潰瘍性大腸炎の症状と原因
主な症状
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患の一つで腸壁の粘膜を侵してびらんや潰瘍があらわれます。
症状としては、血便、粘血便、下痢、腹痛などで繰り返し起こることがあります。
重症化すると体重の減少や貧血、発熱があります。
治療で一時的に改善することもありますが、数カ月から数年後に再び悪化し、これらの症状を繰り返す場合と慢性的に持続するケースもあります。
軽度の潰瘍性大腸炎であっても排便時に血便を伴うので健康診断で血便と判定され大腸の内視鏡で診断される場合がほとんどです。
主な原因
潰瘍性大腸園の原因は、まだ特定されていませんが慶応大学の本田教授が行っている最新の研究では免疫機能の過剰反応が影響しいることが明らかにされてきました。
この過剰な免疫反応を抑える作用をもつ「制御性T細胞(Tレグ)」を強力に増やす腸内細菌「クロストリジウム属」が欠かせないことが分かってきました。
免疫を抑制できれば治療や予防に期待が持てます。
現在、制御性T細胞を増やす人の腸内細菌17種を突き止められています。
すべてクロストリジウム属の細菌で、マウスに与えると腸炎や下痢を抑えられています。
炎症性腸疾患の人は、腸内細菌の種類が健康な人より2割ほど少ないこともわかっています。
遺伝子解析技術の進歩で腸内細菌のパターンは国や地域で異なり、食事や抗生物質の影響が大きいことも分かってきました。
制御性T細胞を増やす腸内細菌17種が突き止められ、これらの全てのクロストリジウム属の細菌をマウスに与えると腸炎や下痢を抑えられたことが確認されています。
米国では、この17種のクロストリジウム属の菌を混ぜたものを潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の患者に飲んでもらって、その効果を調べる臨床試験が始まります。
潰瘍性大腸炎と大腸がんとの関連
潰瘍性大腸炎と大腸がんとの関係は、診断後の年月でみると、大腸がんの発生率が普通の人よりも高くなることが知られています。
潰瘍性大腸炎と診断されてから10年で2%、20年で8%、30年で18%と大腸がんの合併が報告されています。
潰瘍性大腸炎に合併したがんは、普通の大腸がんと形状が少し異なり発見しにくいといわれています。
更に最近の研究では、潰瘍性大腸炎にはIgA抗体(免疫グロブリンA抗体)の関与が指摘されています。
IgA抗体は、悪玉菌を殺したり、腸内フローラを整える作用の他に、腸の粘液層に人に有用な細菌を引き込んで定着させる作用も持っていします。
このIgA抗体がある一部の悪玉菌の腸内細菌とくっつくことが分かり、この悪玉菌が腸の炎症に関わっていることが突き止められました。
マウスの実験では、悪玉菌だけでは炎症は起こらず、デキストラン硫酸ナトリウムを投与すると炎症が重症化することが分かりました。
腸内細菌との関係
善玉菌の「フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィ」は、粘液層にコロニー(居住地)を形成しており、発酵により酪酸エステルなどを産生して腸内を弱酸性の環境にして悪玉菌の活性化を抑えています。
また、酪酸エステルは「短鎖脂肪酸」と呼ばれ、免疫の過剰反応を抑制するTレグ細胞(制御性T細胞)を増やす作用があります。
「フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィ」や「クロストリジウム属」の細菌が腸内にフローラに存在しなくなると、炎症性腸疾患や肥満などの病気になりやすくなることが分かっています。
潰瘍性大腸炎の食事と治療
炎症の状態が極めて悪化している時は、絶食が必要な場合もあります。
比較的安定した症状の場合でも、高脂肪や香辛料・アルコールなどの刺激物は控えるべきでしょう。
暴飲暴食を避けて、腸内環境を整え、善玉菌が優勢になるようなオリゴ糖や水溶性の食物繊維を摂取することがすすめられています。
食事に気を付けることはもちろん必要ですが、食事内容に過度に神経質になるより、薬物治療を確実に行うことがさらに大切です。
潰瘍性大腸炎は症状が落ち着いても、3割から5割の患者が1年以内に再び症状が現れるといわれています。
症状が改善したと思えても医師の指示通りに薬を飲み続けるようにしましょう。
国の特定疾患
国の特定疾患に指定されているので、医療費と薬代は申請すれば補助が受けられます。
コラム
イタリアのギオンチェティが発表した論文では「潰瘍性大腸炎の治療に複数のビフィズス菌や乳酸菌から製造した乳酸菌製剤を毎日大量に摂取してもらい治癒に成功した」と述べています。
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