健康診断の数値の見方読み方


このエントリーをはてなブックマークに追加   


健康診断 血液一般検査(貧血検査、その他)

 

血液検査では、一つの検査項目の異常からではなく、さまざまな検査項目の結果を総合判断します。

 

血液検査の基準値は、検査を受ける医療機関によって異なりますので、検査を受けた医療機関などで示されている検査範囲と実際の検査数値を比較するようにしてください。

 

また、基準範囲を少し外れる検査があっても「ほぼ正常」の判定もありますが、「要精密検査」の判定の場合は、内科を受診してさらに詳しい検査を受けましょう。

 

「要精密検査」の判定が出ても、睡眠不足や体力疲労など検査の時の体調、食事や服用している薬の影響に左右され、病気にかかっているとは限りませんので過度に心配をせずに必ず再検査を受けましょう。

 

赤血球数とヘモグロビン

 

赤血球数とヘモグロビン 

 

赤血球数(RBC) 基準値 男性「437〜536」 女性「392〜485」(単位10の4乗/μl)
ヘモグロビン(Hb) 基準値 男性「13.7〜16.4g/dl」 女性「11.9〜14.6g/dl」
(日本人間ドック学会と健康保険組合連合会の150万人の調査結果を反映した基準値)

 

赤血球は血液中の血球成分のひとつで、赤血球中のヘモグロビンが、肺で酸素と結合して、血管を通して全身に運搬されます。

 

一方で、体内で発生する二酸化炭素は、肺におけるガス交換で体外に排出されます。

 

赤血球及びヘモグロビンは一定量に保たれていますが、基準値より低くなることを貧血と呼んでいます。

 

ヘモグロビンの濃度が高度に低下すると、酸素摂取不足になり身体活動が困難になります。

 

実際の診断では、ヘモグロビンとヘマトクリットの数値も併せて判断されますが貧血の種類にもいくつかあります。

 

1.鉄欠乏性貧血   貧血では最も多く、体内の鉄不足
2.悪性貧血     赤血球の成長に必要なビタミンB12の吸収障害
3.溶結性貧血    赤血球が破壊される

 

逆に赤血球数が600万個/μl以上に増えると多血症となって血流がわるくなって詰まりやすくなります。

 

「参考」
スポーツ選手の高山トレーニングは、気圧の低い高山に長期的に滞在してトレーニングすることで、赤血球とヘモグロビンの濃度を上昇させ、運動能力を高めるために行われています。

 

ヘマトクリット

 

ヘマトクリット(Ht、Hct) 基準値 男性「41~48%」 女性「36~44%」
(日本人間ドック学会と健康保険組合連合会の150万人の調査結果を反映した基準値)

 

血中の赤血球の割合を示す数値です。基準範囲より低ければ貧血、高い場合は多血症が疑われます。

 

貧血の種類を診断するときは、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットの数値から、MCV(ヘモグロビンの大きさ)やMCH(赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン量)、MCHC(ヘモグロビンの濃度)を算出して推測します。

 

「参考」
貧血には、いくつかのタイプがありますが、貧血のタイプの推測に役立つのが、MCVとMCHCの数値です。

 

◎「MCV」は、ヘマトクリットを赤血球数で割った数値で赤血球の平均容積。
  MCV=[ヘマトクリット値(%)÷赤血球数(10の6乗/o3)]×10

 

◎「MCH」は、赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン量。
  MCH=[ヘモグロビン(g/dl)÷赤血球数(10の6乗/o3)]×10

 

◎「MCHC」は、ヘモグロビンをヘマトクリットで割った数値で1個の赤血球に含まれるヘモグロビンの濃度。
  MCHC=[ヘモグロビン(g/dl)÷ヘマトクリット値(%)]×100

 

「MCV」と「MCHC」の値を算出することで貧血のタイプを知る目安になります。

 

MCV

MCH

MCHC

疑われる貧血の種類

低値 低値 低値 鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、慢性感染症など
ほぼ正常 ほぼ正常 ほぼ正常 溶血性貧血、再生不良性貧血、白血病、腎性貧血、急性出血など
高値 高値 ほぼ正常 巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏症、葉酸欠乏症)など

 

血清鉄

 

血清鉄Fe濃度 基準値 男性「60~165μg/l」 女性「40~145μg/l」
血清フェリチン 基準値 男性「40~360ng/ml」 女性「3~120ng/ml」

 

成人では、体内の鉄(Fe)の含有量は、3〜5gで、そのうちの3分の2がヘモグロビン鉄です。
残り3分の1が、貯蔵鉄、ミオグロビンや組織に含まれる鉄、そして血清鉄などです。

