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熱中症の推移グラフ
 
「出典:総務省」
 
地球温暖化に伴って、地域や職場で熱中症の増加が懸念されている中、これを裏付けるように夏場の熱中症での救急搬送者が増えています。
 
厚生労働省の統計では平成27年度の熱中症による死亡者数は968名で、この内65歳以上の高齢者が781名で全体の80.1%を占めています。
 
国や地方自治体も熱中症予防キャンペーンを実施していますが、熱中症による救急搬送者や死者は増えています。
 
世界の年平均気温は、100年あたり約0.7℃の割合で上昇し、日本では約1℃も上昇しています。
この傾向が続くことが予想されており今後引き続き熱中症が発生する可能性が高くなることが確実視されています。
 
このような環境の中で熱中症という疾病の症状や病態を理解するとともに熱中症の原因となる身体の暑熱ストレスを認知すること、これらの要因を除去することが最も重要です。

   

熱中症の危険要因

 

平成28年の熱中症搬送者数グラフ 
 
中症の原因となる要因を認識し、その環境を逃れたり変えることが熱中症を予防する第一歩となります。
 
熱中症の原因となる危険要因には、外部環境はもちろんですが、自身の身体の状態も深く関与しています。
 
次のような危険要因があげられます。

 

高温と高湿度の危険要因

 
熱中症は汗がでなくなることもある 
 
温の環境が熱中症の原因であることは周知の事実ですが、気温だけではなく、湿度や風、放射熱なども大きな危険要因になります。
 
特に日本の気候が高温多湿であることで熱中症の多発を招いている側面があります。
 
人は汗をかくことで身体の温度を下げていますが、高湿度の環境では汗をかいても皮膚から汗の水分が蒸発しにくくなり体内の冷却効果が低下して熱中症のリスクが高まります。

 

風の危険要因

 
の有無も熱中症の大きな要因になります。
 
暑い中でも自然の風があれば、発汗で生じた水分を皮膚からの蒸発を促進させて、体の表面の熱を放散させて体表面の温度を下げることができます。
 
ただし、この効果が期待できるのは、体の表面温度より周囲の温度が低い場合に関してのみであり、体表面温度より高い酷暑環境では逆に熱風となり熱を体に流入させる要因となって熱中症のリスクが高まります。

 

放射熱の危険要因

 
射熱とは、直射日光、地面や建物などの壁からの照り返し、周囲の炉などの発熱体から発せられる熱のことです。
 
近年、森林や山などの自然環境が減少し、都市部では高層ビルの建築やエアコンの使用、人口が集中してヒートアイランド現象とも重なり、熱を発生するものが増え、逆に熱を吸収する対象が少なくなっているのも地球温暖化の要因になっています。
 
放射熱は、例え気温が低い環境であっても、身体への吸収量を高めてしまい体温低下機能を抑制する要因となって熱中症のリスクを高めてしまいます。

 

身体の活動状況の危険要因

 

しい運動や肉体労働作業などでは、筋肉から大量の熱が生じ体温が上昇しやすくなり危険要因となります。
 
身体活動時は大量の汗を伴い循環器系への負担や代謝熱産生量が増大して体の深部の温度も上昇する要因となります。
 
このような状態の時に体内の熱が効率よく発散できないと熱中症のリスクが飛躍的に高まります。

 

衣服の危険要因

 
気性や透湿性の低い衣服は、発汗によって生じた水分の蒸発を妨げて脱水症状と体温の上昇を促進させる要因となります。
 
保湿性の高い衣服は発生した体熱の放出を妨げます。
 
また、熱を吸収する性質が高い衣服は直射日光のみならず地面や壁などの周囲の熱も吸収して衣服内の体の深部の温度を上昇させ熱中症のリスクを高めます。

 

   

個人の危険要因

 
一な環境において、熱中症を起こす人と起こさない人がます。
 
個人の身体的な特徴や十分な水分や塩分を摂取していない場合、また、暑さに対する未順化や体調不良、慢性的な疾患、体力不足、高年齢など個人的な要因が熱中症のリスクに関係します。
 
熱中症を起こした人の中には、十分な水分補給をしていたにもかかわらず熱中症を起こしてしまうケースが見られます。
 
喉の渇きに依存した水分補給は水分量が不十分であり、脱水症状が進行して熱中症のリスクが高まります。
 
また水分のみで塩分を欠いた水分補給は、血中の塩分濃度が減少してナトリウム血症や熱けいれんなどを引き起こす要因になります。
 
この場合も喉の渇きを感じにくくなり、尿量が増加して脱水が進み熱中症のリスクが高まります。

 

暑熱未順化の危険要因

 
雨明けに熱中症に被災される方が多いといわれています。
 
昨日までは18℃くらいだった気温が急に25℃前後まで上昇することがありますが、この時期は体が暑さに慣れていない状態で急に温度が上昇して体が対応できず、生理的な負担が急に増大するために熱中症を起こすリスクが高まります。
 
同じ25℃でも5月に暑いと感じても、8月には涼しいと感じるのは暑さに対する慣れの違いです。暑さには慣れが必要であり梅雨明けの急に暑くなる時期には注意が必要です。

 

体力と肥満の危険要因

 
満の方の脂肪は熱を伝えることができません。熱が体外に排出されにくいため体の中に熱がこもりやすくなります。
 
肥満の人は暑さに弱く、日常的にも運動不足の傾向が有るため、体力や循環機能が低下していると考えられ熱中症のリスクが高いといえます。
 
普段から運動の習慣がなく体力が低下している人は熱中症のリスクが高いといえます。

 

高年齢の危険要因

 
平成27年度の熱中症による死者の8割以上が65歳以上の高齢者です。
 
年齢になると、発汗機能や皮膚血管拡張反応などの自律性体温調整機能が低下します。
 
よって、室温が上昇しても、それを感じにくくなっており、空調をつけて室温を下げる行動につながりにくいことが危険要因となります。
 
また、高齢者の熱中症では高血圧や糖尿病などの加齢性の疾患なども危険要因となります。

 

   

熱中症の程度 T度〜V度

 

軽度熱中症 T度

 
熱中症T度 立ちくらみ 
 
まい、立ちくらみなどを主症状として熱失神、こむら返りや筋肉痛などが主症状の熱けいれんを起こします。
 
大量の発汗症状も脱水の兆候として考えられます。
 
また、喉の異常なかわき感や手足などの体の一部がけいれんを起こします。
 
顔色が青白くなります。

 

中等度熱中症 U度

 
熱中症U度 吐き気 
 
脱水症状が進行すると、熱疲労と呼ばれる症状である頭痛や吐き気、おう吐、倦怠感、虚脱感などが表面化します。
 
体温が高くなり、頭がズキズキと痛み判断力や集中力が低下します。

 

重度熱中症 V度

 
熱中症V度 けいれん 
 
識がもうろうとした意識障害、全身のけいれん、手足の運動障害、高体温(40℃以上)などの症状がおこります。
 
呼びかけても応答や反応がなくなります。適切な処理が行われない限り手遅れとなって死に至ります。
 
重度熱中症では、最先端の医療でも手の施しようがなく、早めに熱中症の兆候を感知して予防することが重要です。


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