日和見菌は体の免疫状態で善玉菌にも悪玉菌にもなる
日本の腸内フローラの第一人者である光岡知足氏が名付けた「善玉菌」と「悪玉菌」の他に中間的な役割をしている「日和見菌」があります。
日和見菌は字のごとく状況によって立場を変える風見鶏的な菌の総称です。悪玉菌の影響を受けて体に悪影響を及ぼす働きをすることがあります。
人は産まれる時に産道で初めて細菌に接触するといわれています。その後母親の母乳の摂取により善玉菌のビフィズス菌が優位になり、成長と共に日和見菌が増えていきます。
日和見菌の数は善玉菌を上回り悪玉菌などと一緒に腸内フローラを形成します。
この日和見菌は免疫機能が低下すると病原菌に変化して健康に悪影響を及ぼす可能性があるといわれています。
例えば日和見菌の大腸菌は免疫機能が正常に働いているときはビタミンの合成や消化吸収を助けるプラスの働きをしますが、体調を崩して免疫機能が低下すると腸内腐敗や腸内毒素を発生させて発がん物質も産生するそうです。
大事なことは、腸内環境を整え免疫機能を高めておくことといえます。
日和見菌の代表的な種類
バクテロイデス
バクテロイデス菌は日和見菌の代表的な存在で腸内フローラが悪玉菌が優勢になると有害な物質を生成します。
バクテロイデスの見逃せない特徴として免疫機能が正常に働いているときに肥満を防止する短鎖脂肪酸を生成することです。
短鎖脂肪酸は血中に入って全身をめぐり脂肪細胞に脂肪が取り込まれるのを抑制する作用があります。
また筋肉に働きかけて脂肪を燃焼させる作用もあるのです。
ユウバクテリウム
ユウバクテリウムは、バクテロイデス菌と同じ偏性嫌気性菌の代表です。
偏性嫌気性菌とは酸素に接すると死滅する細菌のことです。
善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスが大切
腸内フローラの構成が健康状態を左右することが分かってきましたが、私たちの腸内には実に600から1000兆個の細菌が生息しているといわれています。
細菌が初めて発見されたのは、「微生物学の父」として知られているオランダのレーウェンフック氏によってですが、それは1674年のことです。その後、彼によって多くの腸内細菌が発見されています。
現在、日本では、腸内細菌の第一人者である光岡知足氏により名付けられた「善玉菌」と「悪玉菌」、この両方の中間的な位置づけの「日和見菌」に分類されていますが、この3種類の細菌がバランス良く生息することで私たちの健康が維持されます。
特に腸内で善玉菌のビフィズス菌が優勢であることが重要です。
腸内フローラでは、この3種類のバランスが崩れ悪玉菌が優位になると風見鶏的な性質を持つ「日和見菌」は「悪玉菌」に変貌して、体にさまざまな害を及ぼします。
これらの「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」についてその特徴を知っておきましょう。
腸内細菌については最近の研究で多くのことが解明されてきましたが未知な部分も非常に多くあり、医療への応用が待たれるところです。
3種類の主な細菌の有用性と有害性
代表的な善玉菌
菌種 |
有用性 |
ビフィズス菌 | ビタミンの合成、消化吸収、免疫機能活性、病原菌感染防止 |
乳酸桿菌 | 消化吸収、免疫機能活性、病原菌感染防止 |
腸球菌 | 免疫機能活性、病原菌感染防止 |
嫌気性連鎖球菌 | 病原菌感染防止 |
代表的な悪玉菌
菌種 |
有害性 |
ウェルシュ菌 | 腸内腐敗、毒素、発がん物質 |
ブドウ球菌 | 毒素 |
プロテウス | 腸内腐敗、毒素 |
緑膿菌 | 毒素 |
ベーヨネラ | 発がん物質 |
代表的な「日和見菌」
菌種 |
有用性 |
有害性 |
大腸菌 | ビタミンの合成、消化吸収 | 腸内腐敗、毒素、発がん物質 |
バクテロイデス | ビタミンの合成、病原菌感染防止 | 腸内腐敗、発がん物質 |
ユウバクテリウム | 免疫機能活性、病原菌感染防止 | 腸内腐敗 |
以上は、代表的な腸内細菌ですが、腸内には他にも無数の細菌が生息して、私たちの健康と密接に関係しているといわれています。
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