 

体内に存在する鉄は主に、赤血球中に含まれるヘモグロビンを作るための材料として使われます。

 

成人では、一日に約1mgの鉄が汗や尿、便などから排泄されます。女性の場合、月経の時に20〜30mgの鉄が失われます。

 

血液中に存在する血清鉄は全体の0.1%程度で、トランスフェリンと呼ばれる蛋白と結合し、細胞内鉄貯蔵たんぱくとなり、鉄を含んでいないアポフェリチンが2価のFeと結合してフェリチンとなります。

 

フェリチンは、潜在性鉄欠乏性貧血の指標となります。

 

白血球数

 

白血球数(WBC) 基準値 「3200〜8500」(単位:/μl)
          (日本人間ドック学会基準値)

 

白血球は、細胞内に顆粒を持つ、好中球、好酸球、好塩基球と顆粒を持たないリンパ球や単球などに分類されます。
これらの、役割はそれぞれ異なりますが、全体の働きとしては、体内に侵入した細菌やウィルスなどの異物を阻止することや免疫物質の産生などの役割を担っています。

 

体内に異物が侵入した場合や傷がある場合、白血球を作る骨髄に異常が発生すると、白血球数は急激に増加します。
その他にも基準範囲より高い場合は、肺炎、虫垂炎、胆のう炎などの炎症性の疾患が疑われます。
また、心筋梗塞や白血病、がんなどの場合も数値が高くなります。白血病では数値が低くなる場合もあります。
通常、炎症性疾患では「15,000〜20,000」個/μl程度、白血病では「10,000〜200,000」個/μlにもなります。

 

一方、白血球を作る細胞のはたらきが低下すると白血球数が減少しますが、ウイルス感染症の初期、再生不良性貧血、膠原病などの疑いがあります。

 

白血球像

 

桿状核球(Stab)     基準値「1.0〜7.0%」

 

分葉核球(Seg)      基準値「34.0〜70.0%」

 

好中球(Neut)       基準値「42.0〜74.0%」

 

リンパ球(Lympho)基準値「18.0〜49.0%」

 

単球(Mono)         基準値「2.0〜10.0%」

 

好酸球(Eosino)    基準値「0.0〜8.0%」

 

好塩基球(Baso)    基準値「0.0〜2.0%」

 

血中の白血球の種類は健康な状態では一定の割合で構成されています。割合の変化から疾患を推測することができす。

 

基準となっている範囲を大きく上回る場合は下記の疾患が推測されます。

 

好中球(Neut)の増加では、感染症や炎症、心筋梗塞、慢性骨髄性白血病などの疾患。
リンパ球(Lympho)の増加では、ウイルス感染症やリンパ性白血病などの疾患。
単球(Mono)の増加では、結核などの感染症や膠原病などの疾患。
好酸球(Eosino)の増加では、花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患。

 

血小板数

 

血小板数(PLT) 基準値「15〜33」(単位10の4乗/μl)
(日本人間ドック学会と健康保険組合連合会の150万人の調査結果を反映した基準値)

 

血小板は、出血した時に血液凝固因子とともに働き止血し、血管が再生するまで傷口を塞ぎ、出血を止める役目を果たします。

 

血小板数が減少すると、出血傾向になり止血が困難になります。

 

一方、血小板数が増えすぎると、血栓ができやすく、血管が詰まりやすくなります。

 

検査値が低い場合は特発性血小板減少性紫斑病や血小板の産生が減少する再生不良性貧血、白血病、悪性貧血などが疑われます。また、肝硬変が進行すると血小板数が減少します。

 

「5万」個/μl以下になると鼻や歯肉からの出血が起こりやすくなり、「3万」個/μl以下になると脳出血などを起こすリスクが高まります。

 

赤沈

 

赤沈(ERS、ESG) 基準値 男性「2~10mm」 女性「3~15mm」 (1時間値)

 

血液に抗凝固剤を混ぜて、赤血球が沈む速度を計って疾患を推測します。

 

沈む速度が速い場合は、扁桃炎や肺炎、気管支炎、貧血、膠原病、がんなどが疑われます。沈む速度が遅い場合は多血症が疑われます。

 

CRP

 

CRP(C反応性たんぱく) 基準値 0.3r/dl以下

 

体内で炎症が起こると血中に急増するたんぱく質の一種です。この数値をみることで、炎症の程度や経過を推測するのに有効です。
数値が高い場合は、感染症や膠原病、がん、心筋梗塞などが疑われます。

 

血清アミラーゼ

 

血清アミラーゼ(AMY) 基準値 32〜104U/L

 

