口内フローラが悪化する原因
口内には700種類以上、100億以上の細菌が生息しており、腸内フローラと同じように生態系を構築していることから口内フローラとよんでいます。
口内フローラにおける善玉菌と悪玉菌のバランスがとれていて唾液が十分に分泌されていれば悪玉菌の虫歯菌や歯周病菌が活性化することがありません。
しかし、口内が糖分などの甘いもので満たされると虫歯菌や歯周病菌などの悪玉菌の働きが活発になって口内フローラのバランスが崩れると口内だけではなく体全体に様々な病気を引き起こす原因になります。
口内フローラの悪化原因
加齢
年齢を重ねるとともに体全体の筋肉が減少しますが同時に顔やあごの筋力も減少します。特にあごの筋肉は口を大きく動かすことで唾液腺を刺激して唾液の分泌を促進させる働きがありますが、筋肉が低下すると刺激が無くなって唾液腺が萎縮して分泌量が減少するため口内フローラが悪化します。
ストレス
継続的なストレスを受けると血液中にコルチゾールというホルモンが分泌されます。
コルチゾールが増加すると免疫力が低下するたウイルスや病原菌を排除出来なくなって口内に悪玉菌がはびこることになり口内フローラを悪化させます。
たばこ
たばこのニコチンやタールは歯垢や歯石をつくりやすく歯周病菌に対する免疫機能を低下させて口内フローラを悪化させる原因になります。
むし歯菌とは
虫歯菌は、正式にはミュータンス菌と呼ばれこの菌が虫歯の原因になります。
虫歯菌は、糖質を食べて活性化し増殖します。
虫歯菌が口内に糖を食べたときに産生する酸が歯をう蝕(溶かすこと)して虫歯の原因になります。
虫歯菌が口内に存在しなければ虫歯になることはありませんが、基本的に生後まもない赤ちゃん以外はミュータンス菌をもっていますので誰でも虫歯になる可能性があります。
ですから、虫歯菌を活性化させずに増やさないことが虫歯にならないポイントです。
虫歯菌は、甘いものである糖質が大好物である点を押さえておきましょう。
甘いものといえばお菓子を思い浮かべますが、お菓子だけではなく、白米やパンなどの炭水化物も糖質を含んでいますので、口内に長く残ると虫歯菌のエサになり虫歯の原因になります。
生まれたばかりの赤ちゃんには、虫歯菌はいませんが、両親や周囲の人からの感染で持つようになります。
そして母乳やミルクに含まれている糖質が虫歯菌のエサになって虫歯になります。
更に虫歯菌が血液中に入り込むと全身に巡って様々な病気を引き起こします。
例えば、細菌性の肺炎や細菌性心内膜炎などが代表的な疾患です。
歯周病菌とは
中高年になると、ほとんどの方が歯周病になっているといわれています。
その原因には、唾液の分泌が減少するためドライマウスになることがあげられます。
特に血圧を下げる降圧剤を服用している方は副反応として唾液が減少するため、バイオフィルムが500倍になるという説もあります。
歯周病の原因となる主な歯周病菌として、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A.A菌)、プロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)、プレボテーラ・インテルメディア(P.I菌)、スピロヘータなどが知られています。
これらの菌は、唾液や歯肉溝(歯と歯茎の境目の溝)にあるアミノ酸をエサにして増殖します。
増殖すると、歯垢(プラーク)をつくり歯茎の後退や歯槽骨の破壊などを引き起こします。
歯周病菌の中でもプロフィロモナス・ジンジバリス菌(P.G菌)は口臭の原因になる臭いの毒素を放出することで知られています。
歯周病菌は、酸素が存在するところを嫌う嫌気性細菌であるため、歯周ポケットをつくり、酸素が届きにくい奥に入り込んでバイオフィルムと呼ばれる強固な膜をつくって唾液の攻撃から逃れて定着します。
歯周病菌が放出するリポ多糖と呼ばれる毒素によって歯周炎を引き起こして歯周病にすすみます。
更に歯周病菌は、炎症を起こした部分から血管に入り込んで全身を巡り、様々な病気を引き起こします。
