腸壁に穴が開くリーキーガット症候群(腸もれ)とは
リーキーガット症候群(LGS:Leaky Gut Syndrome)は、日本語では「腸管壁浸漏症候群」といわれる腸壁に穴が開いて「腸もれ」を起こして、さまざまな疾患を引き起こす病態のことです。
腸は「内なる外」といわれ、口から肛門までちくわ状になっていて内側にありながら外にも面しています。
しかし、腸に穴が開くと「内なる内」である体内に異物が侵入することになり体は異常事態となります。
リーキーガット症候群は日本ではまだ一般的に知られていない病態ですが、腸に穴が開くと聞いただけでゾッとしますよね。
リーキーガット症候群は、「Leaky(漏れる) Gut(腸) Syndrome(症候群)」の造語ですが、このサイトで症状や原因、予防や改善法を詳しくご説明致します。
会社組織から機密情報が漏れることを「リーク(Leak)」といいますが、ホースから水やガスが漏れることも同様にリークといいます。リークには漏れてはいけないところから漏れる意味があります。
腸もれのリーキーガット症候群が引き起こす疾患は多岐にわたるため、人によって症状が異なりますが、原因不明の不定愁訴や吹き出物などの肌荒れを起こすこともあります。
最近、ちょっと体調がさえない、肌荒れが頻繁に起こるようになったなどの自覚症状はもしかしたらリーキーガット症候群かもしれません。
この「症候群」とは、病因を特定することができず複数の病因が想定される一群の病態をいいます。リーキーガット症候群はさまざまな病気を引き起こす可能性があります。
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腸ののしくみと働き
腸は「内なる外」といわれている通り、口から肛門まで「口、咽頭、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、直腸、そして肛門」1本のちくわと同じような筒状をしていて、その長さは7〜8mもあります。
大腸の主な働きは栄養や水分を吸収して、ぜん動運動によって便を作って肛門へ運び排便を促進しています。その他にも体の健康維持にとても重要な働きをしている臓器です。
臓器のひとつである腸は腸管免疫と呼ばれ免疫システムで、体全体の免疫の約7割を受け持つ重要な臓器なのです。
免疫とは自己以外の異物を外敵とみなして排除する働きのことですが消化分解された小さな分子量の物質は免疫寛容(免疫が異物とみなさい、攻撃しない)が働き栄養素として腸壁から吸収されます。
正常な腸では細菌やウイルスなどの有害な物質が体内に侵入しないように免疫システムが働いて排除しています。
腸には体に有益な働きがある善玉菌、悪い働きをする悪玉菌、腸内環境次第でどちらにも傾く日和見菌など無数の細菌が生息して宿主の健康に大きな影響を及ぼしています。
腸壁の表面は絨毛と呼ばれる小さな突起でおおわれ、絨毛の表面には更に小さな微絨毛がおおっています。このように表面積を広くすることで効率良く栄養を吸収する構造になっています。
このような構造をした腸壁は、食べ物が消化分解されて分子が小さくなった物しか吸収されません。腸壁は大きな物を吸収させないようにふるいにかけているのです。
リーキーガットと免疫システムの働き
しかし、リーキーガット症候群は腸の内壁に穴が開き腸もれを起こすことで、本来のふるいにかける機能が働かず、食物や腸内細菌の悪玉菌が産生したインドール、スカトール、アンモニアなどの有害物が腸壁から漏れて血管内に入り込んで全身を巡る怖い疾患です。
腸の穴から一定以上大きな物が体内(内なる内)に侵入すると免疫システムがこれらの物質を異物とみなし排除するために抗体をつくり攻撃態勢を整えます。
次に同じ物質が侵入してくると抗体は攻撃を仕掛けることで炎症が起こってアレルギー症状としてあらわれます。
例えば、たんぱく質はアミノ酸に分解されてビタミンやミネラルの作用により、腸壁から血管に運ばれますが、リーキーガット症候群では腸壁に穴が開くために食べ物が消化分解される前の大きな分子のまま腸壁からもれて血管に入り込んでしまいます。
