体の免疫システムのお話し


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樹状細胞はT細胞を活性化する免疫の司令塔の役割

 

 

樹状細胞は,細胞の表面に突起構造(図中のグリーンの細胞)を持っている姿、形から名付けられています。
 
樹状細胞は、英語では「Dendritic cell:DC」で、「Dendritic」が「樹状」、「cell」が「細胞」です。
 
樹状細胞の大きさは、20〜50μm(μm:1000分の1mm)で免疫細胞の中では最も大きく、マクロファージとほぼ同じ大きさです。
 
また、樹状細胞は白血球全体の3〜6%を占めています。
 
樹状細胞は図のような長い足状の突起があることで、体内のあらゆる場所に存在して自由に移動する高い運動性を持っています。
 
樹状細胞は、「マクロファージ」や「好中球」などと同じ生まれつき生体に備わっている自然免疫に属し、ウイルスや細菌などの異物を貪食する働きがあります。
 
樹状細胞の、もうは一つの特筆すべき働きが、抗原提示能力の高さです。

 

樹状細胞は戦いの最前線よりも少し引いたところに待機しています。
 

樹状細胞の種類

 

樹状細胞は全身に分布していますが、分布している場所によって名称が異なりますので、その名称をご紹介します。
 
※T細胞に関連する樹状細胞
 
◎骨髄系樹状細胞(myeloid dendritic cell,MDC)
分布場所:全身に分布
 
◎形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell, pDC)
分布場所:全身に分布
 
◎ランゲルハンス細胞(langerhans cell,LC)
分布場所:表皮に分布
注意:ランゲルハンス細胞は樹状細胞と形状が似ているマクロファージに分類されることもありますが、名称は同じランゲルハンス細胞です。
参考までに、マクロファージも分布する場所によって名称が異なります。
 
◎指状嵌入細胞(interdigitating cell,IDC)
分布場所:リンパ節、脾臓、胸腺に分布
 
◎ヴェール細胞(veiled cell,VC)
分布場所:リンパ管内に分布
 
◎真皮内樹状細胞(dermal dendritic cell,DDC)
分布場所:真皮に分布
 
 
※B細胞に関連する樹状細胞
 
◎胚中心樹状細胞(germinal center dendritic cell,GCDC)
分布場所:リンパ組織内のリンパ小節の胚中心に分布
 
◎濾胞樹状細胞(follicular dendritic cell,FDC)
分布場所:リンパ組織内のリンパ小節に分布

 

樹状細胞は活性化するとリンパ節へ移動

 

前述のように樹状細胞は抗原提示能力が非常に高い特徴があって免疫の司令塔的な位置にあります。
 
食細胞でもある樹状細胞は病原体を食べて活性化します。
 
特に樹状細胞は活性化すると「成熟樹状細胞」となって、抗原提示の能力が高まり、最も近いリンパ節に移動し、獲得免疫のヘルパーT細胞やB細胞に対して非常に効率の良い抗原提示機能を発揮します。
 
このようにリンパ節に移動した樹状細胞は、サイトカインの一種であるケモカインを分泌してT細胞を誘導する働きがあります。
 
以上のような獲得免疫と樹状細胞の働きが解明したのは、カナダのラルフ・スタインマン博士で2011年にノーベル生理学賞を受賞しています。
 
リンパ節にはマクロファージも存在して、リンパ管の中を流れる病原体や老廃物や自己細胞の死骸などをとらえて消化します。
 
樹状細胞もこれらをとらえて活性化しますが、マクロファージのように貪食(どんしょく)には食べませんが、強い抗原提示能力を発揮します。

   

 

樹状細胞は病原体の断片をT細胞に抗原提示

 

活性化し病原体を食べた樹状細胞は酵素の力を利用して病原体を構成するたんぱく質をペプチドの断片に分解します。
 
樹状細胞は、ペプチドに分解した一部のペプチドを主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex)であるMHCクラスU分子にのせて細胞の表面に差し出します。
 
この差し出されたペプチドの断片は、他の免疫細胞の司令塔的役割をしているヘルパーT細胞やB細胞に提示されますが、これを抗原提示をします。
 
抗原提示を受けたヘルパーT細胞は、B細胞に対して抗原(有害物)に対抗する抗体(抗原を攻撃する武器)を産生するように命令を出します。

 

ヘルパーT細胞が活性化する条件1〜3

 

条件1

 

ヘルパーT細胞への抗原提示能に特化したのが樹状細胞です。
さらに樹状細胞は、まだ病原体に接触していないヘルパーT細胞に対して大量のサイトカインを放出して効率的に活性化することで獲得免疫を始動させます。

 

条件2

 

この時に樹状細胞の抗原提示の鍵とヘルパーT細胞のT細胞抗原認識受容体の鍵がピタリと合う必要があります。
 
樹状細胞の抗原提示には病原菌由来のMHCクラスU分子と自己細胞の死骸由来のMHCクラスU分子がありますが病原菌由来の抗原提示がどんな種類の提示であってもT細胞抗原認識受容体の形状は1000億種類以上もあり結合する可能性が非常に高いといえます。
 
しかし、自己細胞の死骸由来の抗原提示に対してはT細胞抗原認識受容体は数える程しかおらず、結合する可能性は低いことになります。

 

条件3

 

また樹状細胞が活性化して表面に出している補助分子CD80/86とT細胞の補助分子CD28が結合することが必要です。
 
 
以上の3つ条件が揃ってヘルパーT細胞が活性化して、B細胞に対して抗体の産生を命令します。

 




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