すい臓と唾液腺で産生されるアミラーゼはでんぷんを分解する酵素です。血中のアミラーゼが増加して基準値より高くなると、急性・慢性膵炎やおたふくかぜなども疑われます。

 

血清リパーゼ

 

血清リパーゼ  基準値 11〜53U/L

 

リパーゼはすい臓から分泌される消化液に含まれている脂質分解酵素です。基準値よりも高い場合はすい臓の異常が疑われます。唾液腺からはリパーゼは分泌されないので、血清アミラーゼの数値を参考にすることですい臓の病気か唾液腺の病気かを診断することができます。

 

腫瘍マーカー

 

腫瘍マーカーは、がんが発生すると増える特殊な物質で、さまざまながんで増えるマーカーと特定のがんで増えるマーカーがあります。

 

腫瘍マーカー「CEA」が増えると、大腸、胃、肺、乳がんなど。
腫瘍マーカー「CA19-9」が増えると、すい臓、胆道、胃、大腸がんなど。
腫瘍マーカー「AFP」が増えると、肝がん。
腫瘍マーカー「PSA」が増えると、前立腺がん。

 

ただし、腫瘍マーカーはがんがなくても増えたり、がんがあっても増えないケースもあり、腫瘍マーカー単独での判断、診断はできません。

 

リウマチ因子

 

RAテスト  基準値 陰性、定量:15IU/ml以下

 

本来抗体は侵入してきた異物や体内で変質、変性した細胞を攻撃して排除するために作られる物質ですが、リウマチは自己免疫疾患で抗体が自分の体の組織を異物と判断して攻撃をします。

 

関節リウマチでは、80%の人が陽性となります。その他にも膠原病や肝硬変、感染症などでも陽性になることがあります。

 

血清電解質

 

血清電解質とは、細胞内液や血中に含まれている成分で生命活動をスムーズにするために重要な成分です。
体内ホルモンや自律神経になどさまざまな調整機能によって一定の範囲の濃度に保たれています。

 

血清電解質の濃度に異常が起こると腎臓機能などに問題があることが多く、治療が必要となります。
栄養の摂取バランスが悪くなると異常があらわれます。

 

血清電解質の濃度に異常があると生命に危険が及ぶ場合もあり専門医による治療が必要となります。

 

 

◎ナトリウム(Na) 基準値 138〜146mEq/l 

 

ナトリウムの数値が低い場合は、ネフローゼ症候群や腎不全、肝硬変、うっ血性心不全などが疑われます。
下痢やおう吐の時、利尿薬を服用している時にも低くなります。

 

逆にナトリウムの数値が高い時は、水分の摂取不足や脱水、尿崩症、原発性アルドステロン症、クッシング症候群などが考えられます。

 

◎カリウム(K) 基準値 3.7〜5.0mEq/l

 

カリウムの数値が低い場合は、二次性高血圧といって病気によって血圧が高くなる原発性アルドステロン症が疑われます。その他にも尿細管性アシドーシスなども考えられます。
インスリン注射や利尿薬の服用でも低くなることがあります。

 

逆にカリウムの数値が高い場合は、腎不全やアジソン病、アシドーシスなどが疑われます。

 

クロール(CI) 基準値 99〜107mEq/l

 

クロールとは塩素イオンのことで、大部分が塩化ナトリウムとしてナトリウムと一緒に存在しています。おう吐などで低くなりますが、この値が低いとアジソン病が考えられます。

 

逆にクロールの数値が高い場合は、尿道管性アシドーシスが疑われます。

 

 

カルシウム(Ca) 基準値 9.2〜10.7r/dl

 

カルシウムの数値が低い場合は、副甲状腺機能低下症や慢性腎不全、ビタミンD欠乏症などが疑われます。

 

逆にカルシウムの数値が高い場合は、副甲状腺機能亢進症や甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、急性腎不全などが考えれます。

 

リン(P) 基準値 2.8〜4.8r/dl

 

リンの数値が低い場合は、副甲状腺機能亢進症やビタミンD欠乏症などが疑われます。

 

逆にリンの数値が高い場合は、甲状腺機能低下症や腎不全などが考えられます。

 

 

検査の結果に異常値があった場合

 

内科を受診する 

 

健康診断などで血液検査の結果、数値に異常があり「要再検査」や「要精密検査」などの判定があった場合は、必ず内科などで詳しい検査を受けましょう。

 

血液検査の基準範囲は、実施する医療機関で異なっていますが、基本的に健康な人の95%が示す数値であり、個人によって健康の数値は多少異なります。

 

1つの検査数値のみで、病気を判断することはできませんので、他の複数の検査結果や診察などを総合的に判断して診断することになります。。


このエントリーをはてなブックマークに追加   


 