免疫システムとは自己以外の異物を外敵と判断してこれを排除する働きですから、消化分解された微小の分子に対しては免疫寛容が働き免疫反応を起こしませんが、分子が大きな状態では異物とみなして抗体を作り攻撃体勢を整えます。
免疫システムとアレルギー
この時の免疫システムの働きを簡単に説明しますと、「異物が体内に侵入するとこれをマクロファージが貪食します。
次に樹状細胞から異物の情報(抗原提示といいます)を受け取ったヘルパーT細胞は、B細胞に対して抗体(抗原を攻撃する物質)を作るように指令を出します。
指令を受けたB細胞は抗体を大量に作って、次に抗原(細菌やウイルス、たんぱく質などのアレルギー物質、花粉症の原因となる花粉もたんぱく質です)に出会うと迅速に攻撃を仕掛けて抗原を排除する」働きです。
リーキーガット症候群によって体内に抗体が大量に作られている場合、人の細胞もたんぱく質で構成され構造が似ているために自分自身の細胞を異物と判断して攻撃するため炎症が続きアレルギーを引き起こします。これは自己免疫疾患と呼ばれる難病です。
自己免疫疾患には、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどが代表的です。
リーキーガットを起こす様々な原因
リーキーガット症候群は次のような原因が考えられています。
1.抗生物質の乱用が腸内フローラを乱して有毒な物質を産生する耐性菌が異常繁殖
2.アスピリンやインドメタシンなどの非ステロイド系の薬品は腸壁の修復機能を阻害
3.アルコールやカフェインなどの刺激物は腸壁の炎症の原因
4.着色剤や防腐剤などの食品添加物が含まれている食品や飲料は腸壁の炎症の原因
5.アレルギーを起こしている食べ物、 糖質の食べ物や糖分が入った飲料は有害菌が増殖
6.水道水に含まれる塩素が腸内細菌を死滅させる
以上のいずれかに思い当たる項目はありませんか。
動物性脂肪のとりすぎは、消化を助けるために胆汁酸が大量に分泌されますが、分泌された胆汁酸の一部が大腸に流れ込みます。
次に悪玉菌によって二次胆汁酸が変えられて腸内環境が悪化しリーキーガット症候群になりやすくなったり、また二次胆汁酸が大腸がんの原因になっているといわれています。
リーキーガットの検査
腸は免疫の60%を担っているといわれる臓器であり、腸内環境は健康やさまざまな疾患と深い関係にあります。
潰瘍性大腸炎やリウマチなどの自己免疫疾患、うつ病や自閉症などの精神疾患にも関係しているから事が明らかにされています。
例えば、強いストレスが続くと腸内に悪玉菌が増えて腸内細菌叢の多様性が失われてリーキーガット(腸もれ)を起こしやすくなります。
脳と腸は脳腸相関といって迷走神経を通じて常に対話を行っています。
腸は心身の安定や心の安らぎなどに関与しているホルモンのセロトニンの90%以上を作り出している臓器でもあります。
排便の状態で腸内環境を推測
排便の状態は、色や形質、臭いなどによって腸内環境を推し測る事ができます。
排便の状態は腸内環境を映す鏡といわれています。
理想的な排便の状態を知っておきましょう。
IgG抗体検査
免疫細胞のB細胞が作る免疫グロブリンの一種であるIgG抗体の食物アレルギーの反応を調べる検査です。
IgG抗体検査では複数の検査項目が陽性であればリーキーガット(腸もれ)が有ると考えられます。
ゾヌリン検査
ゾヌリン検査は腸管浸漏症候群検査といい、リーキーガッド(腸もれ)を調べる検査です。
ゾヌリンは小腸で放出され腸粘膜細胞の隙間を開かせるたんぱく質です。
ゾヌリンの細胞受容体は、小腸や大腸の他にも心臓、や脳にも存在しています。
これらの臓器にはゾヌリンが密着しています。
しかし、腸壁に穴が開くとゾヌリンが血中に入り込みます。
血中のゾヌリン濃度を検査することでリーキーガット(腸もれ)の重症度の判定をすることができます。
検査の基準値は45 ng/mlです。
ただし40 ng/mlレベルから炎症・自己免疫疾患の症状が起こります。
肥満やグルコース不耐症の人でもゾヌリン濃度が上昇している場合があります。
