体よりも加熱殺菌処理をした死菌の方が免疫力が3倍も高まることが明らかになっています。免疫力を高め抗腫瘍作用が確認されています。
いかがでしたか、乳酸菌と生活習慣病についてご紹介しました。
毎日の食生活にヨーグルトや納豆などの乳酸菌を摂取して生活習慣病にかかりにくい体質に改善しましょう。
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