尿の色は健康状態の目安
体から排泄される尿、便、汗、涙、鼻水などは体の状態を伝える情報源といえます。
これらの色やにおい、量で健康状態を推測することが可能です。
尿は血液が腎臓の球糸体でろ過されたもので血中の水分や老廃物で構成されています。
尿に含まれている内容物を詳しく調べることで疾患の部位や状態も知ることが可能です。
健康診断で尿検査に異常があった場合、詳しく尿沈渣で調べます。
尿検査の中の尿沈渣
尿沈渣とは尿検査で尿たんぱくや尿潜血などで陽性と出た場合に行われる検査です。
尿沈渣は遠心分離機に尿をセットして500Gの重力で回転させて尿中の内容物を分離します。
因みにF1ドライバーにかかる重力は4G程度ですので尿沈渣の重力の凄さを想像することができます。
遠心分離機にかけた試験管内の尿の底には沈殿物が分離されますが沈殿物から体の様々な情報を得ることができるのです。
沈殿物には
尿道の上皮細胞や白血球、赤血球なども観察されますが、少量であれば問題ありません。
顕微鏡で一度にみえる範囲で赤血球や白血球が4個以下、上皮細菌も少量であれば問題ありません。
紫色の球形は白血球
白血球が多く観察される場合は、尿道に細菌感染などがあり膀胱炎、尿道炎、腎炎などを起こしている可能性があります。
透明な球形は赤血球
尿中に赤血球が多く観察される場合は、腎炎、腎結石、腎腫瘍、心不全、動脈硬化、尿路系の炎症、尿路結石、尿路腫瘍、ネフローゼ症候群、膀胱がんの疑いがあります。
円柱細胞は重要な所見
たんぱくの一種が円柱状に固まったもので、例えば赤血球円柱が認められれば、糸球体に出血があると診断され、白血球円柱は糸球体の炎症、腎盂腎炎、間質性腎炎などが示唆されます。
尿の色で健康状態をセルフチェック
尿の色で健康の状態がチェック
正常は薄い黄色 麦色の尿
尿は血液から作られますが、赤血球が寿命を迎えると肝臓で分解されてビリルビンになり、ビリルビンが腎臓で一部分解されてウロクロームという物質になります。
このウロクロームが黄色なので尿も黄色になります。
尿の黄色は薄い黄色と濃い黄色がありますが、水分の量で濃淡の違いがあります。
透明な尿
水分をたくさん摂取すると尿が薄まって透明に近くなります。
水分をたくさん飲んでいないのに尿が透明の場合は尿崩症の可能性があります。
尿崩症では尿の量が増えて色が薄くなります。
正常な人の1日の尿の量は約1.5リットルですが、尿崩症では倍の3リットルにもなります。
水をたくさん飲んでもいないのに尿の量が多い時は要注意です。
利尿ホルモンは脳の視床下部で生成されますが、例えば脳に腫瘍ができると利尿ホルモンの分泌が低下して尿崩症の症状としてあらわれることがあります。
また糖尿病でも尿の量が増えて尿色が薄くなることがあります。
乳白色の尿
白血球がたくさん含まれると乳白色になります。膀胱炎の疑いがあります。
また、腰が痛くなったり、発熱などがある場合は腎盂腎炎の可能性もあります。
赤色の尿
赤い尿の血尿は腎臓から膀胱までの間に異常がある可能性が高いと考えられます。
最初の尿が赤く、後が透明なら尿道に炎症があると考えられます。
また、腎臓に結石が出来ている場合も血尿が出ますが、このときは最初から最後まで赤い血尿が出ます。
痛みもなくて血尿が出る場合は膀胱がんの可能性もあります。
赤色の尿の注意点
血尿は治まることがありますが注意が必要です。
また、目視では黄色に見えても顕微鏡で見るとたくさんの赤血球が観察される事があります。
放置すると膀胱炎が悪化したり腎臓のがんが進行してしまうケースもあります。
一度でも赤い尿が確認されたときはすぐに専門の医療期間を受診しましょう。
オレンジ色の尿
血中の不要なヘモグロビンは肝臓で分解されてビリルビンとなり、その後ウロクロームになります。
しかし、肝臓に疾患があるとビリルビンがそのままの状態で尿から排出されるのでオレンジ色の尿になります。
オレンジ色の乳は、黄疸や肝硬変などの肝臓の疾患が示唆されます。早めに専門の医療機関で診察を受けましょう。
緑色の尿
尿が緑色の場合は緑膿菌が原因と考えられます。
緑膿菌は自然界に多く存在していますが、感染力が弱く健康体であれば通常では感染しません。
しかし手術の後などで免疫力が低下している時に感染すると敗血症を引き起こして、最悪の場合には死に至ることもありますので、すぐに医療機関で診てもらいましょう。
その他の尿の状態
尿の泡は病気のサイン?
放尿をして泡が30秒以上も消えない場合は尿にたんぱく質や糖が含まれていると考えられます。
この場合は腎臓病や糖尿病の疑いがあります。
排尿の回数が多い時は
弾性の頻尿の場合
男性で尿の回数が多い場合は前立腺肥大の可能性があります。
加齢と共に前立腺は大きくなる傾向かありますが前立腺がんの可能性もあるので医療機関を受診しましょう。
女性の頻尿の場合
女性の頻尿では過活動膀胱の可能性があります。
1日に何度も激しい尿意に襲われたり、失禁する場合は過活動膀胱の可能性があります。
出産で骨盤底筋が弱くなると我慢できなくなります。
骨盤底筋の強化は肛門締めの運動で改善します。
肛門を締めて尿失禁を改善/骨盤底筋強化トレーニング
腹圧性の尿失禁
尿失禁は女性に多く、特にお腹に圧力がかかったときに失禁します。
咳やくしゃみ、ジャンプした時など腹圧がかかって失禁することもあります。
尿を我慢し過ぎると膀胱が膨張して血管が圧迫されるので血流障害が起こります。
また、尿を我慢すると尿意がなくなったり、尿を排出する力が小さくなり残尿が多くなりますので、尿意を感じたらすぐにトイレに行くように習慣化しましょう。
尿で健康状態を検査する最新研究
近い将来に「なんでも尿検査システム」が開発されそうです。
最新の研究では尿のサンプルを全国から3000本も集めて調べています。
違い将来に尿検査だけで人間ドックの検査に匹敵する内容が得られるようになるそうです。
この研究では、尿中のアミノ酸からつくられるたんぱく質とペプチドに注目して研究が進められています。
これらの種類や数を調べることで様々な病気の発見につながるそうです。
例えば、尿検査だけで認知症や虫歯、筋肉の老化による体力の低下など様々な体の状態がわかるようになります。
将来は医療機関で人間ドッグを受けなくても家庭で尿の検査をするだけで健康状態が把握できる時代が来るのです。
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