腸壁を守るお酢やネバネバ食品など
腸もれを防いで予防改善する食べ物としてアメリカで発表された論文では、お酢に多く含まれている短鎖脂肪酸が報告されています。
短鎖脂肪酸は、腸内細菌のビフィズス菌がオリゴ糖を分解して生成する酢酸やプロピオン酸などです。
短鎖脂肪酸は、お酢に多く含まれていますが、「バルサミコ酢」や「ワインビネガー」、「リンゴ酢」などがお勧めですが、お酢の多量の摂取は健康被害を起こしますので注意しましょう。
腸壁の粘膜を保護する働きがある食物繊維も摂取しましょう。
食物繊維も腸内細菌によって分解されて短鎖脂肪酸が生成されます。
ネバネバ野菜の「オクラ」や「山芋」やネバネバ海藻の「モズク」や「メカブ」などを積極的に食べましょう。
また、野菜でもジャガイモは水溶性食物繊維が多く短鎖脂肪酸に変わりやすいといわれています。
その他にも、味噌や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品には腸内環境を改善して整える作用があります。
味噌の中でも愛媛県特産の麦味噌には、水溶性食物繊維のβグルカンが豊富、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維がバランスが良く含まれている上に麹菌アミラーゼが腸内の善玉菌の働きを活性化させることが分かっています。
腸壁を保護する青魚やエゴマのオメガ3脂肪酸
エゴマ油やアマニ油、アジ、サンマ、イワシなどの青魚に豊富に含まれているオメガ3脂肪酸には腸粘膜の炎症を抑えて腸壁を保護する働きがあります。
また、鯛に含まれているEPAは腸粘膜を修復したり炎症を抑える作用があります。更に鯛に含まれているビタミンB6は大腸がんのリスクを低下させる栄養素として注目されています。
腸管細胞を活性化させる L-グルタミン
「大豆食品と鰹節」
L-グルタミンはアミノ酸の一種で大腸粘膜の重要なエネルギー源で腸壁のバリア機能を増強する働きがある栄養素です。
また、L-グルタミンはリンパ球やマクロファージなどの免疫細胞を増強する働きがあり、外部から侵入した有害菌に対して攻撃を仕掛けて強力に排除します。
更に、L-グルタミンは傷ついた腸壁の修復に欠かせない栄養素であり腸の細胞を修復、再生を高める働きがあります。
L-グルタミンは、鰹節、大豆、きな粉、アーモンド、生魚、生肉、生卵、発芽大麦などに豊富に含まれています。
腸粘膜を守るアロエベラ
アロエの果肉には、胃や腸管内の酸化代謝物から保護して胃腸を保護して炎症を抑える働きがあります。
また、胃腸の粘膜の再生を促進する働きがありますので、毎朝のジューサーやミキサーで他の野菜や果物と一緒に回して頂きましょう。
腸粘膜の炎症を抑えるクルクミン
ウコンに含まれているターメリックの活性成分のクルクミンには、腸の炎症を抑える抗炎症効果や大腸がんの発生を予防する働きが報告されています。
また、クルクミンには、自己免疫疾患の潰瘍性大腸炎やクローン病の発生を抑える可能性も報告されています。
腸粘膜の炎症を抑えるケルセチン
タマネギには100グラムあたり2.6グラムのオリゴ糖が含まれています。
オリゴ糖は腸内細菌ビフィズス菌よって短鎖脂肪酸が生成されます。
また、タマネギには抗酸化物質のケルセチンが豊富に含まれています。
タマネギエキスをラットに与えたところ、腸管のバリア機能の増強が認められています。
腸管が強くなれば腸もれが改善して血液に毒素が行かなくなり、もきれいになって血管若返りにつながります。
腸壁の細胞に必要な亜鉛
亜鉛はアレルギー反応や炎症反応を抑える働きがあります。
また、亜鉛は細胞の生まれ変わりに重要な働きをする大切なミネラルです。
亜鉛は体内の炎症反応を抑えて臓器や器官の負担を軽減して働きを助けます。
亜鉛を多く含む食べ物の代表は牡蠣ですが、豚肉や牛肉、イワシ、ゴマなどにも含まれています。
粘膜の健康維持にパントテン酸
パントテン酸は、皮ふや粘膜の健康維持を助ける作用があります。
また、免疫力を高めてストレスを緩和させる働きもあります。