歯周病が誘因になる病気の疾患
◎糖尿病
◎心筋梗塞
◎バージヤー病
◎早産
◎低体重出産
歯周病は歯周病菌、虫歯は虫歯菌が悪さをした結果できるものですが、単にそれだけではなく、これらの菌が血管に入り込むと、命を落とすことさえあるのです。
炎症性サイトカインが血液中に入る原因
40歳を越える頃から、免疫力が低下していきます。
虫歯菌の中でも、特に悪玉な虫歯菌がCNN遺伝子を持った虫歯菌のミュータンス菌です。
ミュータンス菌を培養した結果、1割にこの遺伝子を持ったミュータンス菌であることがわかっています。
通常、炎症が生じても免疫が正常に働いている健康な方の場合にはコラーゲンと血小板が結合して止血します。
しかし、CNN遺伝子を持ったミュータンス菌が血中に入り込むとコラーゲンと結合して血小板の働きを阻害するため出血が止まらなくなり、炎症性の様々な重い疾患を招く可能性があります。
よって、口内の衛生を維持することで脳卒中などを予防することができるのです。
一般的に歯をよく磨いている人は有害菌が少なく、歯を余り磨かない人は危険な菌が多い傾向にあります。
また、舌の上に舌苔ができて有害菌の住みかになっていますので舌苔も専用のブラシで定期的に掃除することが必要です。
唾液には抗菌作用を持つ物質のラクトフェリン、リゾチームなどが含まれており細菌の増加を抑える働きをしています。
緑茶に含まれるカテキンが悪玉菌を撃退する
緑茶に含まれているポリフェノールのカテキンが口内フローラを整える働きがあります。
睡眠前の歯磨きをした後に緑茶でうがいをすれば殺菌作用で歯周病菌や虫歯菌を撃退してくれます。
朝も口の中が爽やかに目覚めができます。
食事の後でも緑茶を飲むようにしましょう。日々の習慣が口内フローラを健康に保ってくれます。
唾液のラクトフェリンの働き
ラクトフェリンは母乳や涙、唾液、血液などの外分泌液中に含まれる糖タンパク質で感染を予防する働きを持っています。
口内でのラクトフェリンの作用は口内細菌が活性化するために必要な第二鉄イオンと結合して繁殖を抑制する作用があります。
森永乳業株式会社の研究では、ラクトフェリンの摂取によって歯周ポケット内の歯周病菌数が減少して歯周病の症状が改善されたと報告しています。
また、ラクトフェリンを摂取する事で唾液が増加した研究結果もあります。
唾液のリゾチュームの働き
唾液に含まれている酵素のリゾチームは口腔内の有害な細菌を殺菌して口臭を抑える抗菌作用を持っています。
リゾチームは細菌の細胞壁に作用して分解させる働きがあります。細胞壁が分解されると細胞は自然と溶解し始め、結果として細菌を死滅させることができます。
唾液の分泌を促進する
食事の時に少し硬いかみ応えのある食材を食べることをおすすめします。例えば人参やキャベツなどの歯応えのある野菜や食間にスルメやガム等を噛むことで唾液の分泌を高める事ができます。
歯垢を作らない対策
口内を健康に保つことは体の健康にもつながります。
それには、出来るだけ歯周病菌の増殖を抑えることが大切です。
歯周病菌が集合してフローラ化するとバイオフィルムを放出してネバネバした状態になり強固に歯に付着します。
この状態を作らせないことが最も重要なのです。
そのためには、日頃の歯磨きが重要です。
毎食後など歯磨きができる時に行いましょう。
夜寝ているときは、唾液が分泌されず、虫歯菌や歯周病菌にとっては活動しやすい環境になっています。
特に夜寝る前の歯磨きは丁寧に行いましょう。一ヶ所約10秒を目安に歯磨きをしましょう。
歯の四面を磨くことが大切ですので、歯と歯の間は歯間ブラシなどを使って磨きましょう。
また、朝は口内の細菌が千倍に増殖していますので、寝起きにはうがいや歯磨きを慣行しましょう。
歯磨きの仕方も大切です。一度歯科医に詳しく聞いてより効果的な方法を伝授してもらいましょう。
歯と歯茎の間の歯周ポケットに歯垢が作られている場合は、自分できれいにするのはできませんので、歯科医院で歯垢を取り出すスケーリングの治療をしてもらいましょう。
定期的に歯科医を受診することをおすすめします。