スポンサードリンク

 

関連ページ

健康診断 脂質検査 「中性脂肪」
中性脂肪の数値が、150mg/dl以上は、「高トリグリセライド血症」と評価されて、メタボリックシンドロームの診断基準にも加えられています。脂質検査「中性脂肪」の検査数値をご紹介
健康診断 脂質検査 「HDLコレステロール」
HDLコレステロールは、血中の余ったコレステロールを肝臓まで運ぶ働きをしています。動脈硬化を防ぐ働きをしている考えられ、「善玉コレステロール」と呼ばれる所以です。脂質検査 「HDLコレステロール」のご紹介です
健康診断 脂質検査 「LDLコレステロール」
LDLコレステロールは、カイロミクロンや超低比重リポタンパク (VLDL)がリポたんぱくリパーゼ及び肝性トリアシルグリセロールリパーゼの作用を受けることで、生成されます。LDLコレステロールは、動脈硬化を促進させる作用があることが知られています。脂質検査 「LDLコレステロール」のご紹介です
健康診断 脂質検査 「総コレステロール」
血清コレステロール(血液中のコレステロールの濃度のこと)が、増加すると動脈硬化を引き起こし、更に冠状動脈硬化に起因する狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の重大なリスク要因になります。脂質検査 「総コレステロール」のご紹介です
健康診断 糖尿病 「尿糖」
血糖値に異常がある場合、近位尿細管にはブドウ糖の再吸収能力に限界があり、再吸収されずに残った糖が、尿中に排泄されて、尿糖が陽性になります。健康診断 糖尿病「尿糖」のご紹介です
健康診断 糖尿病 「空腹時血糖値(FBS)」
空腹時血糖値はわが国では正常値との境界を110mg/dLとしていますがアメリカでは糖尿病の発症が有意に高いとして100mg/dLに設定しています。糖尿病 「空腹時血糖値(FBS)」のご紹介です
健康診断 糖尿病 「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、血中の血糖濃度に敏感に反応して、ブドウ糖と非酵素的に結合する特性をもっています。この特性から「糖化ヘモグロビン」ともよばれています。糖尿病の血糖値検査項目のヘモグロビンA1c(HbA1c)の数値についてのご紹介です
健康診断 肝機能検査 ASTまたはGOT
ALT(GPT)は大部分の臓器細胞に存在しています。AST(GOT)との大きな違いは、肝臓に分布している比率が最も高く、肝臓に障害が発生すると、特異的にALT(GPT)の値が上昇します。肝機能検査 「ASTまたはGOT」のご紹介です
健康診断 肝機能検査 ALTまたはGPT
ALT(GPT)は大部分の臓器細胞に存在しています。AST(GOT)との大きな違いは肝臓に分布している比率が最も高く、肝臓に障害が発生すると、特異的にALT(GPT)の値が上昇します。肝機能検査 「ALTまたはGPT」のご紹介です
健康診断 肝機能検査 血清総たんぱく
血清総たんぱくは、栄養状態の悪化や肝疾患で低下します。ネフレーゼ症候群などの腎臓の疾患でも尿の中にたんぱく質が流れ出てしまうために低下します。肝機能検査「血清総たんぱく」のご紹介です
健康診断 腎機能検査 尿
尿検査は、様々な代謝や腎機能などの異常の有無を簡単に把握できるスクリーニング検査として、広く活用されています
健康診断 痛風検査 尿酸(UA)
尿酸(UA)は、核酸の構成素の一つでるプリン体の最終代謝産物で、食べ物に含まれるプリン体も吸収されると体内で尿酸になり血液中に増加します。痛風検査 「尿酸(UA) 」のご紹介です
健康診断 血圧検査
健康診断は、医学検査であり各種の検査で健康状態を評価及び特定疾患のスクリーニングをを目的としたものです。検査内容や検査数値を理解して、疾病の予防や改善に役立てましょう。健康診断 血圧検査
健康診断 眼底検査
健康診断は、医学検査であり各種の検査で健康状態を評価及び特定疾患のスクリーニングをを目的としたものです。検査内容や検査数値を理解して、疾病の予防や改善に役立てましょう。健康診断 眼底検査
特定健診・特定保健指導
健康診断は、医学検査であり各種の検査で健康状態を評価及び特定疾患のスクリーニングをを目的としたものです。検査内容や検査数値を理解して、疾病の予防や改善に役立てましょう。特定健診・特定保健指導とは

若返り法 健康的にやせる 基礎代謝を上げる 免疫を高める 危険な習慣 認知症を予防 腸内環境を整える