パントテン酸への最終的な変換は、腸粘膜で行われ、最終的に、腸粘膜でコエンザイムの合成に活用されます。
また、パントテン酸は副腎を正常に機能させたり、コルチゾールの産生に深く関与しています。
パントテン酸は、レバーや納豆、肉類や卵など幅広い食品に含まれています。
免疫を強化するβカロチン
βカロチンは、体内でビタミンAに変換されるためプロビタミンAとも呼ばれています。
βカロチンの働きは多岐にわたりますが、皮膚や粘膜を健康に保つ作用があります。
お肌のバリア機能を高めて免疫力を向上させる働きもあります。
βカロチンを多く含む食品として、ニンジンやモロヘイヤ、パセリ、ヨモギ、パセリなど多くの野菜に含まれています。
腸内環境を整える「乳酸キャベツの作り方」
腸もれの予防改善には腸内環境を整える事が大切で欧米化した食習慣を改めましょう。
全ての必須アミノ酸を含むお肉の摂取は重要ですが、過剰に摂取することは問題です。野菜などとバランスよく摂取することが大切です。
昔から日本に伝わる和食には植物性乳酸菌(植物由来の乳酸菌)が上手に活用されています。代表的な食品として、お味噌、漬物(地方によって様々な漬物があります)、日本酒などです。
また、今回ご紹介するキャベツも浅漬けとして食卓の常連でした。
今、和食の植物性乳酸菌が注目されています。
「乳酸キャベツ」の作り方
@キャベツを出来るだけ細く切りましょう。
A全体の半分をジッパーのついた保存袋(ジップロック)へ入れて粗塩を小さじ2杯を加え手もみでお塩を馴染ませましょう。
Bキャベツに粗塩が十分に行き渡ったら残りの半分のキャベツを加え、更に粗塩小さじ2杯、キビ砂糖を小さじ1/2加えて手もみで馴染ませましょう。
袋ごとバットに入れて余分な空気を確りと抜きましょう。
(空気を確りと抜くのがポイント)
Cペットボトルを重石にして常温で漬け込みましょう。
出来上がりの目安
冬場は3日間から6日間の漬け込みが目安です。
室温が23度で4日間くらいです。
夏場は室温が23度で1日間から3日間漬け込みが目安です。
夏場の暑いときは、わずか1日間で漬かります。
キャベツに付着している植物性乳酸菌がキャベツの糖分を栄養にして発酵して酸味がでます。
発酵が成功したら
@小さな泡があれば発酵がうまくいった証拠です。
A袋を開けたときに爽やかな酸味があれば成功です。
失敗した時のチェックポイント
@茶色になりすぎた時は発酵が進み過ぎです。
A強烈な酸っぱさ、苦味、腐敗臭の状態では食べられません。
乳酸キャベツの保存法
熱湯消毒したビンに移して冷蔵庫で保存して3週間以内に食べ切りましょう。
動物性乳酸菌に比べて植物性乳酸菌は強酸の消化酵素や塩分に対して強く生きたまま腸まで届く率が高い特徴のプロバイオテイクスの乳酸菌です。
最近の研究で死菌であっても腸内環境を整える作用があることが分かっています。
生菌で腸まで届くプロバイオテイクスに対して、食物繊維やオリゴ糖、死菌でも腸内環境を整える食品を総称してプロバイオテイクスの食品と呼びます。
乳酸キャベツは乳酸菌の他にも食物繊維が豊富ですので腸内環境を整える食べ物として大変優れているといえます。
乳酸キャベツの1日の目安として100から150グラムがおすすめです。
乳酸キャベツの召し上がり方
乳酸キャベツは、そのまま召し上がっても十分に美味しいのですが色々な食べ方があります。
@トーストに挟む。
Aヨーグルトをかける。
Bお椀に入れて出来上がりの味噌汁をかける。
Cソーセージや人参を煮込んだポトフーに最後に加える。
などたくさんの食べ方がありますので自分の好きな食べ方を発見して楽しみましょう。
腸もれによるリーキーガット症候群の原因と予防改善する食べ物をご紹介致しましたが、いかがでしたでしょうか。毎日の食習慣が大切です。腸内を改善させる食品や食材を意識して食べましょう。
腸内環境を改善する食品、食材はたくさんあります。こちらのサイトをご参考にしてください。
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