体の免疫システムのお話し


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第一段階 MHCクラスU分子から抗原提示を受ける

 

ヘルパーT細胞が活性化するには、まず第一段階として樹状細胞やマクロファージなどからMHCクラスU分子を介して抗原提示(病原体の断片を受け取る)が必要です。
 
ヘルパーT細胞は血液中に存在して全身をくまなく巡回していますが、リンパ節や脾臓にも存在しています。
 
ヘルパーT細胞は、マクロファージやB細胞、キラーT細胞などの実働部隊を活性化させる司令塔的な役割も担っています。
 
マクロファージや樹状細胞、B細胞などの貪食細胞は食べた病原体などの断片を「MHCクラスU分子というたんぱく質の両手」にのせてヘルパーT細胞に抗原提示をします。
 
この時ヘルパーT細胞の表面に糖タンパクの細胞表面抗原の1つであるCD4が補助的に働くことで、ヘルパーT細胞は抗原提示されたものを認識することが出来ます。
 
しかし、これだけではまだヘルパーT細胞は活性化しません。

 

   

 

第二段階 CD28とCD86が結合すること

 

第二段階として、ヘルパーT細胞の表面にあるたんぱく質CD28とマクロファージなどの抗原提示をした細胞表面にあるたんぱく質CD86が結合する必要があります。
 
CD28とCD86の結合がなければヘルパーT細胞は反応しません。
 
これをアナジー(anergy)=無反応といいます。
 
ヘルパーT細胞が活性化すると表面のCD4がシグナルを送りキラーT細胞表面にあるCD8細胞が刺激を受けて活性化し病原体を破壊します。
 
また、ヘルパーT細胞だけがB細胞へ抗体産生の指令を出すことができます。
 

   

 

Th1とTh2のアンバランスでアレルギーが起こる

 

ヘルパーT細胞には、1型ヘルパーT細胞(Th1)や2型ヘルパーT細胞(Th2)などがあります。

 

1型ヘルパーT細胞(Th1)

 

1.マクロファージやナイーブキラーT細胞を活性化させる。
 
2.抗原特異的にB細胞を活性化して、IgG抗体産生を促す。
 
3.インターフェロンγと呼ばれるサイトカインを放出して免疫細胞を活性化させる。

 

2型ヘルパーT細胞(Th2)

 

1.抗原特異的にB細胞を活性化してIgG抗体産生を促す。
 
2.好中球を活性化する。
 
3.インターロイキン4と呼ばれるサイトカインを放出して免疫細胞を活性化させる。

 

 

Th1細胞とTh2細胞の作用のバランスが崩れると自己免疫疾患やアレルギーなどを引き起こすと考えられてきました。
 
その理由としてTh1細胞とTh2細胞は、お互いに相反する働きをしており相互に対立する関係があると考えられているからてす。
 
例えば、Th1細胞が放出するインターフェロンγはTh2細胞の働きを阻害します。
 
また、Th2細胞が放出するインターロイキン10はTh1細胞の働きを阻害します。
 
このお互いの作用のバランスが崩れて、仮にTh2細胞の働きが優位になるとB細胞のIgE抗体の産生が多くなって花粉症などのアレルギーを引き起こすと考えられてきました。
 
Th1細胞の働きを優位にすることがアレルギーの予防につながります。
 
Th1細胞の産生にはグラム陽性菌が働き、Th2細胞の産生にはグラム陰性菌が働くことから、乳酸菌やビフィズス菌などのグラム陽性菌を摂取すると、Th1細胞の産生を促進させてアレルギーを抑える効果があることが報告されています。
 
しかし、Th17細胞が2005年に新たに発見されたことで、これまでのTh1細胞とTh2細胞のバランスの概念で説明されていたものが、実際にはTh17細胞も関与していた可能性が浮上しており、さらに複雑化しそうな様相を呈しています。

 

17型ヘルパーT細胞(Th17細胞)

 

新らたに発見された免疫の流れです。
 
Th17は好中球の集積を促す作用があります。
 
また、腸管の上皮組織に働きかけて細菌に対する防御物質の抗菌ペプチドを腸管内に分泌させる働きがあります。
 
さらにTh17細胞はインターロイキン17と呼ばれるサイトカインを放出して免疫細胞を活性化させナイーブキラーT細胞を活性化させることもわかってきました。

 

新たに発見されたTh17細胞の存在が、Th1細胞とTh2細胞のバランスにも何らかの形で関与している可能性があることから研究がすすんでいます。
 
Th17が加わり、Th1、Th2の3種類のヘルパーT細胞が発見されていますが、さらに別のタイプの存在も報告されています。

 

   

 

HIVはヘルパーT細胞にあるCD4に狙いをつける

 

エイズウイルスであるヒト免疫不全ウイルス (HIV)は、免疫の司令塔的な役割を担っているヘルパーT細胞に狙いをつけて攻撃をします。
 
エイズウイルスが、ヘルパーT細胞にあるCD4の機能を奪うことで、キラーT細胞やB細胞を活性化することができなくなり免疫不全となるのです。
 
エイズウイルスは、人の体内で生き続け子孫を残すために人の免疫細胞をコントロールしているわけです。
 
エイズウイルスが急激に増殖すれば人も死に至りますが、エイズウイルス自身も死滅してしまいます。長く生存するために考え出した方法が感染先の人の免疫細胞をコントロールすることなのでしょう。

 



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