マウスピースで除菌する3DS除菌治療
冒頭でご紹介したように喫煙や飲酒、ストレスは生活習慣病を引き起こすリスク要因ですが口内環境が悪ければ同じように疾患リスクが高まります。
口内環境を清潔に維持することで様々な疾患のリスクを減らすことができるのです。
ご紹介する3DS除菌治療とは、「Dental Drug Delivery System」の略字で、リテーナー(マウスピース)を使って直接的に虫歯菌や歯周病菌に薬剤をアプローチしての虫歯や歯周病を予防する治療です。
3DS除菌治療が行えるかどうかは歯科医の判断によりますが、一般的には以下の症状があるか方が対象になります。
◎歯を健康にしたい方
◎虫歯や歯周病になりやすい方
◎かぶせ物や詰め物が多い方
◎歯の矯正の計画がある方
◎乳児がいて感染を予防したい方
3DS除菌治療はクリーニング後に残っているこれらの細菌を局所的に除菌するため、効率的に口腔内を清潔な状態にすることができます。
3DS除菌治療の流れ
3DS除菌治療は、虫歯菌や歯周病菌に薬剤を届けて、予防する治療ですので虫歯や歯周病が既にある場合は治療を終えた後に行うことが出来ます。
治療を行えるか否かは歯科医の判断になります。
治療期間は歯の状態によりますが、途中経過を診察しながらの治療になるため、おおむね2ヶ月から3ヶ月と長期になります。治療中の通院回数は5回から8回程度になります。
3DS除菌治療の費用は、3万円から5万円です。
効果が持続する期間は3ヶ月から6ヶ月程度になります。
細菌検査
3DS除菌治療を実施する前に唾液を採取して口内の虫歯や歯周病のリスクを調べる細菌検査をします。この検査は最新の技術である「メタゲノム解析」によって唾液や歯周ポケットに存在する細菌を調べます。
この検査結果をもとに虫歯菌や歯周病菌の菌量にリスクがある方は3DS治療に進みます。
細菌検査の結果判定
検査機関からの結果をもとに虫歯や歯周病のリスク判定をおこないます。
検査の結果3DS除菌治療が必要な場合
歯型をとって患者に合ったリテーナー(マウスピース)をつくります。
このリテーナーで歯科医院や自宅で3DS除菌治療を行います。
3DS除菌治療の実際
ジェル状の3DS除菌治療をリテーナーにセットして5分間装着します。
薬剤によってバイオフィルを破壊された虫歯菌や歯周病菌は無防備の状態です。
3DS除菌治療が効率よく染み渡ることで効率の良い除菌治療がおこなえます。
自宅で3DS除菌治療を行いますが、効果が高いのは就寝前の歯磨き後ですので、リテーナーにホームケア用3DS除菌治療の薬剤をセットして5分間装着します。
その後、7日後に歯科医院にて3DS除菌治療による除菌治療を行い、その後は2か月間ほど自宅で3DS除菌治療を行います。
細菌検査の結果を調べる
約2か月後に3DS除菌治療の効果を調べるため口内細菌検査を行います。
検査結果で当初の虫歯菌量や歯周病菌量が減少して、所定の範囲内に収まっていれば3DS除菌治療は終了となります。
日頃から口内ケアが大切
3DS除菌治療で一旦口内フローラが改善しても、日々の口内ケアがおろそかになると虫歯菌や歯周病菌が植えてしまいます。
口内フローラを健康に保つには、唾液の分泌が大切です。
歯の表面はカルシウムでできていますが、歯を効率よく働き強化する栄養素として、ビタミンDが有効です。
日光を浴びることによって体内で合成されますので紫外線が弱い朝日を浴びてビタミンDを生成しましょう。
食べ物ではしらす、鮭、さんまなどに多く含まれています。
また、唾液の分泌が減少すると虫歯菌や歯周病菌が増殖しますので、普段は口を閉じて開けないようなに心がけ、食事の時には食べ物を良く噛んで唾液の分泌を促進させましょう。
また、お茶に含まれているポリフェノールのカテキンには殺菌作用がありますので、お茶を食後などに飲むように心がけましょう。また、紅茶や生姜、しそなどにも殺菌作用があります。
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